日程:2014年4月26日(土)~27日(日)一泊二日
同行:juqcho氏(おやぢれんじゃぁ隊)
今年のGW山行は、昨年単独で挑んだものの季節外れの大雪で敗退した鹿島槍天狗尾根。
今回juqcho氏をパートナーに再チャレンジとした。
一日目
天候:
行程:大谷原8:10-荒沢出合9:05-天狗尾根支稜尾根上11:20-第一クーロアール13:00-第二クーロアール14:05-天狗の鼻15:00(幕営)
土曜未明、都内でjuqcho氏をピックアップし、一路信州へ。
GW初日だが、さすがに時間が早くて4時間弱ほどで登山口の大谷原へ着く。
昨年は予想外の冬景色だったが、今年はうららかな春の陽気で周辺には雪の欠片すら無い。
既に駐車スペースには車が10台近く。
さっそくミニパトの山岳警備隊の方がやってきて、ここで登山届を記入し提出する。
昨年もそうだったが、今年もついこの前に天狗尾根で転落死亡事故(ピオレドール・アジア受賞の野田賢氏)があったばかりで、登山者へのチェックも念入りである。
(パーティー名「おやぢれんじゃぁ隊」なんて書いて怒られるかと思った・・・。)
登山届を出してすぐさま出発。
アプローチは昨年来ているのでバッチリ。
橋を渡って左へ向かい、ゲートを越えたら次に出てくる右からのヘアピンの道に入り、さらに次の二又で左へ。
昨年と較べてあまりに雪が無いので若干戸惑うが、間違えようがない。
アプローチではまず大冷沢の渡渉が二回あるが、今回は水量が少なく飛石伝いに靴を履いたままクリア。
取水口からは右岸通しに古いフィックスロープがあるが、ボロい土斜面のトラバースでザックが重いとちょっと緊張する。
(左)大冷沢の渡渉。水量少なく飛び石伝いに渡れた。 (右)荒沢出合
やがて左から合流する荒沢に到着、ここで先行パーティー三人組を確認する。
荒沢右岸から天狗尾根支稜取付へは残念ながら雪で埋まっていることはなく、飛石伝いに行くには微妙な水量。
重いザックでバランスを崩して、しょっぱなからズブ濡れになるのもツライので、ここは無難に裸足になって越えた。
juqcho氏はWストックを駆使してここも靴のままクリア。
荒沢を渡って尾根に取り付く。
ここから天狗尾根支稜の尾根に出るまで怒涛の鉄砲登りとなるが、下半部は雪が全く無い。
急な草付斜面はビブラムソールでは思うように踏ん張りが利かず、出だしから大汗をかきながら登っていくが、すっかり消耗してしまった。
シャクナゲの枝を掻き分けながらの登りで腕は擦り傷だらけとなり、おまけにどこかの枝に引っかけてポケットタオルを無くしてしまった。
途中から雪が出てきてようやく歩きやすくなるが、どうも今年は雪解けが早いようだ。
尾根に出てからも同様で、昨年は雪庇まで張り出していた箇所も今年は雪面がズタズタに切れたりして、かなり土が露出している。
天狗尾根下部の雪稜
雪は軟らかいが、この先斜面が急になり細い雪稜になることがわかっていたので、早めにアイゼンを履く。
ここでハーネスやらメットも身に着けるが、なぜか持ってきたはずのビレー器が見当たらない。
大事なギアを忘れるなんて。いよいよボケてきたか。あぁ情けない。
(その後、帰宅しても見つからず、たぶん装備をその場で広げた時に雪の下に隠れてしまったようだ。KONGのビレイデバイスとBDのスクリューゲートのカラビナ。どなたか拾ったらお願いします!)
