
甘えるように顔をあげ、少し
背伸びをして、恋人の耳もと
に何か囁く女性。その姿が
「樹の葉嚙む牝鹿(めじか)
のごとく背を伸ばし」とと
らえた比喩。
自分が牝鹿になりきる。つま
りこの比喩は、外側から女性
を観察して、その様子を表し
たものでなく、自分が女性本
人になった気分で内側の気分
をとらえたもの。
「この感じって、牝鹿が樹の
葉を噛むときに似ているんじ
ゃないか」と。
結句の「吹きたり」は、上の
句比喩と響きあう。
ここで言葉は、その告げる意味
内容が大切なのではない。自分
の口から生まれ、相手の耳もと
を震わせる空気の振動として、
届けば十分なのだ。その感じが
「吹きたり」だ。
人間と動物、人間と植物、の境
界線がほんとんどないような
感覚。
「鹿」という素材は、恋の匂い
と深く関わるものでもある。
鹿といば、秋、妻恋をする牡鹿
の鳴き声・・・・というイメー
ジは、古く万葉の時代からある。
どちらかというと、もの悲しい
印象だった。そういった古典的
な背景を遠くに持ちながら、そ
れに縛られることなく、新しい
イメージの歌だ。季節は秋では
なく初夏。恋の歌であるが、生
殖の相手を求める切羽詰まった
もの悲しさとは無縁の、明るい
愛の仕草のひとこまだ。
背伸びをして、恋人の耳もと
に何か囁く女性。その姿が
「樹の葉嚙む牝鹿(めじか)
のごとく背を伸ばし」とと
らえた比喩。
自分が牝鹿になりきる。つま
りこの比喩は、外側から女性
を観察して、その様子を表し
たものでなく、自分が女性本
人になった気分で内側の気分
をとらえたもの。
「この感じって、牝鹿が樹の
葉を噛むときに似ているんじ
ゃないか」と。
結句の「吹きたり」は、上の
句比喩と響きあう。
ここで言葉は、その告げる意味
内容が大切なのではない。自分
の口から生まれ、相手の耳もと
を震わせる空気の振動として、
届けば十分なのだ。その感じが
「吹きたり」だ。
人間と動物、人間と植物、の境
界線がほんとんどないような
感覚。
「鹿」という素材は、恋の匂い
と深く関わるものでもある。
鹿といば、秋、妻恋をする牡鹿
の鳴き声・・・・というイメー
ジは、古く万葉の時代からある。
どちらかというと、もの悲しい
印象だった。そういった古典的
な背景を遠くに持ちながら、そ
れに縛られることなく、新しい
イメージの歌だ。季節は秋では
なく初夏。恋の歌であるが、生
殖の相手を求める切羽詰まった
もの悲しさとは無縁の、明るい
愛の仕草のひとこまだ。