巷で話題になっている「子育てハッピーアドバイス」という本を読みました。シリーズもたくさん出ています。精神科医、小学校スクールカウンセラーの明橋大二氏の本です。
はじめは家庭での子育ての個人的な関心で読み始めたのですが、読めば読むほど、橋下・大阪維新の会の「教育基本条例」の内容が、この本で「子育てでは間違ってもこうしてはならない」と言っていることそのものなのです。
「これをやりなさい」と意味もなく強制したり、「何でおまえはこんなことをやったんだ」と頭ごなしに叱責したり、「できなかったらおやつを与えない」と恐怖心をあおったり、実際におやつを与えない罰を加えるなど、子どもに接し方として決してやってはならないこととしていることが、教育基本条例で強制、服従、恫喝、懲罰などで教員と子どもを支配しようとしていることと全く同じです。
この本では直接は親の子育てについて書かれていますが、学校での教育にもかなりの部分が当てはまるのではないかと思います。重要なのは子どもの立場に立って考え、子どもの人格を尊重するということなのです。
「2万%強制の教育」とは、子どもの人格を破壊し、人生そのものを台無しにしてしまうかも知れない教育なのです。
(『子育てハッピーアドバイス』より)
■子どもに心配な症状がでるのは、しつけがなされていないからでも、わがままに育てられたからでもない。
この認識が、「最近の子どもはしつけがなされていない、教育は2万%強制」という橋下氏の考えに真っ向から対立します。
「よく言われるのは「ちゃんとしつけがなされていない」
「わがままに育てたから」、
と今の子どもを否定的に見る言葉です。
しかしこれは決して本当の問題ではありません。
それは一言で言うと
子どもの自己評価の極端な低さです」
「「自己評価」とは
自分は生きている意味がある、
存在価値がある
大切な存在だ
必要とされている
という感覚のことです。
これが生きていく上で
一番大切です。」
「しつけも勉強も大事ですが
自分を肯定できる、
生きていていいんだ、
大切な人間なんだ、
存在価値のある人間なんだ
という気持ちを、子どもの心に育てていくことがいちばん大事なのです。」
■しつけかた
「まずはじめに、不登校、引きこもり、キレるこども、少年非行、少年犯罪など、現代のいろいろな子どもの問題が、しつけ不足で起きているケースはむしろ少ない。逆にしつけすぎ(体罰、厳しすぎるしつけ)から起きるケースが多いのです。」
「しつけが全く不必要ということではありません。基本的な生活習慣、他人のことを思いやる行動を身につけることは大切です。」
「一番大切なことは、親自身が身をもってあるべき姿を示していくこと」
→しつけとは、基本的な生活習慣と対人関係であるとされています。それは決して強制ではなく、豊かな社会生活、人間関係をはぐくんでいくための文化であり、まずは親が見本をみせて習慣づけていくことが大事とされています。
そして“なかなかあいさつができない子もいるが、それは社交的な子もいれば引っ込み思案な子もいるということで、いろいろな性格の子どもがいるということ”に過ぎないのです。
■子どもを守るためにはまずお母さんを守る
「子どもを守ろうとするならまず、それを支えているお母さんを守らなければなりません。」
として、子育てする母さんの大変さを周りの皆が理解し、サポートする体制が必要として締めくくっています。
責任感が強かったり、生活に余裕がなくて、どうしても子どもに対して冷たくしたり辛くあたってしまうお母さんに対しても優しい眼差しが向けられています。
これも家庭での子育てを対象にかかれていますが、学校にも当てはまるのではないかと思います。
大変な重圧にある先生に対して、そのしんどさを理解し、ささえていくことが必要だと思います。
(『子育てハッピーアドバイス2』より)
■これだけは忘れてはならないこと
「子育てで“これだけは忘れてはならない”ということは
子どもを自分の持ち物のように思わないということ
子どもといっても、一人の人格を持った人間です。
ここから、子どもの気持ちを尊重し
子どもなりの生き方を大切にするという姿勢が生まれてくると思います
子どもの人生を親の自己実現のために使ったりしない」
「子どもを自分の持ち物のように思わない」って、教育基本条例は、子どもを国や企業の持ち物であるかのように見なしていませんか。子どもの人格も人生も完全に否定しています。条例は、愛国心を持ちグローバル社会に対応できる人材に子どもを育成することを基本理念に掲げているからです。
→子どもたちの人生を、知事の自己実現のために使ったりしない
この本で言っていることが、教育理論として正しいかどうかという原理原則的なところはわかりませんが、育て方はこうありたいけれどなかなかうまくいかない、しかしこうしたら子どもももっとのびのびと育つだろうとまさに日々思っているようなことが書いてありました。子育てや子どもの教育に悩む人にとってとてもやさしく前向きにしてくれる本だと思いました。
この本では直接は書かれていませんが、現代の子どもたちが置かれている環境や、この十数年の経済的社会的変化のもとで、子どもたちがどう変化し、それに対してどうアプローチするのかという観点は、別に考えなければならないと思います。
しかし、子どもに対して教育はどうあるべきかという基本的な姿勢を提案しているように思います。
(ハンマー)