空飛ぶ自由人・2

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駒場再訪

2024年06月23日 23時00分00秒 | 身辺雑記

3日ほど前、ここへ。

井の頭線で渋谷から2つ目の駒場東大前駅

2022年11月にも来ていますが、
再訪したのは、
ここ↓に来るため。

↓1年半前と比べると、


店の前の木が大きくなっています。

11時半の開店前に4名行列。

目的は、これを食べるため。

生姜焼定食

早乙女太一が来た店、ということで、
1年半前、娘の聖地巡礼に付き合いました。

このように、テレビ番組で誘われて来た店の中で、
もう一度、食べたい、と思わせた店の一つ。

大判の豚ロース肉を豪快に焼き、


添えたスパゲティも、
焼き汁がからんだキャベツも絶品。

ピーナッツの箸置き。

これを食べる人はいるのでしょうか。

このお店のある商店街は、
駒場東大前商店会といい、
愛称は「駒下」

狭い道で自動車が最徐行で通ります。

この劇場は、「こまばアゴラ劇場」という小劇場。

昔の写真。


昔、友人の芝居を観に、よく通いました。

どうやら、5月末で閉館になったようです。

芸術総監督の平田オリザさんの挨拶文。

もともと、こまばアゴラ劇場は、
私の父平田穂生が銀行から多額の借金をして開業したものでした。
その後、私が23歳で支配人に就任し、
多くの方々のご支援もあり、
どうにかここまで経営を続けてきました。
しかしながら、現在も負債は多く残っており、
私の人生の残り時間を考えると、
健康上など不測の事態が起きた場合に、
債務不履行の状態に陥る懸念があります。
そこで、債務超過に至っていない今の段階で資産を処分することといたしました。

何だか寂しいですね。

商店街からこの階段を上り、

この踏切を越えたところに、


通称「矢内原門」(やないはらもん)があります。


いや、「ありました」ですね。

東大駒場キャンパスは、
↓の正門の他に、

↓のように、小さな通用口があります。

矢内原門もその一つで、
駒場商店会方面へ行くのに便利な位置に開けられた
幅1メートルほどの通用口。
学内にあった学生寮の学生たちがよく出入りしていました。

矢内原忠雄、後の第16代東大総長が
東京大学教養学部長の時代に、
学生の試験ボイコットで、
正門がピケにより通行できなくなった折、
学部長が自ら生垣を押し分けて通り、
以後公認の通路となったと伝えられています。

また、以前よりの抜け道であったが、
矢内原学部長がピケ対策として
「特別に門以外の場所を通行してよい」
旨の告知を行ったことから学生が公然と通行するに至ったものだとも言われています。

東京大学教養学部の前身である旧制第一高等学校では
正規の門以外は絶対に通らないという
「正門主義」があったこと、
矢内原がその後も学生のストライキ等には厳しい態度を貫き、
ストライキを指導した学生を退学とする
「矢内原三原則」を打ち出した人物であることなども
このエピソードの背景となっているようです。

矢内原門は、
私が学生の頃は、
存在していましたが、
後の駒場キャンパスの整備事業で、
柵の位置が大きく移動したため、消滅し、
石碑が残るのみとなりました。

現在、跡地付近は「矢内原公園」と呼ばれる小公園となっています。

このあたりは、緑が豊かで、
都内にいることを忘れさせてくれます。

これが学内のメインストリート。


緑が一杯です。

立て看板は政治的な色はなし。

ここは、当時、学生に占拠された教務課のあったところ。


私は右の高い所に立って、
占拠学生とやりあいました。

東大駒場キャンパスについては、
1年半前にブログで触れていますので、

今回はこれくらいにします。

興味のある方は、2022年11月13日のブログをご覧ください。

その後、渋谷に出て、映画を一本観ましたが、
途中で見た光景。


何だと思います?
解体中のBunkamuraです。


これも寂しい景色ですね。

 


短編集『嘘つき姫』

2024年06月21日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

不思議な世界観を持つ短編集。

筆者の坂崎かおるさん(女性)は、
WEB小説や公募小説賞の界隈ではすでに知る人ぞ知る存在だそうだ。
2020年、「大学以来久しぶりに小説を書いた」という
短編「リモート」で第1回かぐやSFコンテスト審査員特別賞を受賞し、
そこからの4年間で10を超える文学賞での受賞・入賞を果たした。
アンソロジーに収録されたことはあるが、
本書は、初の単著となる、「待望」の短編集だという。

