新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

愛と誠に背いて 『愛と誠』原作/梶原一騎 漫画/ながやす巧

2012年03月04日 | コミック/アニメ/ゲーム
 昨秋、全巻大人買いして読み返した。この名作を死ぬまでに通読できて、よかった。絵は『Dr.くまひげ』の人だったのか。

 『愛と誠』を初めて読んだのは、子供の頃、いとこの家だった。しかし、その直後に転校した。月日は流れ、愛も真も、今や娘やせがれでもおかしくない年齢だ。

 でも、おぼえている、おぼえている。ツルゲーネフの『はつ恋』を愛読する美少女とかね。
 
 読むうちに、熱い思いがよみがえってくる。連載をリアルタイムで読んだ梶原一騎作品は、『プロレススーパースター列伝』だったが、梶原はすでにスキャンダルまみれだった。かわかずおの『パチ漫』のパロディ作品には笑ったが、われわれの年代は、人格形成の何パーセントかは梶原一騎でできているように思う。

 最後に読んだのは前世紀、それもまだ「旅人」だった頃だ。とある地方の旅館に全巻そろっていた。最後の2、3巻だけ選んで読んだ。それも最後のページから逆に読み進めた。いつまでこの場所がねぐらかわからない。次、『愛と誠』に今度いつ出会えるかもわからなかった。死ぬまでにせめて結末くらい知っておきたかったのである。実際、翌朝には、朝食も喰わずに、すぐに出発した。「親のある奴は くにへ帰れ 俺とくる奴は 狼だ」と、『あしたのジョー』のテーマを口ずさみながらのどさ回りだった。あの歌は、「寺山修司の作詞だった。

 あらためて、ゆっくりとした気分で読み返すと、愛の父親が政界汚職のスキャンダルに巻き込まれ、屋敷を大衆に取り囲まれる場面には、『デビルマン』を思い出す。父は猟銃で自殺しようとしている。母の電話に異変に気付いた愛が乗り込み、ライフルを奪い取る。そして決然としてこう伝える。

 「おとうさまも男なら……
 生きて苦しみ 血をながし
 そのうえで男の世界の恩や義理を死守なさいませ
 どこどこまでも
 世間のフクロダタキに たえぬいて
 悪は悪なりに
 男の一分をつらぬかれたら?」

 そして、父親からライフルを奪い取った愛はこう告げる。

 「さあ 夕食のしたくをつづけますけれど
 もう バカはなさらなくて?
 今夜のメニューは 愛とくいの特製のハンバーグよ」

 あれからもう4半世紀近く過ぎ、まだ生き伸びている。しかし、愛とくいの特製ハンバーグだけは今も心残りなのである。


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