1/16の君が代訴訟最高裁判決について、各紙、「処分は裁量権の範囲内」として、教育委員会が「君が代」処分をする裁量をもっているという処分容認の側面を強調するものと、「行きすぎた処分に歯止め」と、“減給・停職に対してはやり過ぎ”の方を強調するものに分かれています。
以前は全く「日の丸・君が代」は卒業式にはなく、ないことがそもそも当然であり、不起立者に対する処分を認めたことそのものが許されませんが、1989年の学習指導要領改訂、1999年の国旗国歌法、東京での2003年10・23通達と強制がエスカレートしていく中で、判決が“良心の最後の砦”として、教員個人が不起立を貫くことの意味に言及し、また「君が代」強制が学校現場に与える否定的側面を浮かび上がらせた意味はとても大きいと思います。
処分の軽重の判断は別として、 「君が代」強制・処分が子どもにとっても、教員にとっても、学校教育にとってもよくない、教育の理念を逸脱していると最高裁が認定したと言ってもいいのではないでしょうか。
朝日新聞の要旨では、判決文の長さと同じ量で、桜井裁判官の補足意見と宮川裁判官の反対意見を掲載しています。
重要なのは、教員の思想・良心の自由、教育現場での自由は、最大限尊重されなければならないということを認めていることだと思います。
宮川裁判官の反対意見では、公権力による政治介入に警告を発し、起立・斉唱の職務命令が憲法19条違反であることが多数派の意見だと言っています。
判決文は、
・不起立行為は職務命令違反ではあるものの、教員の歴史観・世界観に起因するもので、式そのものを妨害するものではないこと。
・処分は戒告にとどめるべきで、不起立だけを持っての減給・停職は裁量権の逸脱である。
などとしています。
桜井裁判官の補足意見は、
・「処分対象者は、自らの歴史観との葛藤を経て、信条と尊厳を守るためにやむを得ず不起立を繰り返すことを選択した。信条に忠実であるとほど心理的に追い込まれている者がいることが推測できる。このような過酷な結果をもたらす加重処分は、法が予定している懲戒制度の運用の許容範囲にはいるとはとうてい考えられない。」
・「紛争が繰り返される状態を1日も早く解消し、自由で闊達な教育の実施が切に望まれる。」
としています。
さらに
宮川裁判官の反対意見は、
・「教員には教育の自由が保障されている。公権力によって特別の意見のみを教えることがあってはならず、ある程度の裁量が認められる。」
・「教員だからこそ、一般行政に携わる者と異なり、自由が保障されなければならない面がある。」
・不起立は「自らの思想・良心の核心に反する行為」である。
・「不起立行為は信念に起因するもので、いわゆる非行・違反行為とは次元を異にする。」・「原告らの歴史観は独自のものではなく、一定の広がり・共感がある。」
・「学説などでは、起立・斉唱を職務命令で強制することは憲法19条に違反するという見解が大多数だ。」
・「注意、勧告にとどめるべき。」
もっとも河原井さんは処分取り消しだが根津さんの処分は妥当など決して看過できないし、根津さんや処分が取り消されなかった多くの人の思いを考えれば簡単ではありませんが、東京の異常で執拗な攻撃、そして大阪の教育基本条例と橋下氏の常軌を逸した言動に対して大きな制約を課すものとなるし、そうしなければならないと思います。
↑朝日新聞掲載の判決要旨。50代男性教師の話も是非お読み下さい。
(ハンマー)