LiveInPeace☆9+25

「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

「戦争法」批判をかわすために自民党が100万枚刷ったビラのウソ

2015-06-06 | 集団的自衛権

 自民党が安保関連法(戦争法)案の内容を説明するための政策ビラ100万枚を刷って全国の組織などを通じて配ることにしたことが報じられている。これだけでも自民党内の動揺をあらわしている。
※中国の軍備増強「迫る危機」 自民、政策ビラ100万枚(朝日新聞)
 http://www.asahi.com/articles/ASH634FP1H63UTFK00B.html

ビラは以下。
※平和安全法制の整備(自民党)
https://www.jimin.jp/policy/pamphlet/

 しかし、このビラは、犯人が「私が真犯人です」と告白した後で、ウソの身の潔白書を配布しているようで、きわめて滑稽だ。
 まずここで書かれていることが、首相や閣僚自身が国会答弁で否定している。
 そして、このビラが印刷された直後に、衆院憲法審査会で、参考人の憲法専門家3人全員が「安全保障法は憲法違反」と断じた。ビラには、憲法違反に対する釈明は一切ない。
※6/4衆院憲法審査会で、参考人の憲法学者3人全員が「安保法制は憲法違反」と断言
http://blog.goo.ne.jp/liveinpeace_925/e/668b6180b8c63cc3ecbf3a0d580b8c26

 まず朝日新聞の記事で強調されている「中国の軍備増強「迫る危機」」だが、これは3つの意味で大きな問題がある。
 まず第一に少なくともこれまでの国会議論で「中国の脅威」を念頭に集団的自衛権行使が議論されたことはない。専らホルムズ海峡機雷除去である。「中国の脅威」と結びつかない。
 第二に、南シナ海での「中国の海洋進出」をあおっているが、南シナ海は香港、中国、台湾、フィリピン、ブルネイ、マレーシア、ベトナム、インドネシアに囲まれた海域であって、中国の領土問題である。南シナ海は日本とは何の関係もない。ホルムズ海峡や地球の裏側まで他国領土での武力行使に道を開こうとする日本と領海の防衛を問題にしている中国とどちらが脅威なのか。
 第三に「尖閣」における日中対立は、領土棚上げの日中合意を無視して一方的に国有化した日本の側に問題がある。しかも尖閣国有化した2012年9月直後には危機感を持った中国公船の「領海進入」が増えているが、14年には戻っている。
 これは防衛白書でも認めている。ビラで言う「頻繁に中国公船が進入」はウソである。

 2014年版「防衛白書」より

 その上でビラで書かれた5つのQとAを見てみよう。

Q:抑止力って何ですか。

A:外国からの攻撃に万全の備えがあることを相手に示して、日本への攻撃を事前にあきらめさせることです。まさに、「スキのない構え」です。

 これはウソである。
   安倍首相は国会答弁で、
 「日本を攻撃したら相当な打撃を覚悟しなければならないと相手に思わせる」
 「刀がいったん抜かれれば大変だと相手が認識」と語っている。

 これは必要最小限の防衛力で侵攻を防ぐという従来の「専守防衛」ではない。これまでの防衛政策の原則は「防衛はするが他国には攻め入らない」というのが原則であった。
 ところが「日本を攻撃したら相当な打撃」というのは「万全の備え」ではない。それは「倍返し」であって国連憲章でも禁じられている報復戦争だ。国会答弁で、「敵基地を攻撃する」とまで言っているが、これは「備え」ではない。攻撃される前に攻撃するという先制予防戦争である。
 攻撃兵器を作り海外派兵をいつでもできるという体制は、武装侵略国家である。

 集団的自衛権とは、米国が攻撃されたら、日本が攻撃されていなくても武力行使する権利だが、世界最強の軍事国家米国を攻撃するような国が、「日本への攻撃を事前にあきらめ」ることなどありえないだろう。まず米国への攻撃をあきらめるだろう。

Q:そんなに日本に危険が迫っているのですか?

