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「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

やはり今一度問う。「脳死」は人の死だと言えないのではないかと!

2011-01-25 | 脳死臓器移植問題
「日本臨床外科学会雑誌」第71巻10号(2010年10月25日付発行)の編集後記には、食道癌の名医とされる医師である、加藤抱一氏が「不人気」というタイトルで以下の記事を書かれている。

読んでみて驚いた。

加藤医師は、半年ほど前に心肺停止状態になり、運ばれた病院で「回復の見込みは絶望的で、植物状態にさえなれないだろう」と言われた。しかし家族の強い希望で、脳低温療法が施行され、なんと!1ヶ月で退院。半年後に、この編集後記を書くまでに復帰したという。

一方で、2010年7月の臓器移植法改定により、すでに30例もの「脳死」とされた患者さんが、本人意思不明のまま家族の承諾だけで臓器摘出されているという、不気味な現実がある
本当に「脳死」は人の死なのだろうかと、今一度考えなおさなければならないのではないか。

──byあゆむ



以下、「日本臨床外科学会雑誌」第71巻10号編集後記(加藤医師の書かれた記事の)後半部分を転載。

      ──────────────

(前略)今日の医学雑誌では「症例報告」が不人気である。世界的にも症例報告を掲載する医学誌は極端に少なくなっている。そのような状況にも関わらず、,本誌の掲載論文は各号、概ね原著2、3編、症例報告40~50編で、症例報告に偏重した構成を維持している。邦文誌に原著論文の投稿が少ないのも最近の一般的な傾向ではあるが、本誌には症例報告の投稿が多く、われわれもそれを歓迎している。今日、臨床や研究の場で活躍中のシニア外科医の多くが、学術論文執筆の手始めに症例報告を投稿した経験があり、論文を執筆すること自体が医師としての勉強の機会であったはずである。また、症例報告は貴重な経験を医学界に周知させる手段であり、後世に残る貴重なデータペースでもある。われわれはそのような症例報告の価値を十分認識している。
 不人気とは逆に、最近毎日のように紙上で目にするものに、改正臓器移植法によって脳死の判定を受けた人の臓器移植が家族の承諾だけで行われた記事がある。その記事を目にするたびに、半年前、私自身に起こった心肺停止の経験が思い起こされる。人工呼吸と数回のAEDで心拍は再開したが、当日と翌日の2回の脳波を含む諸検査結果をもとに、救急病院の担当医から家族に、回復の可能性は絶望的であり、植物人間にもなれないだろうと説明された。しかし、家族の希望で低体温下のICU管理が継続され、3、4日後には意識が回復に向かい、2週間でICUを退出。約1ヵ月で独歩退院して、6ヵ月後の今こうして編集後記を書いている。私事で恐縮だが、私の蘇生に関与してくださった皆様にこの場を借りて心からの感謝の意を表したい。
 私自身はまだ意識が朦朧としていた時のことで家族から聞いた話ではあるが、救急担当医は,私の回復を「奇跡が起こった」と表現したという。この奇跡は、私自身にとって極めて幸運な出来事であったと同時に、非常に勉強になった。私の家族や知人,蘇生に携わっていただいた救急関係者の方々にとっても貴重な経験となったに違いない。のみならず、あれが奇跡であったとすれば、当世人気の臓器移植の対象となる脳死に関連した資料として、不人気な症例報告をする意義がある出来事であったと思う。一流の救急病院で適切に対応していただいた結果であるから、症例報告に必要な医学的資料は十分に存在しているはずである。


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1 コメント

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Unknown ()
2011-01-25 22:52:20
脳低温療法により社会復帰した例はけっこうあると聞いていました。
しかし、「脳死」→即移植というのが当たり前の風潮となれば、家族にそういった知識があって希望するという場合にしかその治療が受けられなくなってしまうのでは、とたいへん恐ろしい気がします。
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