尾根は細かいアップダウンをしながら右方向に曲がっていき、やがて第一クーロアール。
ここも昨年に較べて雪が少なく、下部は断裂してクレバス状になっている。
アイゼンの前爪を効かせて、特に問題なくクリア。
抜け口の辺りは灌木が邪魔して、これを避けようとするとけっこう際どいピッチとなるが、今回は先行三人組(「銀座山の会」御一行様)に倣って灌木の間を木登りで越えていく。
少し雪庇の張った雪稜を伝っていくと第二クーロアール。
昨年、時間切れ敗退となったポイントだ。
ここも第一クーロアールとほとんど同じ傾斜。そのまま天狗の鼻への広い登り斜面に続いている。
第一クーロアール(左)と第二~。
登り着いた所が「天狗の鼻」。
平坦な尾根がしばらく続き、吹きさらしだがテントは何張りも張れる。
既に単独行のものが一張り。三人組もここらで幕を張るというので、我々もそうする。
風を避けようと最低鞍部に張りたかったが、やはりそこも雪が切れて不安定だったため、尾根上に少し雪を掘り下げて二人用のゴアテントを張った。
日中はシャツ一枚で大汗をかくほどだったが、さすがに夜になると冷えてきて3シーズン用のシュラフでは少し寒かった。
(左)天狗の鼻への急な登り (右)天狗の鼻は、鹿島槍北壁のベースともなる好テン場
二日目
天候:
行程:起床3:30-天狗の鼻5:10-上部の岩場7:20-鹿島槍北峰頂上9:40~10:00-北俣本谷下降点10:20-北俣本谷出合12:30-大谷原14:30
朝。今日も絶好の天気。
昨夜はそこそこ冷え込んだようで、テントのペグやスコップなどは雪に深く差し込んだものは凍りついてすぐには取り出せないほどだった。
テントを撤収し、ほんのりピンク色に染まる鹿島槍北壁を見据えながら、まずは最低コルへと下りていく。
ズタズタに切れた斜面をトラバース。
その後、けっこう急なリッジ状の雪壁がいくつか続く。
ロープを出すほどではないが、場所によってはほんの一瞬、垂直に近い角度の乗越しがあり、ここで転がったらやだなとちょっと緊張する。
振り向くと、昨日の三人組も後を追って近づいてきた。
やがて広い斜面を登っていくと正面に大きな台座のような岩があり、ここで小休止。
そこを左から回り込んでいくと天狗尾根上部の核心、アルパイン3級程度の岩場に着く。
「せっかく重いのを担ぎ上げてきたのに。もしかしたら出番が無いのでは?」と危惧していたが、ここでようやくjuqcho氏がロープを出す。
1ピッチ目。juqcho氏がまずリード。
基部のダケカンバがビレーポイントで、私が半マストでビレイする。
最初、頭上の二つのランペの内、右側の方が灌木でランナーが取れそうなのでそちらに取り付く。しかし、雪面がグズグズで足元が決まらないようだ。
結局、最初に目を付けた左側のランペに取り付く。
ここも雪が薄く、見た目悪そうな感じだったが、この冬も八ヶ岳のアルパインを何本もこなしたjuqcho氏、落ち着いた登りで突破した。ナイス・リードです!
自分が昨年単独でここまで来ていたら、右側の急な雪の斜面から巻くか、それともロープを下のダケカンバにループにして回して直登していたか。
いずれにしても冷や汗をかいていたに違いない。
グレードとしてはアルパインの3級+程度ということだが、家財道具一式背負っていると少々シンドい。
続く2ピッチ目は、私がリード。
簡単な雪の斜面を10mほど登り、あとは5mほどの階段状の岩場がちょこっとあるだけ。
で、登ろうとすると何だかあらぬ方向からjuqcho氏とは別の声が聞こてくる。
ん?・・・ふと眼前の岩を見上げると見知らぬニイちゃんが上から覗いていた。
そのニイちゃんはこちらが驚いている間に慣れた調子でササッと岩場をクライムダウンし、そのままあっという間に天狗尾根を一人で下って行った。
昨日、我々より先に天狗の鼻で一人テントを張っていた若者で、今朝は鹿島槍の北壁を一人でサクッと決めた後、そのまま下ってきたとのこと。
いやはや、凄い。
結局2ピッチとも各20mほど。岩場が済んでロープをたたみ、ふたたび雪稜を行く。
