をとなの映画桟敷席         ~ほぼ毎日が映画館

映画取材から編集裏話まで、るかのここだけの話を忘れた頃にアップします

「オードリー」、そしてエミー賞「SHOGUN」

2024年09月21日 | ドラマ
NHK朝ドラ「オードリー」、そしてエミー賞SHOGUN

今日、NHKの朝ドラ「オードリー」の再放送が終了した。
リアルタイムでも観ていたが、年月が経った今観ても面白かった。
半年間、楽しませてもらったが、テーマは「時代劇」だろう。
時代劇と言えば京都太秦、そこで時代劇に携わる監督・役者・スタッフの群像劇がメインで、そこに京都の老舗旅館の家族の話が挿入される。

華やかなりし時代劇映画の撮影現場の様子や、映画が衰退してTVドラマに場所を移し、さらに時代劇がTVでも衰退して子供向けヒーロードラマで糊口をしのぐなど、時代劇の栄枯盛衰が描かれていた。
その中で、役者の浮き沈みや、撮影や殺陣師や照明、衣装などのスタッフにも焦点を当てており、大部屋やエキストラの募集法なども出てくるので、その世界を垣間見ることができるドラマだった。

役者陣も、まだ売り出し中の堺雅人や佐々木蔵之介が脇役で出ていて、堺の目線の配り方や、佐々木の軽妙さに、このころからかわらんな~と思ったり。でも、主人公の相手役は、なんと長嶋一茂だったり。
その他にも、切られ役一筋の福本清三さんが切られ役で出演していたり、殺陣師役で拓ぼんそっくりの子供が演じていたり。
老舗旅館の話の方でも、大竹しのぶと結婚するモテる中年作家の役でジュリーが後半いっとき出てきたり。

ストーリーに出てくるあの人のモデルは、実際のあの俳優か?とか、この作品はあれだろうか?この映画会社のエピソードは?などと想像するのも面白味があった。

そして、先日、アメリカでエミー賞の授賞式があり、時代劇「SHOGUN」が多数の賞を獲得したのは記憶に新しい。
真田広之が、正統派の時代劇を目指して製作にもかかわったというドラマである。
彼が繰り返した「オーセンティック」が、それを象徴する言葉。
そして、「オードリー」で観た時代劇の歴史が、ここに重なったように思えた。とにかく快挙である。
真田が授賞式で感謝を述べたように、彼1人がということではなく、時代劇制作に面々と関わってきた人々の積み重ねに贈られた賞賛なのだと思う。

ちなみに、「オードリー」の脚本家が「光る君へ」と同じと知って、なるほど、うまいと得心がいった。

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オッペンハイマー(映画)

2024年05月02日 | 映画
映画「オッペンハイマー」

好きな監督を聞かれれば、真っ先に挙げるうちの一人ががクリストファー・ノーラン監督だが、アカデミー賞(2023年)を撮った時点で日本は未公開だったこと、日本の過去の歴史に関わる内容であることもあり、めちゃ混みや席がとれないことが予想されたため、日本公開からしばらくたってから観に行くことにした。

いくつかのストーリーが走っており、どこの立場から観るかで何度も見直すことができる。
人類の存亡にかかわる話、発明と戦争、男女関係や男の嫉妬といやがらせなどの個人的な観点まで。
そして、主人公のオッペンハイマーに対し、出番は少ないが重要な役として、アインシュタイン博士が出てくる。
なぜアインシュタインは偉人として誰もが知っているのか、浮かび上がってくるような演出だった。

もう一人、主人公の人生を狂わそうとする議員(ロバート・ダウニーJr)が、出てくるが、まさに社内のパワハラと同じ。
自分が悪口あるいは無視されたと誤認して思い込んで、主人公を貶めていくのだ。
のちに、公聴会で科学者たちの抗弁によって疑いがはらされるのだが、その年月は戻ってこない。
疑いが晴れたきっかけの一つとして、「若手のケネディという議員が反対票を投じた」という一言が。その時代感が分かるし、いまだに欧米の人々にとって自由や希望といった名前なのだなと分かる。映画の中では一瞬の短い言葉だが。
最後に、監督は時間をさかのぼって起点となる場面に戻る。主人公らはそんな小さいことではなく、大きなことについて話していたのだということが分かる。

史実としては、目的がなくなったのに、ひどすぎると痛切に感じた。
あっさりと描きすぎだという意見もあったようだが、黒焦げの人やただれた人を主人公の幻影として見せ、ただれていく女性を監督の娘さんが演じているというから、観た人にわが事に感じてほしい、こういう目に家族を遭わせてはいけないという思いからではと思いたい。

そのほか、
キリアン・マーフィ―も好きな俳優の一人だが、実在する人物に近づけようとしたのか加齢か、ずいぶん老け込んだ感じがした。
ただ、彼の持つ危うさや人間としての弱さを見せる演技は、合っていたと思う。

ノーラン監督については、
時制が行き来するのはいつも通り。
女性に対する忸怩感も共通している。今回の愛人役が裸のシーンが多いのだが、特に聴聞室での奥さんの前での演技・演出は、女性というより蛇のように見えた。奥さんも不倫からだから、主人公の女性関係のだらしなさも分かるが、後味の悪いシーンだ。
テーマとしていつも物理学が根底にあるが、今回はそのものの話だった。同僚が「戦争のために物理学を使いたくない」と、袂を分かつシーンなどもあり、今回は理念の問題まで踏み込んでいる。
監督並みに逆行すれば、「テネット」「ダークナイトライジング」などにもその脅威が描かれていたと思う。




