空飛ぶ自由人・2

旅・映画・本 その他、人生を楽しくするもの、沢山

映画『6888郵便大隊』

2025年01月09日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

第二次大戦下、
兵士と家族の間の手紙を届けるのに尽力した陸軍婦人部隊の
実話に基づくヒューマン・ドラマ。
6888は、「シックス・トリプル・エイト」と読む。

合衆国東部の町で、母と伯母と暮らす学生のリナ。
黒人差別意識のない白人の恋人エイブラムとの仲も良好だった。
しかし、軍人として戦地に赴いたエイブラムは還らぬ人になってしまう。
悲しみに暮れるリナは決意する。
軍に入り、ヒトラーと戦う、と。

リナが配属されたのは“6888大隊”。
黒人や有色人種から成る婦人部隊だ。
やがて隊にある任務が下る。
それは、戦場の兵士と家族の間で交わされる手紙が
行方不明になっているのを解消する任務だった。

それは、一人の婦人が大統領夫人に直訴したことによる。
婦人は二人の息子を戦場に送ったが、
3年間音信不通。
それは、全国で起きており、
家族から戦場の息子たちに送った手紙が届かず、
返事ももらえず、
多くの国民は不安と不満を抱えていた。

調べてみると、軍隊には、届けられていない郵便物が
袋に詰められたまま、滞納されていた。
宛先不明だったり、
兵士が任地を移動して場所の特定が出来なかったり、
理由は様々だが、
軍上層部は、戦略物資を届けることを先にし、
手紙は優先順位が低いとみなし、
放置していたのだ。

6888大隊の女性たちは、
これらの滞貨の処理に当たる。
手紙などの郵便物を仕分け、届けるルートに乗せる。
言ってみれば、戦局に何の関係も影響も無いような雑用。
だが、本当にそうか?
戦地の兵士たちは家族や恋人からの手紙を心待ちにしている。
故郷の家族や恋人たちも、兵士からの手紙で無事を知る事が出来る。
兵士たちの士気や精神面を支える、これも重要な任務だ。

リナもエイブラムは手紙を出すと言っていたが、届かず、
待っている側の気持ちは痛いほど分かる。
だからこそ、届けたい。
細かな作業だが、重労働。
作業場は最悪の環境。
冬の時期、暖房も無い。

そして、軍内部で受ける差別偏見の数々。
女性、ましてや黒人、有色人種というだけで差別され、
功績も認められない。
差別偏見に満ちた周囲の醜悪な白人男ども。
軍の何処にも居場所は無く、味方もいない。
あからさまな嫌がらせ。
悪どい噂。
現代ならば何もかもがハラスメント。
しかし、屈しない。
差別や偏見、嫌がらせを言い訳にしない。
それを体現したのが、隊長のチャリティー・アダムズ大尉。
リーダーシップに溢れ、常に毅然とし、
視察に来た大将にも堂々と立ち向かう。
アダムズを演ずるケリー・ワシントンが熱演。

やがて、エイブラムが死の間際まで持っていた
リナへの手紙が発見され、
リナはエイブラムの墓前で読む。
リナの溢れる涙は胸を打つ。

最初は進まなかった郵便作業だが、
部下たちからの意見、各々の前職や特技を活かし、作業は進み、
たった90日間で、
滞っていた1700万の郵便物が
待っている大切な人の元へ届けられ、
兵士たちの士気と希望を大きく高めた。
手紙を受け取る兵士たちの
喜ぶ姿が感動的。

このような部隊がいたことをほとんどの人が知らなかった。
彼女たちの功績が知られたのは、つい最近の事だという。
リナは、実在の人物
エンドクレジットで、
100歳となった現在のリナがインタビューに応じる。


その他の隊員たちも実名で登場する。
ラスト、行進する隊員たちの姿に、
隊員全員の名前がクレジットされる。

監督はタイラー・ペリー。(脚本も)
風変りな黒人コメディばかりを撮っていた人だが、
こういう正統派の感動作も撮れるとは、驚き。
冒頭の戦闘シーンも迫力がある。

原作はケビン・M・ハイメル
スーザン・サランドン
ルーズベルト大統領夫人として出演している。

Netflix で12月20日から配信。

 