A 日本周辺の状況の悪化に加え、時代背景も大きく変わりました。

  「日本周辺の状況の悪化」と客観情勢のように言っているが、悪化させているのは日本政府である。中国との関係では「尖閣国有化」と「靖国参拝」。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係では、6カ国協議の早期再会と経済制裁解除よって対話と交渉の道を整備することが先決である。恫喝と経済的締め付けによって、北朝鮮を追い込んでいるのは米日である。

※ある番組で、中国と経済活動をするビジネスマンたちの本音を聞くという企画があった。「中国人はビジネスマナーを知らない」「中国政府の規制がきびしい」など中国ビジネスの問題点を出してもらうという番組意図丸出しだったのだが、意外にも参加者たちは「そんなのは、慣れたらいい」「それほど問題とは持っていない」と言って拍子抜け。「ではなにか困っていることは」というと「安倍首相が中国人の感情を無視して靖国神社に参拝したりしたら大変」「領土問題で対立をあおらないでほしい」「うまくいきそうな商談が止まることがある」などが続出。レポーターは事情がつかめず問答を繰り返したがようやく「じゃあ問題は日本政府の側にあるということ?「ジャパンファクターなの?」と絶叫。みんなが顔を見合わしてうなずくというもの。

 
Q:アメリカの要請を断れず、関係ない戦争に巻き込まれないか、心配です。

A:絶対にありえません。新たな日米合意の中にも「日本が武力を行使するのは、日本国民を守るために限る」と、はっきりと書き込んでいます。

 安倍首相は国会で「米国とどこかの国が助けてくれと言われて、自動的にそこに行くことは有り得ない」「日本の意志に反して戦闘活動に巻き込まれていくことはない」と語っている。つまり自主的に参加する、自分の意志で参加すると言っている。

 安倍首相は「米軍が攻撃を受けても、何もできない、本当にこれでよいのでしょうか。」と語っている。戦争がどういうものかなど問題にしていない。米軍がやられて日本は放っておいていいのかと言っている。

 中谷防衛相は国会答弁で自衛隊の支援対象には「日米安保条約に寄与しない米軍」や他国軍も含まれると語っている。つまり日本防衛と「関係のない戦争」への支援もあると言っているのである。

その基準は「政府が総合的に判断する」で全く政府の裁量次第だ。

Q:集団的自衛権って例えば何をするのですか?

A:日本人の命を守るための非常に限定的な活動です。

 これもウソ。限定的どころか、切れ目のない安全保障、すなわちあらゆる戦争、紛争への関与。
 国会論戦で問題になっただけでも以下の戦争がある。
--北朝鮮を米国が空爆し、自衛隊も一緒に攻撃する戦争
--米イラン戦争が起こったら、米軍艦隊のためにホルムズ海峡で機雷掃海する戦争
--イスラム国を攻撃する有志連合軍を自衛隊が支援する戦争
--南シナ海で中国と軍事対決する米国を支援する戦争
--(イラク戦争のような)戦場に自衛隊を派遣して米軍のために武器弾薬を供給する戦争
--PKO活動等を飛躍的に強化し、治安維持、駆けつけ警護などを行わせる戦争

Q:徴兵制になって、若者が戦地に送られるって本当?

A:大きな間違いです。徴兵制は憲法で許されません。

 他でもない、自民党が変えたいと思っている憲法条項が徴兵制を禁じた規定18条だ。

 自民党が5月15日に出した「切れ目のない「平和安全法制」に関するQ&A」では以下のように書かれている。

 問10 将来、徴兵制が採用され、子供や若者が戦場に駆り出されるのではないですか?

答10 全くありえません。憲法18条は「何人も(中略)その意に反する苦役に服させられない」と定めており、徴兵制ができない根拠になっています。自衛隊は「志願制」であり、徴兵制が採用されるようなことはありません。
※「切れ目のない「平和安全法制」に関するQ&A」(自民党)
https://www.jimin.jp/news/policy/127735.html

ところが2012年に自民党が出した改憲案では、

(現行)の「第十八条何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」
が「自民党案」では、

第十八条 何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない。

となっている。

「いかなる奴隷的拘束」を「社会的又は経済的関係」での「身体拘束」に限定している。これ以外の奴隷的拘束は認めるということ、政治的・軍事的拘束、すなわち「徴兵制」の解禁を想定していのである。
※自民党改憲案は徴兵制に道を開く
http://blog.goo.ne.jp/liveinpeace_925/e/e2ea90ad662e12f152d6eb643e8672cd

 また、経済的徴兵制が問題になっていいる。
※[シリーズ集団的自衛権批判(4)]“就職できない若者は自衛隊へ”--「経済的徴兵制」の危険
http://blog.goo.ne.jp/liveinpeace_925/e/d3afedecc3e6e3dba402f9c95f581014

 自民党があえて徴兵制を否定するのは、海外派兵と殺害行為というこれまでと全く違う任務に自衛隊員をつかせなければならないが、その危険性を極力隠しておこうという意図に他ならない。

(ハンマー)


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