「ニューヨークの魔女」

処刑用電気椅子が導入された19世紀末のアメリカで、
死ねない魔女が電気椅子ショーに臨む。

「ファーサイド」

テレビ番組で「世界の終わりまであと7日になりました」
という終末カレンダーの決まり文句が流れる、
核戦争間際の世界(キューバ危機間近)の1962年。
Dという人間のような奴隷生物、
中でも「デニー」と呼ばれる存在との関わりを描く。
日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト・日本SF作家クラブ賞受賞

「リトル・アーカイブス」

戦地で、二足歩行の戦闘ロボットをかばって
銃弾を受けて死んだ一等兵を巡り
様々な証言や心情が語られていく。
人間が無機物(機械)に抱く感情を探る。

「リモート」

全身不随の少年・サトルの代わりに、
リモートで学校に通うロボット「サトル」。
サトルの父親は詐欺罪で逮捕される。
実はサトルは既に死んでいたのに、
障害児福祉手当を違法に受給していからだ。
倉庫に置かれていたロボットのサトルは、
級友に電源を切るように頼む。
「肉体と精神、どちらが優れているか」という疑問を残して。

第1回かぐやSFコンテストで審査員特別賞を受賞

「私のつまと、私のはは」

子供が欲しかった女性の同性カップル、理子と知由里(ちゆり)が
子育て体験キットを育てることになる。
本体は大きな大福がいくつかくっついたような格好なのだが、
附属ARメガネをかけると、幼児に見える。
ミルクを飲み、排尿便カートリッジも内蔵しており、
糞便の処理も出来る。
その扱いを巡って理子と知由里の間でずれが生ずる。
理子は「これは機械だ」としか想えないが、
知由里は、母親のようになる。
そして、二人は別れるが・・・

「あーちゃんはかあいそうでかあいい」

おさななじみのあーちゃんと
歯科医院で再会し、担当になる。
抜けた歯をめぐる不思議な話。

「電信柱より」

電信柱を切る仕事に従事しているリサが
一本の電信柱に恋をする。
上からの命令で切らなければならないのだが、切れない。
そこで、電信柱の脇に住む住人に、
敷地を広げて電信柱を個人のものにしてくれないかと頼む。
それは無理だと断ったが、
住人は、別な方法で電信柱が生き延びる方法を取る。
その結果、リサは・・・

第3回百合文芸小説コンテスト・SFマガジン賞の受賞作

「嘘つき姫」

ドイツに侵略された頃のフランスが舞台。
ドイツ軍から逃げる途中、マリーとエマは出会う。
やがてマリーの母は行方不明になり、
マリーはある事情でドイツ軍に保護される。
それから時を経た東ドイツ。
西側から来た報道陣のうちの一人の女性が
マリーに接触してきて、手紙を見せる・・・
「嘘」がつなぐ真実が明らかになる。
第4回百合文芸小説コンテスト大賞受賞作

「日出子の爪」

学校のベランダで育てていた鉢の一つに
サキちゃんが爪を埋め、
そこから指のようなものが生えて来る。
日出子とサキの秘密にトオルくんが参加するようになり、
クラス全員で爪を埋めるが・・・

想像力が物語世界を生むという点で、
作者は稀有な才能の持ち主だと分かる。
冷戦下のアメリカ、第2次大戦中のフランス、
西ソマリア、19世紀のニャーヨークなど
描く世界も多彩。
まだ粗削りだが、
間違いなく、将来、芥川賞の候補になるだろう。


映画『PS-Ⅱ 大いなる船出』

2024年06月20日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

先月公開された「PS-Ⅰ 黄金の河」の続編
インドでは、前編は2022年、
後編は2023年に公開されたが、
日本では、5月6月と、1か月の間隔で、続けて公開

インドの伝説的な歴史小説
「ポンニ河の息子」(Ponniyin Selvan つまり、「PS」
を前後編で映画化。

10世紀、インド南部、タミル地方に実在した
チョーラ王朝の宮廷を舞台にした
愛憎と陰謀、国の存亡を懸けた戦いの物語。

前編のラストでは、弟のアルンモリ王子が海の藻屑と消え、
その訃報は、国全土に広まり、王国は悲しみに包まれた。
しかし、アルンモリは、何度も彼の窮地を救ってきた
謎の老婆に助けられ一命をとりとめていた。
そして、アルンモリと再会した長兄・アーディタと長女・クンダヴァイは、
密使の騎士デーヴァンにより、
王朝転覆の黒幕と計画の全貌を知る。