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YESTERDAY (映画)

2024年04月27日 | 映画
YESTERDAY (映画)
 売れないインド系イギリス人のシンガーが、バイク事故に遭い、退院後に級友たちの前で歌ったビートルズのイエスタデイから、なぜかビートルズのいない世界になっていたことに気付き、彼らのヒット曲をうたうことで大スターになってしまうという荒唐無稽なストーリーの映画。
 さすが、ダニーボイル監督だ!めちゃくちゃ面白いし、ビートルズって、こんなに誰もが知っているヒット曲があるんだなーと改めて驚いたり、え、エド・シーランがご本人で出てくるなんて、ホント盛りだくさんの面白さ満載。
 そして、さらにビックリなゲストが最後に。
 でもメインは恋愛ドラマもしっかり。相変わらず田舎の兄ちゃんをきちんと取り入れて、ボイル節。
 なぜか、ビートルズを知っている人2人は不思議でした。快作!
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ボーは恐れている

2024年02月23日 | 映画
映画「ボーは恐れている」

ホアキン・フェニックス主演のこの作品。
他には真似できない、オリジナリティーのある作品だった。

冒頭は、ボーという冴えない中年男性の目から見た、部屋の外の怖い状況や群衆を映し出す。これは本当か、彼の頭の中だけの想像か。
そんな中、母親の誕生日祝いに出かけなくてはならないのに、出かけるときにアクシデントがあり、パニックとなってしまう。
危ない人々が部屋になだれ込みめちゃくちゃに。逃げ出して飛び出し、車に衝突してしまい…。
主人公は、情緒不安で薬を飲んでいるが、いつもと違う薬を処方されている。
水とともに飲むこととあるのに水が出ないという状況からパニックを起こし、大きな状況になっていく。

目覚めると、親切な家族の家。ここに戦争でPTSDを負った元兵士が間借りしていることから、また大騒動に。

ここを出て、主人公は森へ逃れる。そこには芝居小屋と野外演劇を見に来た観客たちが集っていておだやかな雰囲気。
主人公はまたここで妄想する。
このシーンが、急にアニメになって、これが素晴らしい。絵本で「木を植える人」があるが、そのアニメーションを観たことがあり、それに似た画法でつづられていく。ここだけでも見る価値あり。

また騒動が起きて、ラストへ。
とってもきれいな絵本のような夜空だなと思って見ていると…。

最後のシーン、無人飛行機が裏返っているように見えた。
そして、昔の映画で「ポゼッション」という映画を思い出した。イザベル・アジャーニとサム・ニールの夫婦が異星人の出現で壊れていく話で、蛸のような異星人とのラブシーンや、サム・ニールの一人2役、ラストの子供が空の風呂の中で「怖いよ怖いよ」と言って足をバタつかせているなど、初めて観たときは何じゃこりゃと思ったのだが、ずいぶん経ってから、戦争の脅威を描いていると知って、なるほどと思った次第だ。
なんだか、「ポゼッション」の子供と主人公のボーが重なって見えた。
エンドロールがそのシーンのまま流れるので、とても余韻があり、立ち上がって帰る人があまりいなかったのも印象的だ。



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光る君へ(ドラマ)

2024年02月12日 | ドラマ
ドラマ「光る君へ

2024年の大河ドラマは紫式部が主人公の「光る君へ」。
これがすこぶる面白い。

子供のころからの主人公と、のちの権力者・道長の出会いから描く筋が一本あって、当時の官職や政治状況、政略結婚や宮中の権謀術策、貧乏貴族や庶民の暮らしが描かれていて、なんだか平安時代、穏やかじゃないぞという感じ。

それから先週は「蜻蛉日記」の道綱の母が出てきたり、今週は「枕草子」の清少納言が出てきたぞ。
また、盗賊(多分、袴垂;はかまだれ)かと思われる男なども出てきて、「今昔物語集」や「宇治拾遺物語」の世界に広がってきて、あら懐かしや。
特に今週は、漢詩の会のシーンがあって、各人が作った漢詩の文字が画面に出たり(あそこでレ点だからこう読むとか)、訳が語られるのでとても面白かった。
恋する人に贈る和歌のシーンも、草書がさらさらと画面に出るので、あー練習帳にさんざん書いたな、とか、あれはあの字だよなとか思いながら見ていた。

衣装も美しい。五節の舞のシーン、真上から撮影したシーンがとくに美しかった。

役者については、女性陣も良いが、ことに男性陣が良いように思う。
父兼家役の段田氏のしらっとした策士ぶりしかり、長兄の新も大きく構えた感じの人物が出ているし、次兄役の玉置玲央は十八番の屈折した役柄を存分に発揮している(同局では「引きこもり先生」で屈折した若者役を印象的に演じたが、最近の「大奥」では一心に感染症に取り組む医学者の役を演じ、内野聖陽的な演技巧者になるのではと思わせてくれた)。芸人、実は盗賊の毎熊も、ぶっきらぼうさが「まんぷく」時代と変わらず、適役。関白(当時左大臣)の小さな声でしゃべる演技もなかなか。
そして、今週の漢詩の会から去る際の、道長=柄本兄の好きな人の前でする顔、リアルすぎだ。

などと思いつつ、楽しんでいる国文女子も多いのではないでしょうか?!







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