明け方、会社へ向かっていると
少し明るくなった空に、
白く透き通った月が浮かんでいた。
朝になっても空に残るこの月は
前の夜、姿を見せてくれるのが遅くて
なかなか姿を見せないことから
居待月と言われてるらしい。

菜の花や月は東に日は西に
蕪村
彼が見た月は、
何という名前の月だったのだろうか?
先日からの菜種梅雨で
見ることができない。
あの日の前日は雨が降っていた。
今の私が思い浮かべているあの日は
都合よく篩にかけられた思い出で
もしかしたら、
全て虚像なのかも知れない。
でも、あの日があったから
確かに今がある。
その事実は変えられないのに
少しづつ、少しづつ、
思い出が遠くなって
形を変えていく。