老王のもとに刺客が送られると共に、
アーディタは、計画を裏で操るナンディニの誘いに乗って、
その牙城に赴き、罠に自らかかり、
アルンモリにも刺客が放たれる。
王国に迫る最大の危機を三人の兄弟はどうやって乗り越えるか・・・

前編と違い、戦争シーンは最後だけで、
主に、愛憎渦巻く登場人物の数奇な運命を描く、
より重厚な人間ドラマが描かれる。
謎の老婆の正体、老王との過去だけでなく、
ナンディニの出生の秘密も明らかになる。
アーディタの苦悩はシェイクスピアのようであるし、
最後のくだりは、ギリシャ悲劇のよう。


登場人物の想いが伝わり、
胸が熱くなる人間ドラマだ。
俳優たちも難しい役どころを演じ切り、
インド映画陣の層の厚さに驚かされる。
しかし、相変わらず、顔の区別がつかないが。
また、映画における音楽の重要性も改めて知らしめてくれる。
(音楽はオスカー受賞者A・R・ラフマーン

監督・共同脚本・共同製作はインド映画の巨匠マニラトナム

5段階評価の「4」

新宿ピカデリー他で上映中。

私が観た市川妙典の映画館では、がら空きだった。
娯楽に徹した、こんなに面白い映画なのに。
しかし、10世紀といえば、
日本での平安時代に当たる。
さすがに関心がないか。

 


トニー賞授賞式

2024年06月19日 23時00分00秒 | 演劇

6月16日夜(日本時間6月17日朝)、
第77回トニー賞授賞式が行われました。
わけあって、3日遅れの報告。

今回の会場は、デイヴィッド・H・コーク劇場で、
リンカーン・センターにある旧ニューヨーク州立劇場。


昨年のマンハッタンの外れから、中心に戻って来ました。
元々ニューヨーク・シティ・バレエの本拠地で、
2008年、石油・ガスの大富豪デイヴィッド・コークが
今後10年の改修のため、
1億ドル以上の資金提供と運営および維持費の寄付を行い、
この施設はデイヴィッド・H ・コーク劇場へと改称されたもの。
座席数は2586席

司会は3年目となる、アリアナ・デボーズ


もうすっかりトニー賞の顔ですね。

そのオープニング・ショー

対象となったのは、
昨年4月28日から今年4月25日までの間に
ニューヨークのブロードウェイ大劇場でで開幕した作品で、
今期は、36作品が対象
少ないようですが、
新作ミュージカルは16作品あり、
今世紀に入って最多。

昨年同様、技術部門はプレショウで発表され、
本番では、
主な賞の発表が行われました。

今期はヒラリー・クリトン(タフス)


アンジェリーナ・ジョリー(アウトサイダー)、

アリシア・キーズ(ヘルズ・キッチン)などが
プロデューサーとして作品を生み出しました。

受賞結果は、次のとおり。

○ミュージカル部門
作品賞  アウトサイダー
リバイバル作品賞 メリリー・ウィー・ロール・アロング
主演男優賞 ジョナサン・グロフ(メリリー・ウィー・ロール・アロング)
主演女優賞 マリア・ジョイ・ムーン(ヘルズ・キッチン)
助演男優賞 ダニエル・ラドクリフ(メリリー・ウィー・ロール・アロング)
助演女優賞 キーシャ・ルイス(ヘルズ・キッチン)
脚本賞   シャイナ・タウブ(サフス)
演出賞   ダンヤ・テイモア(アウトサイダー)
装置デザイン賞 トム・スカット(キャバレー)
衣裳デザイン賞 リンダ・チョー(グレート・ギャツビー)
照明デザイン賞 ブライアン・マックデヴィット、ハナ・S・キム(アウトサイダー)
音響デザイン賞 コディ・スペンサー(アウトサイダー)

