5月11日放送、MBS VOICE特集 “学校長へのアンケート 国歌起立斉唱 揺れ動く「声」”
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卒業式での「君が代」起立斉唱時、教員の口元チェックを行った岸和田市和泉高校中原校長の行為に対する府立学校校長らの思いを通じて、「君が代」強制問題に迫っている。
番組全体を通じて浮かび上がるのは、橋下市長がいかに「組織のマネジメント」「公務員としての規律」と強弁しようと、この問題の本質は日本国憲法の「思想・良心の自由」の侵害に関わる重大事案だということだ。
今年3月、卒業シーズンの最中に「大阪維新の会」の府会議員が、ツイッターでこう呼びかけたことから始まる。
「今度、式の取材で先生の口元をビデオで撮ってください。条例では斉唱することとなっています。日本で住む以上、法律を条令を守れ」
中原校長はこれに応じ断行した。
ところで、他の校長たちはこのことをどう考えているのか。
「VOICE」は大阪の府立学校、164の学校長にアンケートを行い、44人から回答を得たという。
卒業式と入学式の「君が代」起立斉唱が職務命令によって実施されたことについて、半数が賛成と答えた。(賛成22、反対6、どちらでもない14、無回答2)
一方、式の最中に教員の口元をチェックするという方法については、当然と答えたのは3人、やりすぎだとした校長が過半数の26人にのぼった。(当然3、やりすぎ26、どちらとも言えない12、無回答3)
ここに校長の苦悩がにじむ。
これまで、「君が代」強制問題は校長と教職員とのあいだの対立としてあったが、教育委員会が直接職務命令を出すことで、校長が矢面に立たされることが緩和されたという安堵感をもつ一方、教職員から「思想・良心の自由」を剥奪してまで強制することに強い違和感をもっていることを伺わせる。
番組はさらに、「日の丸」「君が代」が侵略戦争で戦意高揚に果たした役割にも踏み込み、戦後の教職員運動が「教え子を戦争に送った」反省を大きな出発点にしていたことを取り上げる。
「そもそもなぜ、戦後、教育現場で「日の丸」「君が代」論争が続いてきたのか。
戦時中、子供たちを戦場へと送り出した軍国教育を反省する機運が教師たちの間で高まった。
「君が代」と「日の丸」は、いったん学校教育の場から消えたのだが、1950年代に学習指導要領で復活する。
多くの教員が、戦争の記憶を刻む「君が代」・「日の丸」が、再び教育現場に持ち込まれることに抵抗感を示してきた。」
1999年国旗・国歌法を制定させた当時の官房長官・野中広務氏も登場し、「強制は趣旨ではない」と発言。
「これを強制したり、強要する、そういう性質のものでは全くない」
今年1月17日に出された「君が代」強制違憲訴訟最高裁判決についても、職務命令が合憲とした部分についてはさらりと流し、むしろ付帯した補足意見を紹介している。
「憲法学などの学説や法律家団体においては、君が代を起立して斉唱することを職務命令により強制することは、憲法19条等に違反するという意見が大多数を占めていると思われる。確かに最高裁は異なる判断を示したが こうした議論状況は一朝には変化しないであろう」(裁判官の補足意見)
橋下市長は「君が代」規律斉唱を強いることについて、一貫して「組織のマネジメント」「公務員としての規律」を強調するが、口元チェックを呼びかけた「維新の会」の奥野康俊府会議員は以下のように語っている。
「日本に忠誠を尽くす、その忠誠は何か言えば、自然を守るだとか自分たちの親、兄弟、先輩たちが築いたこの日本をしっかりと守っていこうという中で所属の意識を高めるという意味では、私はその原点が国旗、国歌に対する意思表示の仕方、礼節に通ずるものだと思っている」
橋下氏はまくし立てる
「起立斉唱命令なんです。教育委員会の決定なんです。起立斉唱命令です。この国語のなかで、斉唱の命令は入っていませんか。職務命令、起立斉唱が出ているじゃないですか。・・・マネジメントですよ。条例つくって歌っていない人を放置していたら、法の意味がないじゃないですか。起立斉唱という条例を作った。歌っていない人をきちんと報告した。・・・こんな完璧なマネジメントどこにあるんですか。・・・あなたみたいな勉強不足の記者がいくら質問したって、こんな論理は崩せませんよ。僕らはね、緻密に緻密に誰からもどの法学者に言われても破たんしないような、論理を組み立ててきたんだから。そんな勉強不足の人が何を言ったって無理なの…」
橋下氏はここで法学者に言及するが、番組は「それに対し、斉唱命令については憲法が保障する「思想・良心の自由」と切り離せないとする法律家はなお多い」として二人の識者の発言を流す。
○明治大学法科大学院高橋和之教授
「職務命令として命ずるところまではいいんだけれど、どうしてもそれは納得できない、という人の考え方も尊重しなくてはいけない。我々はこういう考え方でやりたいから、我々の考えを尊重してください、そのために起立してください、というところまでは求めてもいいんではないか、でもそれ以上に歌いなさいということまでは言ってはいけない。それは、そういうことをやるべきではない、と考えている人の内心にあまりにも踏み込み過ぎている」
○大阪弁護士会山西義明副会長
「口元までチェックすることが教育委員会も許容していて何ら問題もないんだ、というふうに言っているけれど、あのマネジメントは素晴らしいと賞賛すること自体が憲法19条違反の事態を招く危険性が非常に大きいと思う」
(ハンマー)