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さよならも言わないままでありがとうも言えないままで

2021-05-22 19:10:00 | 日記


雨が降ると思い出すことがある。



黄色の傘をさして

二人川沿いを歩いていた。


なにか話さなければと思う

沈黙があっても

苦にならない人だった。



そんな長い沈黙を破り


「また転校するんだ」


と、聞かされた。


私の涙が

雨に溶けて見えなくなればいいのに

と思った。





あれは、

小学5年の桜が舞う頃。


確か千葉からやってきたという転校生。

 

 

 

スポーツ万能で、

優しくて、

こんがり焼けた肌から覗く白い歯、

笑顔の素敵な男の子だった。

 

 

クラスの女子に人気があって

みんなその転校生のA君に夢中だった。

 

 

 

新学期が始まった時、

席替えがあり、私の隣の席がA君になった。

 

もちろんクラスの女子たちに

嫉妬の目で睨まれる。

 

 

私と言えば、

A君の事を好きな訳でもないので、

ちっとも嬉しくもなく、

むしろ誰かと席を変わりたかった。

 

 

 

 

 

 

あの頃、

男の子みたいな性格だった私と

(現在もだけど)

馬が合ったのか、

君と私が仲良くなるのに

そう時間はかからなかった。

 

放課後、家も近所だったせいもあって

一緒に遊んだり、行き来したりする仲だった。

 

 

 

 

 
 
 

ある雨の日、

黄色い傘をさし

川沿いを2人下校してると

 

 

 

「また転校するんだ」

 

 

 

そうA君から聞かされた。

 

 

寂しさと悲しさが溢れ

堪えきれず

本人の目の前で涙が出た。

 

 

 

恥ずかしかったのを

今でもよく覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別れの日、見送りに駅まで行った。

電車の窓の向こうで

 

「元気でな!僕のこと忘れるなよー!」

 

と、笑いながら言った後

何か言いかけていたA君。

 

 

 

 

その表情が、今も忘れられない。

 

 

 




 

 

彼はもう、

私のことなんて

忘れちゃってるのかも知れないけど、

今もこうやって

彼の事を覚えている。





あれが私の

淡い初恋だったのかも知れない