「アウトサイダー」4部門、
「メリリー・ウィー・ロール・アロング」3部門(共通部門を加えるト、4部門)、
他は1部門ずつと、ばらけた結果でした。

ダニエル・ラドクリフ君は、
これで「ハリー・ポッター」から脱出しましたね。

○演劇部門
作品賞      ステレオフォニック
リバイバル作品賞 アプロプリエイト
主演男優賞 ジェレミー・ストロング(民衆の敵)
主演女優賞 サラ・ポールソン(アプロプリエイト)
助演男優賞 ウィル・ブリル(ステレオフォニック)
助演女優賞 カラ・ヤング(パーリー・ヴィクトリアス)
演出賞   ダニエル・オーキン(ステレオフォニック)
装置デザイン賞 デヴィッド・ジン(ステレオフォニック)
衣裳デザイン賞 ディディ・アイーテ(ジャジャズ・アフリカン・ヘアー・ブレイディング)
照明デザイン賞 ジェーン・コックス(アプロプリエイト)
音響デザイン賞 ライアン・ルメリー(ステレオフォニック)

○共通部門
オリジナル楽曲賞 シェイナ・タウブ(サフス)
振付賞      ジャスティン・ペック(イリノイ)
オーケストラ編曲賞 ジョナサン・チューニック(メリリー・ウィー・ロール・アロング)

と、「ステレオフォニック」が5部門を獲得。

ショーの華であるミュージカルのパフォーマンスは、

「アウトサイダー」、

「ヘルズ・キッチン」、

「ステレオフォニック」、

「メリリー・ウィー・ロール・アロング」、

「キャバレー」

などが披露されました。

かつては、トニー賞の授賞式を見て、
夏に行くニューヨークでの観劇プランを立てたものですが、
もう行くこともないし、
知らない作品、知らない俳優が多く、
ちょっと乗れない授賞式でした。

 


小説『人狩人』

2024年06月17日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

「ひとかりうど」と読む。
長崎尚志による警察小説。

郊外の森林公園で散歩中の犬が
尖った凶器(後でボウガンと判明)で殺された死体を掘り起こす。
その捜査に従事していた神奈川県警捜査第一課の桃井小百合は、
県警本部に呼び出され、
迷宮入り事件を専門に捜査する特命中隊の
赤堂栄一郎警部補と組むように指示される。
赤堂は“神の手”と呼ばれ、検挙率は群を抜いていたが、
金まわりが良く、
闇の勢力とつながりのある汚職刑事の疑いがかけられていた。
桃井はそのお目付け役として配置されたのだ。

過去の類似事件を調べる中、
赤堂はその才能を発揮し、
過去の事件の推理から、
複数の遺体が埋められている場所を発見する。
遺体の身元を洗うと、
凶悪事件の犯人ばかりで、
どうやら、闇の仕置人集団が存在するようなのだ。

この本筋の話に並行して、
かつて妹を強姦惨殺された男・黒川の
出所した犯人たちへの復讐殺人
ホテル・キンブルでの潜伏生活が描かれる。
ホテルの名前は、
アメリカの連続ドラマ「逃亡者」の主人公、
リチャード・キンブルから取られ、
逃亡者をかくまう目的で運営されていた。

更に、過去にさかのぼり、
突然母を失った少年が、
反社勢力と互角に闘う弁護士の祖父に養われ、
母が殺された真相をつきとめようとする姿が描かれる。
この少年が後の誰であるかは、
小説の3分の1あたりで明らかになる。

話は、GHQ支配の置き土産や
神奈川県で起きていた神隠し事件へと
謎はどんどん広がり、
3つのストーリーが一本に織り合わさった時・・・

というわけで、闇の深さ、広がりは大きいが、
途中で、戦後から続く
狂気の人狩り集団の結社に辿り着くという、
常識ライン点を通過し、
現実味を損なう結果となった。

「戦後からいままで、
国家にとっての危険分子や逃亡中の犯罪者、
娼婦などをひそかに誘拐して、
ハンティングでもするように
人を処刑している秘密結社があります。
彼らを一網打尽にしたいんですが」
と、黒川はおとりになる。
そして、米軍払い下げ地の中で
そのハンティングが行われる。
だったら、死体の隠し場所も払い下げ地の中にしたらよかっただろうに。

まして、最後にあんな人物が突然登場とは。

失踪者捜索の間に、
別々な人物が同一人物だと判明したり、
その関係者の裏切りなど、
面白いところもあったのだが・・・

ホテル・キンブルの潜伏生活での
ホテルの対応も興味深い。
あんなホテルがあるとは知らなかった。(あるはずないか)             
少年が警官を志した時、
祖父がこう助言する。

「ふまじめで隙があって悪に寛容で、
人を舐めてる感じだが、
じつは仕事ができるみたいなキャラクター」

赤堂はそういう設定だ。