複数の欧米系メディアが、米CIAがシリアの反政府勢力に小銃や弾薬など武器の供与を始めたことを伝えている。武器は、トルコやヨルダンにある基地を通じ反政府勢力の戦闘部隊に配布されているという。
※CIA 反政府勢力に武器供与か(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130912/k10014487151000.html
※CIA begins delivering weapons to militants in Syria(PressTV)
http://www.presstv.ir/detail/2013/09/12/323427/us-weapons-reaching-militants-in-syria/
※U.S. weapons reaching Syrian rebels(ワシントンポスト)
http://articles.washingtonpost.com/2013-09-11/world/41972742_1_lethal-aid-syrian-rebels-chemical-weapons
※CIA starts arming Syrian rebels overtly(rt.com)
http://rt.com/usa/us-weapons-syrian-rebels-745/
シリアがロシアからの提案に応じ、化学兵器を国際管理下に置くことに合意したことから、当面米国が軍事介入する論拠がなくなった。また報じられている限り、9月16日に公表された国連調査団の報告書では、猛毒物質サリンが使われたこと自体は認定しているが、誰が使ったのかは認定していない。
※サリン使用、国連が断定 シリア問題 使用者は特定せず(朝日新聞)
http://www.asahi.com/international/update/0917/TKY201309160336.html?ref=reca
※国連「シリアでサリン使用、ロケット弾で」 調査報告(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1602C_W3A910C1FF8000/
米国は直接軍事介入が遠のき「シリア内戦」がシリア政府有利に集結に向かうことを怖れ、新たな介入に踏み出したことになる。
9月5日のクローズアップ現代「緊迫シリア “化学兵器疑惑”に迫る」は、「アルカイダ」系とされるイスラム過激派が流れ込み、反政府勢力の中で台頭してきていること、したがって反政府勢力への武器の供与は同時に反米勢力を活性化させるという究極のジレンマを抱えていることを報じている。
※緊迫シリア “化学兵器疑惑”に迫る(クローズアップ現代)
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3397_all.html
これまでも親米国家サウジアラビアやカタールなどを通じて武器は流れていたが、米CIAが反政府勢力への直接的な武器供与に踏み切ったことは、「化学兵器の廃棄」などはシリア攻撃の単なる口実に過ぎず、反米国家であったシリアの弱体化と内戦の持続こそが米国の利害であるということを明示しているのではないだろうか。
しかしその中で甚大な被害を受けるのはシリアの人々にほかならない。シリアからの難民の数はすでに200万人に登る。難民の多くが米国の攻撃を怖れ、「イスラム過激派への恐怖」を訴える。子どもたちは劣悪な環境に放置されている。
シリアの人々のためには、米国がシリア攻撃を行わないことを明言すること、反政府武装勢力への一切の支援をやめることが何よりも先決である。
(ハンマー)