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TAJOMARU (映画)

2009年09月19日 | 映画
                          ©2009「TAJOMARU」製作委員会           
映画「TAJOMARU

まさにその名の通り、名実ともに旬の若手俳優・小栗旬が、表題の多襄丸を演じる歴史エンターテインメント作品。
この名前を聞いてピンと来た方もいるだろうが、芥川龍之介著「藪の中」、そしてそれを原作にした映画「羅生門」に出てくる大盗賊・多襄丸のことなのだ。
だからといって、これらの焼き直し作品ではまったくないから面白い。

実は、この小栗旬の役どころは最初から大盗賊・多襄丸だったわけではない。むしろ、幕府の中枢、管領家の次男として優雅な暮らしを送る立場。
しかし、桜丸という貧民の子・桜丸を助け侍者にしたことから歯車が狂っていく…。

小栗の演じる、実直どころか愚直なまでのまっすぐさが、不条理に耐えに耐えて最後に爆発させるときの殺陣に迫力を与えている。この対決場面では、ただただ息を呑むばかり。

小栗ばかりではない。共演しているベテラン俳優たちもすこぶるいい演技を披露している。
まず、大盗賊多襄丸に松方弘樹。小栗とは大河ドラマ「天地人」でも徳川家康(松方)と石田三成(小栗)として火花を散らしており、松方が家康を憎憎しげに演じるほど、小栗の三成が静かな演技ながら知将の輪郭が浮き上がってくるのだから、演技というものは1人ではできないものだなとつくづく思う。この「多襄丸」の中では新旧多襄丸として再び争うこととなるが、こちらの対決はいかに。

そして、スゴイ演技といえば8代将軍足利義政を演じる萩原健一であろう。ありあまる権力をものにしながらも、人を自分の思い通りに動かさねばいられない、イヤーな人間の嫌らしさが滲み出ている。

松方も萩原も最近では私生活のゴタゴタの話題ばかりで演技を披露する場がとんと減ったが、この大御所たちを見て、観客のためにも後進のためにも、1本でも多くの作品で「こういう演技もあるんだ」というのを見せて欲しいとつくづく感じた。昔のようにシークレットではない分、私生活に興味があるという風潮は過去のものになってきたと思う。それより、生きてきた道が滲み出るスクリーンで、主役を支えるここぞという役を演じてもらい、ニヤッと観客をさせるような彼らの芝居を見せて欲しいと思うのである。
「TAJOMARU 」
監督:中野裕行、出演:小栗旬、田中圭、松方弘樹、萩原健一
現在丸の内ルーブル他 全国ロードショー! 


<story>原作は芥川龍之介の「藪の中」。本作は原作に登場する大盗賊・多襄丸を主役に据えた完全オリジナルストーリー。裏切られても、傷ついても自分の心に嘘はつかない。それが守るべきものならば、命を懸けてでも守り抜く。信じていいのは誰なのか?最後まで本心が見えない信頼と裏切りのどんでん返し!見えない真実に翻弄される多襄丸がたどり着く場所とは…?

URL http://wwws.warnerbros.co.jp/tajomaru/?frompromo=movies_comingsoon_tajomaru


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