快晴微風。何とも気持ちの良いスノーリッジだが、昨日からの急登続きでそろそろ疲れが見えてくる。
すぐ左手には東尾根の核心部を行くパーティーが間近に見えるが、自分が登ったのは十年前。
あの時より今回の天狗尾根の方がかなりキツく感じるのはやはり歳のせいか。
だが、頂上は確実に近づいてくる。そして・・・。
鹿島槍ヶ岳北峰からのパノラマ・2014年GW
後から到着したjuqcho氏と「お疲れさん」の握手をし、しばし360度の景観を楽しむ。
少し霞んでいるが、五竜、剱、爺ヶ岳とどの山も素晴らしい。
最近「岳人」でも話題の天狗尾根「主稜」も遠巻きながら観察する。
こちらから見る限り二カ所ほど悪そうなリッジが確認でき、そう簡単には行けなそうな感じだ。
鹿島槍の雷鳥
今回かなり雪がグズグズなので、下降は無難に赤岩尾根のつもりでいた。
しかし、ここから見る鹿島槍の南峰は高く聳え、さらにその先の冷池山荘、赤岩尾根までの道のりは疲れた身体にはかなりメゲるものがある。
楽に降りるには南峰の手前のコルから左側の北股本谷に下りる手があるが、ここは日中は雪が腐り、周りからの雪崩や落石のリスクも高くなる。
一足先に下山した男女二人組の様子を窺っていると、最低コルの所でしばらく立ち止まっていたが、やがて北股本谷をバックステップで降りていくのが確認できた。
おっ、行くのか?
我々も休むのをほどほどに切り上げ、最低コルに向かう。
以前、タケちゃんとの東尾根の際も下ったが、ライン取りが違うのか、今回はより楽そうに見えた。
よし。そうと決まれば、さっさと降りるしかない。
先行パーティーのうまいライン取りをありがたく頂戴し、バックステップでガンガン下る。
途中、気温の上昇と共に上部のガレから落石があったりしてヒヤッとするが、もうここまで来たら祈りながら一気に下るしかない。
3分の1ほどWアックスとバックステップで下り、少し傾斜が緩んだところで前向きになってデブリの上をひたすら下る。
ようやく安全地帯に着いてホッと一息。無事で良かった。
大谷原までさらに雪の斜面、川沿いの道、林道と重い足を引きづり歩き、ようやく登山口の大谷原に到着。
下山後は大町温泉郷の「薬師の湯」、信濃大町のトンカツ屋「昭和軒」とつないで〆。
お疲れさんでした。
ヒロケン氏の「チャレンジ!アルパインクライミング」に書かれてあるとおり、たぶん人気があるのは天狗尾根より東尾根かもしれない。
しかし、渡渉、藪尾根、不安定な雪庇やしつこく続く雪稜などマニアックな向きには天狗尾根、変化があってオススメである。
写真集「春の鹿島槍・天狗尾根」
(写真提供:juqcho氏)
まさか塾長さん達にお会い出来るなんて、サイン貰っておけば良かったと後悔しております。
天狗尾根歩いたことないので、大変勉強になりました。
またどこかの山でお会いすることを楽しみにしております。
こちらこそ北俣にステップ刻んでいただき助かりました。ありがとうございます。
二日間とも天気に恵まれ快適でしたね。
天狗尾根は東尾根に較べると野暮ったい印象ですが、変化があってこれもなかなか楽しめると思います。
ぜひ!
後半は北鎌でしたっけ?
こちらも楽しんできてくださいね。
当日はトレースをつけていただき、ありがとうございました。大変助かりました。
北俣本谷の下降、拝見しておりました。我々も誘惑されましたが、以前登った鎌尾根を下降しました。主稜線雪庇の下りは、楽しかったです。
いい天気でしたが、腐れ雪には疲れましたね。
またどこかでご一緒できることを、祈念します。
別に大したトレースなどつけてませんよ。
こちらこそ下部のヤブ登り、適切なルーファイをしていただき助かりました。ありがとうございます。
昔ながらの本革の登山靴にウッドシャフトのピッケルをお持ちの方がいてシブい!と思うと同時に、道具を大切にされていてたいへん好感を感じました。
そちらの会では森田さんのHPなどよく参考にさせていただいております。
これからもよろしくお願いいたします。