米国のIAC(インタナショナル・アクション・センター)が、多数の犠牲者を出しているイスラエルによるシリア空爆に抗議し声明を出していますので、翻訳し紹介します。IACは米国でイラク反戦をはじめとして精力的に平和反戦運動をおこなってきた団体です。
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イスラエルによるシリア攻撃は戦争を拡大する
――米国の反戦運動は警戒態勢を――
IAC(インタナショナル・アクション・センター)声明
2013.5.5
5月2~3日と4~5日深夜のイスラエル戦闘機によるシリア・ダマスカス郊外の空爆は、シリアにおける現在の戦争への外国からの介入を危険なまでにエスカレートさせた。米国の反戦運動は、米国とNATO諸国と今やこの地域の主要な軍事的脅威となったイスラエルによるますます拡大する企てに、警戒態勢をとらなければならない。それは、バシャール・アサドのシリア政権を転覆し、それを帝国主義の傀儡政権に置き換えるための企てである。
今回の爆撃とシリアに対するイスラエルのこれまでのすべての攻撃へのワシントンの明らかな支持からすると、シリアの戦争へのあからさまな帝国主義的軍事介入が開始されるおそれがあるようにみえる。ここ2年にわたって、欧米帝国主義はカタールとサウジアラビアを通じて、またNATOメンバーであるトルコを通じて武器を供給し、シリア内の反動的「反体制」勢力を武装させ、また資金供給もしてきた。この支援が反体制勢力によるシリア人の流血拡大を持続させてきた。
ここ数ヶ月、米国だけでなく西アジア地域の旧宗主国である帝国主義的英仏からも支援がおこなわれ、それがますますあからさまに増大してきている。ペンタゴンはヨルダンのシリア国境に特殊部隊を配置している。米国とNATO諸国はミサイル迎撃砲部隊をトルコのシリア国境に配置している。
NATO諸国の政府と大手メディア・マシーンは、シリアのアサド政権に対する徹底したプロパガンダ・キャンペーンをおこなってきた。化学兵器の使用についての作り話は事実無根であった。帝国主義的武器取引は数万人のシリア人の命を奪っているが、その責任のすべてがダマスカス政権になすりつけられている。帝国主義者たちにとっては、シリアの本当の罪は米国と西欧から独立をもぎ取ったことと、イスラエル植民地国家の敵であることにある。
「反体制」勢力に対する物的、外交的、政治的支援にもかかわらず、シリア政府はここ数週間、明らかに軍事的に反政府勢力を打ち負かしつつあった。同時に「反体制」勢力は何十もの小グループに分裂し、それぞれが独自の指導部をもっている。これら反政府勢力の軍事的イニシアティブは、イデオロギー的にアル・カイーダに近い複数のグループに移ってきている。米国とその同盟者は、世界中でこのイデオロギーに近い人々を勧誘し、傭兵や反動的原理主義者である彼らを正真正銘の決死隊としてシリアに送り込み、そのことでこういう事態になることに貢献してきた。彼らはシリアに宗派的な大量殺戮をもたらすだけである。
イスラエルの攻撃についての今日または明日の口実がどんなものであれ、――またイスラエルと米国の後援者は大量の嘘をつくだろうが、――イスラエルによるシリア空爆は、イスラエルが内戦の一方の側に立つこと、ダマスカスに対する反動的反乱の側に立つことを明確にした。これによって、一方の側に血塗られた米国・NATO帝国主義と現地の憲兵イスラエルが立ち、他方にシリア人民とシリア政府とその同盟者が立つということが明確になった。それは、米国・NATO勢力が、この地域の独立国に対してイスラエルという闘犬をけしかけるという絶望的な手段に訴えているということを意味する。
イスラエルがこの地域で帝国主義の手先の役割を果たすのは、初めてのことではない。1956年のスエズ運河をめぐるフランス・イギリス・イスラエル連合、1967年のシリア政府に対する戦争、1982年のレバノンへの侵略と占領、さらに近年のパレスチナとレバノンの解放勢力への攻撃など、いくつも実例がある。この地における植民地拡大国家としての自らの利益を守りながら、イスラエルはまた、世界を支配している米国・NATO帝国主義勢力の利益に奉仕している。米国・NATO諸国があらゆる領空域を諜報し監視しコントロールしている現在の状況の下では、イスラエルの空爆はワシントンの承認のもとにおこなわれたと想定するのが合理的であろう。
米国の反戦運動にとって、今はまさに、誰がシリアにおいて戦争を推進しているのかということについての疑いを取り除くときである。米国・NATO・イスラエルという世界の抑圧勢力が、すべて勢揃いしてシリア政府に対峙している。今こそ米国・NATO・イスラエルに要求すべき時である、シリアから手を引け!と。
(翻訳 ヒデ)