スリランカ経済破綻--中国の「債務の罠」は全くの嘘
スリランカが経済破綻に陥り、大規模な反政府行動が巻き起こり、大統領が国外逃亡しました。
日本のメディアを含めて西側メディアはここぞとばかり、「中国の債務の罠だ」と騒ぎ立て、まるで中国に責任があるかのように書き立てています。日本の主要メディアしか見ない人に、「やっぱり中国はひどい国だ」「高利貸しで途上国を食い物にしている」と印象を持たせるためにやっているとしか思えません。
しかし、事実は全く違います。そのことを「本当の債務の罠;スリランカは中国ではなく西側に圧倒的多数を負っている」(1)というマルチポラリスタのベンジャミン・ノートンの記事は明らかにします。
スリランカの対外債務のうち中国の出資は10%、日本の出資も10%です。それなら日本の債務の罠も大声で問題にすべきでしょう。そして、もっと大口の債権者がいます。全体の債務の8割は米と西側資本なのです。米国が主要に支配的影響を持つ世界銀行、米日が支配的影響を持つアジア開発銀行が20%以上を占めます。さらに47%を持つ民間債務のほとんどは欧米諸国の資本です。ノートンは日本を含めて西側資本が債務の8割を占めていると評しています。(グラフはスリランカ財務計画省対外支援局)。こんな実態を無視して、全部中国の責任に押し付けるメディアはもはや謀略機関としか言いようがありません。
こんな中で、事柄そのものを冷静に分析している遠藤誉氏の「スリランカ大統領「デフォルト」で国外逃亡:主原因は有機農業、中国債務はわずか10%」(3)は注目に値します。
彼女の論考は化学肥料の輸入費用が国家予算の2%に達し、それを減らすために昨年4月に「化学肥料輸入禁止」「有機農業に切り替え」を突然命じたラジャパクサ政権の失策で食糧生産が激減したこと、さらにコロナによる観光業への打撃と物価高騰が国家財政を破綻させ、国民の不満を爆発させたと分析しています。
スリランカの債務についてはノートンと同じく中国の債務が10%に過ぎず大半の借入が西側資本からと認めています。注目すべきは債務の半分を占める西側資本市場からの借入利子は7%前後ではないかと遠藤氏が推測していることです。その中で中国からの利子は3.2%で西側資本と比べても低利です。さらにこれまでに提供してきた28億ドルの支援に加えて、追加の援助借金も検討中であることも伝えていいます。主要メディアは、「15日に開幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、コロナ禍で膨らんだ開発途上国の債務問題をめぐり、日米欧が最大の貸し手である中国の責任を追及した」と伝えますが、スリランカの事例はこれらの情報が全く事実に反することを示しています。
遠藤氏は中国が途上国との連携を強めることで米欧日の強まる対中制裁をかわしたいと考えており、一帯一路で途上国に豊かになってもらわないと困るし、援助をしている側で「債務の罠」に陥れようとしている事実はないと指摘しています。客観的で公正な目で見ていると思います。ただ、最後に一帯一路で中国が強大になっていくことには警戒しなければならないと主張し、反中国の立場に立つ論者らしさを出しています。この点は首肯できません。
(1)まずスリランカの債務の実態について書いた記事をマルチポラリスタから紹介します。
本当の債務の罠:スリランカは中国ではなく西側に圧倒的多数を負っている - マルチポラリスタ (multipolarista.com)
(2)次日本メディアのいくつか。反吐が出そうな中国犯人説だ。
スリランカ、中国に返済再考を嘆願 債務のわな、コロナ追い打ち:時事ドットコム (jiji.com)
安倍政権が警告していた「債務の罠」 中国の一帯一路でスリランカが国家破産 危機的状況の国はほかにも…アジア、アフリカに連鎖か(夕刊フジ) - Yahoo!ニュース
中国の魔の手から救え!〝債務の罠〟でスリランカ破産宣言 「借り」を作ったきっかけは 日本も他国どころではない現状(夕刊フジ) - Yahoo!ニュース
スリランカで経済危機と政情不安拡大 中国依存「債務のワナ」の指摘も:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
(3)冷静に論じている遠藤誉氏の論考。
スリランカ大統領「デフォルト」で国外逃亡:主原因は有機農業、中国債務わずか10%(遠藤誉) - 個人 - Yahoo!ニュース
