記事「米国防分析研究所の元主任分析官が告発したV-22オスプレイの本質的欠陥[翻訳資料]なぜV-22オスプレイは安全でないか」で紹介したオスプレイの欠陥について、レックス・リボロ氏が言及していないいくつかの点についてここで補足したい。
オスプレイは小径のプロップローターでVTOL(垂直離着陸)させるための重量の制約、CH-46の代替用途という寸法的制約により、極めて余裕のない設計になっている。これがオスプレイの危険性の根源である。
至上命題の軽量化のため、機体構造の大部分は複合材料+プラスチックで作られている。これが実に燃えやすく、また燃えた場合に有毒ガスを発生させる。
http://www.g2mil.com/V-22survive.htm
オスプレイの事故での死亡率の高さは、機体レイアウトの特異性に起因する不安定さ(容易に予期しない急横転に入る)とともに、この燃えやすさが関係している。
通常のヘリコプターの動力伝達シャフトは金属製だが、オスプレイは軽量化のためこれにも複合材料+プラスチック製素材を採用し、しかも左右で14もの接手を配置した極めて複雑な構造になっている。燃えやすく分割構造のため共振しやすいシャフトの採用はそれ自体がトラブルのもとである。(1992年7月の試作4号機の右エンジンナセル出火による墜落事故)
最近の不時着事故でもこれに起因している可能性が報じられていた。(7月9日のノースカロライナでの緊急着陸)
重量軽減の影響は、オスプレイに使用されている油圧システムでの野心的な設計にも及んでいる。
一般的なヘリコプターの油圧システムは3000PSI(ポンド毎平方インチ)・210kgf/cm2のシステムを採用している。一方オスプレイは5000PSI(ポンド毎平方インチ)・約350kgf/cm2という高圧システムを採用している。配管の材料も通常のステンレスではなく軽量なチタンを使用している。
確かに同じサイズのシステムでも、より高圧で作動するなら効率的だ。軽い素材も機体の軽量化に大きく寄与するだろう。これらは一見いいことづくめに見えるが、現実はそうはなっていない。
重くても粘りのあるステンレス配管と比べて、加工が難しく脆いチタン製のパイプやコネクタからの作動油漏れが多発して、火災事故さえ引き起こしている。
(2000年12月11日の海兵隊VMMT-204部隊所属の18号機 (MV-22B)の事故)
配管は三重の冗長性を持っているとされているが、ポンプやアクチュエーターまで三重配置になっているわけではないので、主要な機器が集中する重いエンジンナセルと、高速回転のプロップローターの引き起こす高い振動負荷は、脆いチタン製の油圧システムの信頼性を大きく引き下げている。
水平飛行時に重い機体を支えるオスプレイの主翼は、プロップローターの下方吹き降し気流(=揚力)の妨げとならないよう、また上記外寸の制約もあって、固定翼機として例のない小面積である。(本来は↓の上部の図ぐらいの主翼と水平尾翼が必要)
このため、オスプレイの滑空比は4!という驚異的な悪さになっている。1000mの高度があっても、たった4km先にしか行けないのだ(ちなみに最新のジェット旅客機では18~20)。
http://www.g2mil.com/V-22survive.htm
引退したスペースシャトルの滑空比がほぼ等しい4.5なので、仮にオスプレイの全エンジンが停止して滑空での不時着を余儀なくされることになった場合、スペースシャトル並みの高速(およそ対気速度350km/h)での接地を強いられることになる。
http://www.g2mil.com/V-22survive.htm
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%88%E3%83%AB
スペースシャトルについて関係者は「空飛ぶレンガ」「羽の生えたレンガ」と揶揄していたが、オスプレイにもそれがぴったり当てはまる。オスプレイのこの状態での沈下速度は180km/h。パイロットは不時着場所を選ぶ余裕もなく地面にたたきつけられてしまうだろう。
この小さな主翼=異常な高翼面荷重のため、最大積載量での飛行時では、1基のエンジン故障でも水平飛行の維持は極めて困難になるだろう。また、エンジンナセルを斜めにしての着陸も、プロップローターの揚力が半減してしまうため着陸速度が速くなり、これまた難しくなると思う。
(Fuku)