現在、朝鮮学校への差別政策に抗するための訴訟が大阪と名古屋で始まっており、他の地域でも同様の訴訟が準備されています。
この記事では、大阪でおこなわれている二つの裁判――①大阪府・市補助金裁判 ②高校無償化適用裁判――について紹介していきたいと思います。
①大阪府・市補助金裁判(「大阪府、大阪市に対する補助金不交付処分取消請求事件」)
大阪府と大阪市は、朝鮮学校(初級・中級・高級)に対して、これまで20年以上にわたって補助金を支給してきました。ところが、大阪府は、橋下氏が知事の時に、高級学校に対して2010年度の補助金を停止したのを皮切りに、2011年度には初級・中級学校に対しても補助金を停止し、そして今日、一校も補助金を支給されていません。大阪市も2012年3月に大阪府と連動して、補助金を打ち切りました。
学校法人大阪朝鮮学園は、この不当性を訴え、補助金の復活を求めて2012年9月20日に提訴に踏み切りました。
これまで口頭弁論が3回おこなわれ、第四回口頭弁論が2013年 6月12日 大阪地裁大法廷にて11:30から予定されています。(傍聴希望者は抽選のため30分前に集合)
②高校無償化適用裁判(「高等学校等就学支援金支給校指定義務付け等請求裁判」)
民主党政権下において開始された高校無償化制度は、公立高校の授業料を無償とするだけでなく、私立学校、そして外国人学校もこの制度に基づく支援金の対象となりました。ところが、朝鮮高校だけは「審議中」として何年も待たされたあげく、安倍政権が誕生したとたん、朝鮮学校を外すためにわざわざ省令の改変までおこないました。
これに対して、2013年1月24日、学校法人大阪朝鮮学園は、国を相手取って、朝鮮高校にも支援金の支給を求めるために提訴しました。(この同じ日に名古屋でも、朝鮮高校生徒・卒業生が原告となり国賠訴訟が提訴されました。)
これまで口頭弁論が2回行われました。次回の口頭弁論は7月29日、午前10時からです。(集合は30分前)
学校法人大阪朝鮮学園… 大阪府内の朝鮮学校を設置し、管理運営している学校法人。
現在、大阪朝鮮高級学校、東大阪朝鮮中級学校、中大阪朝鮮初中級学校、北大阪朝鮮初中級学校、 東大阪朝鮮初級学校、生野朝鮮初級学校、大阪朝鮮第4初級学校、南大阪朝鮮初級学校、城北朝鮮初級学校、大阪福島朝鮮初級学校がある。
この二つの裁判の内容をさらに詳しく紹介する前に、そもそも、なぜ日本に朝鮮学校が存在するのか、その歴史的経緯を見ていきたいと思います。
そもそもの始まりは、1910年に日本が朝鮮を植民地にしたことでした。朝鮮人は一方的に日本国籍者とされ、朝鮮語を禁じられました。したがって、1945年の日本の敗戦後、朝鮮語を復権させる運動が在日の朝鮮人によって高揚しました。
一方的に「日本人」とされた植民地政策のために朝鮮語を話せなくなった子どもたちに朝鮮語を学ばせたいという親たちの願い――しかし、その実現のためには極貧と差別、さらにはGHQと日本政府による激しい弾圧とも闘わなけれなりませんでした。(続く)
(鈴)