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梅と桜

2011年01月27日 | 源氏物語・浮世絵・古典・伝統芸能
菅原道真といえば梅。しかしこれは飛梅伝説と、室町時代以降の禅僧によって梅花愛好説が強調されたためらしい。実際には梅花のほかにも菊や竹、松や桜などにちなんだ詩歌も多数ある。天神縁起も「東風吹かば匂ひおこせよ」の有名な歌とならんで、「さくら花、ぬしを忘れぬ物ならば、ふきこむ風に、ことづてはせよ」という和歌を伝えている。

 北野天神縁起絵巻の紅梅殿の庭には、梅樹だけでなく、桜樹も描かれているのを発見した。このエピソードに、私は源氏物語「御法」帖を思い出した。

 「大人になりたまひなば、ここに住みたまひて、この対の前なる紅梅と桜とは、花の折々に、心とどめてもて遊びたまへ。さるべからむ折は、仏にもたてまつりたまへ」

 紫の上は、大人になったら、この邸に住んで、紅梅と桜を、大切にしてほしいと孫の匂宮に遺言する。紫式部はこのエピソードを知っていたのではないか。

 「漢才」をもとにしてこそ、「やまと魂」が生きる(和魂漢才)と源氏が夕霧に訓戒する場面がある。遣唐使を廃止した菅原道真は、梅(漢才)と桜(大和魂)が共存する、国風文化の始まりにいた。

 以下は余談。天神信仰と関わりが深い牛について。八幡の鳩、日吉の猿、気比の白鷺、稲荷の命婦(狐)、熊野の烏。しかしなぜ牛が天神の使いになったのか。

 一般には、道真が生誕した承和12年(845年)が乙丑の年にあたるからだといわれる。しかしそう単純ではないらしい。

 天満宮鎮座以前に北野に祀られていたのは電公だった。雷神は雨水をもたらす恵みの神であると同時に、落雷によって被害をもたらす暴悪神でもある。他方、大陸伝来の殺牛祭神の伝統があった。牛は神に供える聖なる動物だった。クメール美術展で見た、裁判の神ヤマ(閻魔大王)が乗っていた水牛に思いを馳せる。

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