米国防分析研究所の元主任分析官が告発したV-22オスプレイの本質的欠陥(リブインピースホームページ)より転載
http://www.liveinpeace925.com/us_base/osprey_is_unsafe.htm
[翻訳資料]なぜV-22オスプレイは安全でないか(その五)
Why the V-22 Osprey is Unsafe?
http://www.g2mil.com/V-22safety.htm
5. ローター後流とその翼端の渦に対する過敏さ
1基の回転翼の後流と回転翼端から発生する渦がV-22の「不意自転」の契機となることを示す有力な飛行データがある。近接して飛ぶ他の機体の直接的な影響で「不意自転」を起こしたというケースが、少なくとも3件存在している。現在海軍とベル/ボーイング社は、飛行時の他機との間隔を横方向で250フィート、上下は少なくとも50フィート保持するとする厳格な操縦制限を設けることでこの問題に対処した。
この点について2つの懸念すべき問題がある。
1番目として、オスプレイのローターで発生した気流とローター翼端が発生させる渦が、風向き次第では非常に長い時間、長い範囲にわたって残り続けるということが知られている。
アメリカ連邦航空局のガイドラインでは、他の航空機によるそうした渦の影響を回避するために少なくとも2,000フィートの間隔を維持するよう規定している。
第2の問題は、視界が悪い、もしくは狭い限られた着陸エリアという状況下では、パイロットはある程度この間隔制限を無視しがちになるということだ。これらの度合いと範囲を定量化するための飛行試験は、切実な問題であるが、今現在、それらは未実施のままとなっている。
歩兵の空輸はV-22の主要な任務の1つであるが、それらの作戦の定義が、多数の航空機を同時に同じ場所に着陸させることであるとすれば、懸念の原因となる。
6. 高い吹き降ろし気流速度
V-22の高いローター円盤荷重のため、その吹き降ろし速度は従来のどのヘリコプターと比較してもおよそ2倍になり、そして、(互いに反転して回転する)並列配置のローターのため、飛行方向に対して直角に2つの異なった吹き降ろし後流が生じる。これらは、安全性に係わるいくつかの運用上の問題に影響を及ぼす。最も重要なものとして私が確信するのは、夜に砂漠に着陸する際の吹き降ろしの効果だ。これはどんなヘリコプターでも挑戦であるが、V-22の場合はより困難で、潜在的に危険だ。
我々はこれらの状況下での限定された回数の作戦を見たが、その結果は決してよいものではなかった。OPEVALに記載された飛行機搭乗員のコメントは、この懸念を端的に要約している。
「CALS(近接航空着陸支援作戦)の間、砂漠地帯で視界を明瞭に保つことは、とても困難だった。我々は今広い着陸区域に向かっている。そして、狭い場所への着陸は、ローターや胴体を障害物に接触させる危険性を格段に増大させる。」(航空機関士)
「夜間暗視ゴーグル(NVG)を装着した場合、機上からの低い視程により地形や樹木その他の識別が出来なくなり、極めて危険性の高い装備となる。」(航空機関士)
「砂漠での着陸は、飛行機搭乗員にとって挑戦である。エンジン出力の低下は、よくある出来事だ。」(パイロット)
「ローターの吹き降しが出力低下を招いたので、ほとんどの場合、着陸することができなかった。」(乗務員)
「高速のローターの吹き降しのため、V-22と交替されるCH46EやCH53Dなどと同じ環境で運用するのは不可能だ」(キャビンクルー・メンバー)
「砂漠での離着陸に際して、夥しい量の埃と砂が機内に侵入してくるのは明白だ。多くの失敗や誤りが着陸時に起こる。大部分の問題は、ブレーカーのリセットで解決できるが、埃と砂はどのようなシステムにも否定的な影響を及ぼしている。」(パイロット)
「砂地や砂漠への離着陸は、今夜は出来なかった。」 (パイロット)
「150フィート(45m)上空のホバリングでも、埃は雲のように舞い上がった。」(パイロット)
「地上から200フィート(60m)の高さでのホバリングで巻上げられた土埃は、かなり視界を遮り、またエンジンナセルのオイルクーラーを詰まらせて、プロップローター・ギアボックス(PRGB)やタービンシャフト・ギアボックス(TAGB)の油温が上昇して警報が鳴ってしまった。"(英国海軍・運用実験ディレクター)
「実際の砂漠に、V-22が着陸するのは、とても挑戦的なことだ。」(パイロット)
「整備員から見ると、この飛行機を飛ばす最良の方法は、20℃ぐらいの気温のよく晴れた日に、湿気のない舗装された滑走路という条件が満たされた時だ。」(整備主任)
同様のこと(吹き降ろし気流による視界の制限)を、私は第1回目の水上での運用操作の評価のときに目撃した。最初に10ノットの対地速度で水面から10フィート上を通過しようとしたとき、パイロットは明らかに水面を見失ってしまい、機の胴体を水中に突っ込んでしまった。このときはただちに回復できたが、その後同様の事態が起きていたら、別の結果になっていただろう。
さらにV-22での飛行経験を積むことで、パイロット達はV-22吹き降ろしの衝撃を軽減して砂漠への着陸能力を高める技術を開発するかもしれない。しかしそのような技術が成功しない限り、夜間に砂漠に着陸する能力は、安全性への懸念として残り続ける。
結語
上記の問題に加えて、不注意な、あるいは疲れたパイロットが直面するV-22に固有の特異性として、横滑りを伴った頭上げ(PUWSS)と、2つのエンジンナセルの過変調という最重要の2つの問題がある。
重要なことは、V-22に関わるこれらの懸念の全てが、従来のヘリコプターと比較してより多くのトラブルに発展する要素を持っていて、同機が戦場や敵対的な環境で使用されれば、従来型のどんなヘリコプターよりも大きな事故率を生むことを意味するということである。不幸なことに、これらの問題の全てが、V-22の特異な基本設計-並列配置のローター構成、高いローター円盤荷重、ロール方向と偏揺れ方向の制御を推力の差動で行うこと-に起因しており、変更が不可能ということである。物理的にそれについてできることはほとんどない。飛行機搭乗員への広範囲な教育とトレーニングと、より良い警告システムは確かに助けになるだろうが、基本的な不安定性を除去することはできない。
(ハンマー)