KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

ケニア・旅ノート1

2014年08月09日 | 海外

【ケニア山について】
 Mt.KENYA。標高5,199mのバティアンを主峰とし、ネリオン5,188m、レナナ4,985mなどいくつかの岩峰から成るアフリカ第二の高峰。
 バティアンは1899年にイギリスのマッキンダー一行により、またネリオンは初期のエベレスト遠征でも有名なシプトンらによって1929年に初登頂されている。
 しかし、最もドラマチックで印象深いのは第三の峰であるレナナ峰の初登頂のエピソードである。
 自分は高校生の時にこの話を「図説・探検の世界史4~世界の屋根に挑む」(J・ヒンドレイ著、1975年集英社刊)で読んで知った。
 内容はこんな感じである。

 1943年、当時ケニア山から80km離れた所にイギリスの捕虜収容所があり、そこに多くのイタリア軍人が収容されていた。
 そんなある日、捕虜であるイタリア人3人はケニア山に登ろうと決心する。ちなみに3人のうち2人は登山の経験があったが、もう一人はまったくの初心者。

 彼らは収容所から日々この山を眺め、収容所の図書室の本を読んだりして、どこから登るか研究した。
 半年がかりで食料を集め、収容所の毛布でアノラックを作り、壊れたトラックの泥除けでアイゼンを作ったり、とにかくありあわせの物で準備を進め、そしてある日ついに収容所を脱走し、ケニア山へ出発する。
 食料も装備も不十分な上、低地の熱帯の暑さから頂上付近の凍り付く寒さ、吹き付けるブリザードなど条件は厳しかったが、彼らはそれに耐えながら見事にポイント・レナナに登頂してしまう。

 その後、三人がどうしたかというとそのまま収容所に帰り、再び捕虜となってしまう。
 彼らにとっては脱走が目的ではなく、ただこの山に登りたいというのが真の目的だったのである。(もちろんその当時でのアフリカの逃避行は登山以上に過酷だったのかもしれないが・・・。)
 当然、彼らはその後、厳しい処罰を受けることになるが、不平も言わず、ただケニア山に登ったという満足感に浸って刑に耐えたというのである。

 ヘミングウェイの「キリマンジャロの頂上に豹の亡骸がある」という一節も男のロマンを掻き立てるが、このケニア山の話もまるで映画のようで自分の心の中にずっとに残っていた。

 
 アフリカ・ケニア山バティアン北壁の記録(15分52秒)

【計画と経緯】
 ・・・とはいっても、今回初めからケニア山を予定していたわけではない。 
 
 昨年(2013年)のカナディアン・ロッキー単独行の経験を踏まえ、今年はもう少し高い山を目標に、当初は南米エクアドルの六千m峰をターゲットにしていた。
 具体的にはコトパクシ5,897mとチンボラソ6,310mで、これらは条件さえ良ければ事前の高度順化も含めて全行程約二週間ほどで登れてしまう。

 そこで2013年暮れには現地エージェントとコンタクトを取り、具体的な計画まで詰めていたのだが、2014年が明けた早々、現地で新婚の日本人夫妻の方が強盗殺人事件に巻き込まれる。
 実際、治安の悪い南米ではそう珍しいことではないらしく、現地エージェントの日本人スタッフも「被害者が日本人なのでことさら大きな騒ぎになっているんでしょうね。ま、たぶん大丈夫ですよ。」と何だかまるで説得力の無い説明をしてくれたが、さすがにタイミングが悪過ぎて家族からはNG。

 で急遽、検討した代替案はざっと次のとおり。

メキシコ・ポポカテペトル(5,426m) 2014年1月現在、火山活動中。×
メキシコ・オリサバ(5,760m) 行こうとしている夏の時期は雨が多く不適。×
タンザニア・キリマンジャロ(5,895m) いつか行ってみたいが、もう少し歳とってからでもいいかな。△
ボルネオ・キナバル(4,095m) これもどうしても今じゃなくてもいいかな。△
ロシア・エルブルース(5,692m) 言葉と地理にやや不安。また夏でも風が強く敗退例も多く見受けられるので△
カナディアン・ロッキー北部(約3,700m) まぁ昨年も行ったし、滑り止めか。△
ヨーロッパ・アルプス(4,000m超) juqcho氏が何回も行ってるし、今更自分が行ってもブログのネタ的には面白味が無く△(笑)

 そんな中、急に思い出したのがケニア山である。
 調べてみるとケニア山の記録はネット上でも数多く見られるが、そのほとんどが第三の峰であるレナナ峰までで、主峰バティアン登頂の記録は少ない。
 これはレナナがキリマンジャロと同様、高度障害さえクリアすれば技術的にはハイキング、トレッキングの範疇であるのに対し、ケニア山の主峰バティアンはそれほど高難度ではないにしろ、ロープを使うクライミングの技術を要するからである。

 標高五千mのバリエーション・ルート。うん、いいではないか、ということで即決定。

 カナダでのレンタカーでの旅と違って、さすがに今回はアプローチや土地柄への不安もあって現地エージェントに手配を頼む。
 (日本のエージェントでもケニア山は頼めるが、相当金額が高くなるので最初から却下。おおまかだが、たぶん現地エージェントだと航空券ほか諸々込みで半分強の金額で済む。)

 ケニア山主峰へのバリエーション・ルートはネリオン南東壁やダイアモンド・クーロアールなどいくつかあるが、自分が行く7~8月は気候的にバティアン北壁がベストとのこと。
 ルート・グレードはアルパインの4級(ピッチ・グレード5.9)、全20数ピッチのマルチ・ピッチである。

 なお、今回のケニア山のバリエーションについては、2009年年末に近藤謙司ガイドらと共に
ネリオン南東壁を登られたACC-J茨城の本図一統にアドバイスを戴いた。
 ネットで記録を拝見し、たまたま同会のさかぼう氏と旧知の間柄だったので介してもらったのだが、いきなりの照会にもかかわらず岩のコンディションから装備のことまで懇切丁寧に教えてもらった。(その直前に、私はまったく別の場所で近藤氏から南米エクアドルの山について聞いたりしていて、つくづく山に関わる人の繋がりを感じてしまった。)
 残念ながら本図氏は2014年GWの穂高で帰らぬ人となってしまったが、ここで改めて御礼を申し上げるとともに、故人のご冥福をお祈りいたします。

【ルート】
 ケニア山の登山ルートは現在、主なもので3通り。

ナロモル・ルート  西側のルート。ナイロビから一番近く、距離も短く一番ポピュラー。だが、他の2ルートに較べると景観は平凡とのこと。(富士山でいえば富士宮口?)
シリモン・ルート  北側のルート。距離は長くなるが、その分傾斜は緩く、高度順化しやすいとか。景観は変化があってまぁまぁ。(富士山でいえば馬返しからの吉田口?)
チョゴリア・ルート 東側のルート。景観は一番らしい。ただあまり開けていなくてアプローチとしては不便とのこと。(富士山でいえば御殿場口?)

 今回、私が選んだプログラムはシリモン・ルート往復となっていた。もちろんエージェントのプログラムによって登りはシリモン、下りはチョゴリアというのもある。



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