米は、イージス艦を南シナ海に入れるな!対中軍事挑発をやめよ!
10月27日、南シナ海で中国が建造を進める人工島スビ礁の周辺12海里海域に、米海軍がイージス駆逐艦ラッセンを進入させたことは、危険な対中軍事挑発である。米国は、今後も継続する方針を示している。絶対にやめるべきだ。
9月下旬の米中首脳会談で、オバマ大統領が人工島造成中止を要請したのに対して習近平国家主席が拒否したことで、米が軍事力を示すデモンストレーションとして駆逐艦を派遣したというのが直接のきっかけだ。だが、小規模な偶発的軍事衝突から本格的な戦争へとエスカレートする危険性がある。現に中国艦が米駆逐艦を追尾している。
米国は、中国近海の南シナ海に対して、中国の軍事力があることで有事の際に中東やアフリカのように自由に軍事行動・介入ができなくなることを恐れているのである。これが米が主張する「自由航行」の意味だ。だが米軍艦が、米本土から遠く離れた南シナ海を航行し、軍事介入するいかなる正当な根拠もない。
確かに私たちも、中国の埋め立てや軍事転用の可能性を支持することはできない。だがベトナム、マレーシア、フィリピン、台湾、中国が互いに領有権を主張する南沙諸島において、それぞれが建造物建設の示威活動を行っているというのが実情だ。事実上中国だけを名指しして軍事対決を煽ることは、きわめて政治的な敵対行為である。
※(書評)「中国脅威論」について冷静な視点を提供する本(2)『中国の軍事戦略』で明らかにしたように、南沙諸島のパグアサ島にはすでに実行支配しているフィリピンによって1970年代に未舗装の1,400m滑走路をもつランクド飛行場が建設されており、2014年6月フィリピン海軍幹部が滑走路補修計画を明らかにしている。またベトナムは、南沙諸島の砂州であるサンド・ケイで21000平方メートルを埋め立てて軍事施設を建設しており、ウエスト・ロンドン礁でも6万5千平方メートルを埋め立て、新たな建造物を設置したという。
安倍首相も菅官房長官も「理解できる」などといち早く米の駆逐艦派遣への支持を表明した。危険なことに、南シナ海での「有事」を想定し、「戦争法」を根拠に「重要影響事態」「存立危機事態」を発動し集団的自衛権行使に踏み切ることもメディアで無批判に語られている。それだけではない。戦争法が解禁する「平時の米艦防護」を根拠に、自衛隊と米軍による平時の共同警戒監視活動 (パトロール)や、海上自衛隊の艦船が米艦と「共同演習」として南シナ海を遊弋したり、 P3C哨戒機などが空から監視活動したりすることがあげられている。これは、日本から遠く離れた南シナ海での米による対中軍事挑発に自衛隊が協力すること、中国と軍事的に敵対関係に入ることだ。決して許されない。
(ハンマー)