日本政府は、米国によるシリア攻撃が迫る中、早々と支持を表明する準備に動き出している。
岸田外相と米ケリー国務長官が31日の夜に電話で協議したと報じられている。協議は日本側からの要請という。ケリー氏に対して岸田氏は「日本は化学兵器が使用された可能性が高いと考えている」とし、政権として支持する方向に動いている。石破茂幹事長は「時を置かずに支持することが必要だ」と発言している。
※岸田外相:米国務長官と電話協議 シリア対応で連携一致(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20130901k0000m010102000c.html
だが、シリア政府が化学兵器を使ったという証拠がないこと、そもそも化学兵器が使われたということさえ疑わしいこと、仮に化学兵器が使われたとしてもそれ自身が米国や日本への攻撃ではなく、個別的自衛権や集団的自衛権の行使にもあたらないことなど、米国の軍事行動の正当性の根拠は全く存在しない。シリア攻撃は「米の気にくわない国への侵略行為」という以外に言いようがない、そのような主権国家に対する無法で不当な武力行使である。
当然のように英議会で武力行使が否決され、英政府は軍事行動に参加しないことを決めた。NATOも軍事行動を拒否している。米は完全に孤立しているのである。
※シリア攻撃:米の正当性疑問 西側同盟国に広がらぬ支持(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20130901k0000m030081000c.html
※NATO、シリア軍事介入に不参加へ 事務総長が明言(朝日新聞)
http://www.asahi.com/international/update/0831/TKY201308310050.html
岸田氏が言うような「化学兵器が使用された可能性が高いと考えている」と判断できるような材料が日本政府に存在しないことはだれもがわかっている。米の言うことを鵜呑みにしているにすぎない。
菅官房長官は29日の記者会見で、シリア政府による化学兵器を使用の根拠を問われ「さまざまな具体的情報があるが、関係国とのやり取りなので控える」と口を濁している。また安倍首相は中東歴訪の最後の地カタールでタミム首長と会談し、「アサド政権は道を譲るべきだ」と、アサド政権の排除にさえ言及している。アサド政権の排除などは、今回の軍事行動の目的と絡んでオバマ大統領さえ言及していない。日本政府には、シリアが化学兵器を使ったという証拠や、シリア攻撃に関する米国の戦略目標の限定、軍事行動の中身や規模などをきっちりと吟味した上で自己の態度を決定するという発想がない。米がやることは何でも支持だと言っているのである。おそるべき無責任だ。すべてが米のいいなり、米国に自らの決定をゆだねている。
※シリア:化学兵器使用疑惑 菅官房長官「情勢悪化責任、アサド政権に」(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20130829dde007030009000c.html
※安倍首相「アサド政権は道譲るべき」 「化学兵器使用可能性高い」と非難(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130829/plc13082900290002-n1.htm
イラク戦争開戦当時、当時の小泉首相は「大量破壊兵器」の検証をすることもなく、独自に調査をすることもなく、イギリスやスペインにも先駆けてブッシュの戦争への支持を表明した。イラクに「大量破壊兵器」がなかったことが明らかになった後も、日本政府は開き直り、謝罪も反省も何一つしていない。
※イラク戦争と憲法9条(4)--戦争の大義=大量破壊兵器はなかった 日本政府は責任を明らかにすべき(リブインピース)
http://blog.goo.ne.jp/liveinpeace_925/e/9e9d19d489cbc90b35d6f584b238d56f
日本政府はイラク戦争支持の過ちを再び繰り返してはならない。
(ハンマー)