大阪労働者弁護団、連合法曹団に引き続き、大阪市の「職員の政治的行為の制限に関する条例案」に反対する会長声明が出されました。この条例案に対して法曹関係者からこのように次々と違憲・違法の指摘がなされています。橋下市長は弁護士資格を持っているはずなのですが、日本の法体系に関する基本的な見地すらわからなくなってしまっているようです。
中学の公民の授業で習うことですが、大切なことなので大きく書いておきましょう。
憲法第98条 この憲法は国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
さて、国家公務員の政治的行為に対して刑事罰を適用することは、猿払事件の最高裁判決(1974年)では合憲とされましたが、2010年の東京高裁判決では違憲判断が出ています。この判決においては、猿払事件を批判的に捉え、その当時に比べて「その後の時代の進展,経済的,社会的状況の変革の中で,猿払事件判決当時と異なり,国民の法意識も変容し,表現の自由,言論の自由の重要性に対する認識はより一層深まってきており,公務員の政治的行為にっいても,組織的に行われたものや,他の違反行為を伴うものを除けば,表現の自由の発現として,相当程度許容的になってきているように思われる」との指摘がなされています。
この判決はまた「様々な分野でグローバル化が進む中で、世界標準という視点からも改めてこの問題は考えられるべきであろう」とも述べています。
これは、国際人権規約にもとづき人権が守られているかどうかについての国連の日本審査が、2008年におこなわれ、そこにおいて、公務員の勤務時間外の政治活動をも規制の対象とする国家公務員法が問題にされたことを念頭に置いていると思われます。
大阪の条例案は、国家公務員法よりもいっそう規制の度合いが強く、違反者に免職を含む甚だしい不利益を科すものですから、人権規約に違反しているという国際的な指弾を受けるのは確実でしょう。
橋下市長は「グローバル化」とか「国際競争に打ち勝つ」とかいう言葉が好きなようですが、人権意識の方も世界標準にあわせてほしいものです。(鈴)