スリランカが経済破綻に陥り、大規模な反政府行動が巻き起こり、大統領が国外逃亡しました。
日本のメディアを含めて西側メディアはここぞとばかり、「中国の債務の罠だ」と騒ぎ立て、まるで中国に責任があるかのように書き立てています。日本の主要メディアしか見ない人に、「やっぱり中国はひどい国だ」「高利貸しで途上国を食い物にしている」と印象を持たせるためにやっているとしか思えません。
しかし、事実は全く違います。そのことを「本当の債務の罠;スリランカは中国ではなく西側に圧倒的多数を負っている」(1)というマルチポラリスタのベンジャミン・ノートンの記事は明らかにします。
スリランカの対外債務のうち中国の出資は10%、日本の出資も10%です。それなら日本の債務の罠も大声で問題にすべきでしょう。そして、もっと大口の債権者がいます。全体の債務の8割は米と西側資本なのです。米国が主要に支配的影響を持つ世界銀行、米日が支配的影響を持つアジア開発銀行が20%以上を占めます。さらに47%を持つ民間債務のほとんどは欧米諸国の資本です。ノートンは日本を含めて西側資本が債務の8割を占めていると評しています。(グラフはスリランカ財務計画省対外支援局)。こんな実態を無視して、全部中国の責任に押し付けるメディアはもはや謀略機関としか言いようがありません。
こんな中で、事柄そのものを冷静に分析している遠藤誉氏の「スリランカ大統領「デフォルト」で国外逃亡:主原因は有機農業、中国債務はわずか10%」(3)は注目に値します。
彼女の論考は化学肥料の輸入費用が国家予算の2%に達し、それを減らすために昨年4月に「化学肥料輸入禁止」「有機農業に切り替え」を突然命じたラジャパクサ政権の失策で食糧生産が激減したこと、さらにコロナによる観光業への打撃と物価高騰が国家財政を破綻させ、国民の不満を爆発させたと分析しています。
スリランカの債務についてはノートンと同じく中国の債務が10%に過ぎず大半の借入が西側資本からと認めています。注目すべきは債務の半分を占める西側資本市場からの借入利子は7%前後ではないかと遠藤氏が推測していることです。その中で中国からの利子は3.2%で西側資本と比べても低利です。さらにこれまでに提供してきた28億ドルの支援に加えて、追加の援助借金も検討中であることも伝えていいます。主要メディアは、「15日に開幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、コロナ禍で膨らんだ開発途上国の債務問題をめぐり、日米欧が最大の貸し手である中国の責任を追及した」と伝えますが、スリランカの事例はこれらの情報が全く事実に反することを示しています。
遠藤氏は中国が途上国との連携を強めることで米欧日の強まる対中制裁をかわしたいと考えており、一帯一路で途上国に豊かになってもらわないと困るし、援助をしている側で「債務の罠」に陥れようとしている事実はないと指摘しています。客観的で公正な目で見ていると思います。ただ、最後に一帯一路で中国が強大になっていくことには警戒しなければならないと主張し、反中国の立場に立つ論者らしさを出しています。この点は首肯できません。
(1)まずスリランカの債務の実態について書いた記事をマルチポラリスタから紹介します。
本当の債務の罠:スリランカは中国ではなく西側に圧倒的多数を負っている - マルチポラリスタ (multipolarista.com)
(2)次日本メディアのいくつか。反吐が出そうな中国犯人説だ。
スリランカ、中国に返済再考を嘆願 債務のわな、コロナ追い打ち:時事ドットコム (jiji.com)
安倍政権が警告していた「債務の罠」 中国の一帯一路でスリランカが国家破産 危機的状況の国はほかにも…アジア、アフリカに連鎖か(夕刊フジ) - Yahoo!ニュース
中国の魔の手から救え!〝債務の罠〟でスリランカ破産宣言 「借り」を作ったきっかけは 日本も他国どころではない現状(夕刊フジ) - Yahoo!ニュース
スリランカで経済危機と政情不安拡大 中国依存「債務のワナ」の指摘も:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
(3)冷静に論じている遠藤誉氏の論考。
スリランカ大統領「デフォルト」で国外逃亡:主原因は有機農業、中国債務わずか10%(遠藤誉) - 個人 - Yahoo!ニュース