日本古典文学全集版6巻の巻末付録は楽しい。
1位 光源氏:221
2位 薫:57
2位 薫:57
これは『源氏物語』におけるエッチの回数……ではなくて、全編中での和歌の数。
光源氏は第1部・第2部の主人公、薫は第3部の主人公だから、2人の歌が多くなるのは当然だといえる。
では、3位は誰でしょう?
(A)藤壺中宮(義母さんぼくもうがまんできない!)
(B)紫の上(なんてたってヒロイン)
(C)夕霧 (好きな王子様コンテスト1位!)
(D)匂宮 (世界中のお姉ちゃんは全部わしのもんや!)
(E)浮舟 (もてすぎちゃって困る)
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正解は(C)の夕霧。39首ある。ある源氏物語ファンサイトの王子様投票でも父を差し置いてブッチ切りの1位。たしかに、「あさきゆめみし」の夕霧はいいやつ。もちろん女性陣はわかっているように、あんな男はいないけどな!(それでも瞳うるうるの乙女心)。
源氏の嫡男だけあって、原作でも登場回数は多い。「少女」では雲雁居との初恋をひき裂かれ、「藤裏葉」で結ばれたかと思うと、「夕霧」では親友柏木の遺妻・落葉の宮に暴走、結婚生活の危機を迎えたり忙しい。結局、雲居雁と落葉の宮を月の半分ずつ訪ねるようにしている。
紫の上の超絶的な美しさや、源氏と玉鬘のあやしい関係も、夕霧の目を通して語られているのも印象に残る。こうした〝第三者視点〟の導入も、源氏物語の新しさだった。それまでの神話や叙事詩、民間文芸では、一場面に登場人物は二人が原則だった(西郷信綱『源氏物語を読むために』より)。
夕霧は父親にはあまり似ず、真面目で律儀、友情に厚い一面もありながら、むっつりスケベで女に不器用。誰かに似ているなあと思ったら、源氏の引き立て役の頭中将。祖母の大宮に養育されたせいか、母方の左大臣家の影響が大きいように感じる。
さて、和歌ランキング4位以下は下記の通り。
4位 浮舟:26首
5位 匂宮:24首
6位 紫の上:23首
7位 明石の君:22
8位 玉鬘:20首
9位 頭中将:16首
10位 柏木:15首
5位 匂宮:24首
6位 紫の上:23首
7位 明石の君:22
8位 玉鬘:20首
9位 頭中将:16首
10位 柏木:15首
紫の上より、浮舟に歌が多いのは、少し意外だった。第三部のメインヒロインとはいえ、わずか6帖しか登場しないからだ。
しかし紫の上には許されなかった出家を果たした浮舟は、宇治十帖のみならず、この物語全編の恋愛リレーの最終走者だった。ラスボスならぬラストヒロイン。「手習」の手習歌の内省には、出家を控えた紫式部日記の記述と重なる部分が多々ある。「夢の浮橋」のラストが、中絶ではなく、作者の精神の到達点を示すTrue Endだったことが、こんな所からもわかる。
(ハッピーエンドでもバッドエンドでもない。Sad But True)