映画『はたらく細胞』

2024年12月25日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

人間の体内には37兆個もの細胞が存在するという。
37兆。
すごい。
卵子と精子が結合して、
細胞分裂して、そんなに増えたとは。
一細胞1円に換算しても、37兆円。
すごい価値だ。
(その換算には、あまり意味がないが。) 
皮膚や組織を作る細胞以外に、
赤血球や白血球や血小板や神経細胞など
無数の細胞たちが、
人間の健康を守るため日夜はたらいている。

その細胞たちを擬人化したのが、この話。
もちろん、原作はコミックで、
「月刊少年シリウス」(講談社)に、
2015年から2021年まで連載された、
清水茜の漫画「はたらく細胞」と


スピンオフ漫画「はたらく細胞 BLACK」が原作。
アニメにもなった。
それを「翔んで埼玉」「テルマエ・ロマエ」の武内英樹監督が実写で映画化

高校生の漆崎日胡は、父の茂と2人暮らし。
健康的な日胡と不摂生な茂。

その現実生活の父娘の生活と
その体内で働く細胞たちを交互に描く。

特に、体中に酸素を運ぶ役割の赤血球の一人と、
侵入した細菌と闘う白血球の一人を中心に描かれる。

永野芽郁が赤血球役、
佐藤健が白血球役、


その他、T細胞やNK細胞や化膿レンサ球菌や肺炎球菌など
いろいろ登場するが、
メイクがきつくて、誰が誰やら分からない。


人間の漆崎(うるしざき)茂を阿部サダヲ
その娘・日胡(にこ)を芦田愛菜が演じ、


体内パートと現実パートが交互に描写される。

日胡が白血病になり、
それを治療するため、
体内と体外で奮闘する。
日胡は助かるが、
体内には、細胞たちの死体が死屍累々の様となる。

ピクサーの「インサイド・ヘッド」を想起するが、
脳内ホルモンの話よりも体内全体だからスケールアップ。
その表現はCGだが、
何やらテーマパークのよう。


アニメではなく、実写でやったことに
志を感ずる。
その設定に最初に乗れない観客は取り残されるだろう。
ある場面で、「ワルキューレの騎行」がかかるが、
こんな場面で自分の音楽が使われようとは、
ワーグナー先生も知らなかっただろう。

観終わると、
健康に気をつけなきゃな
という気持ちになるのは教育効果だ。
日頃、気にもしていない体内細胞、
見ることも話すことも交流することもない幾多の細胞たちが
頼まれもしないのに、
一生懸命健康維持のために働いてくれているのだ。
感謝の念を持つしかあるまい。
そして、自分という存在は
沢山の(37兆の)細胞の集合体なのだと改めて思わされる。
そう考えると、
人間の死とは、
その37兆の細胞たちが
まとめて死に至るということ。
荘厳な、生命の死。
脳に蓄積された記憶も知識も、
全て消え失せてしまう。
豊富な経験も失われ、
宇宙の中から消滅してしまう。
うわ、哲学的にもなる。

5段階評価の「3.5」

拡大上映中。

 


映画『お坊さまと鉄砲』

2024年12月17日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

珍しいブータンの映画
(ブータン・フランス・アメリカ・台湾合作)

2006年、第4代国王が退位して、
第5代国王に譲位される時、
国王は政務から離れて、立憲君主制に移行、
民主化のあかしとして、選挙が行われることになった。
しかし、国民は選挙制度などなじみがない。
山奥のウラ村でも、
予行演習として、模擬選挙が行われることに。
中央から促進のための選挙委員のツェリンがやって来て、
18歳以上の住民の登録から始める。
ツェリンの補佐役を命じられた女性は、
選挙のために家庭が壊れかけている。

選挙の知らせをラジオで知った瞑想修行中の高僧は、
若い僧・タシに命じて、銃を2丁調達するように指示する。
満月の夜の法要に使い、
「物事を正さねばならん」というのだ。

一方、アメリカからやって来た銃コレクターのロンは、
ペンジョーという村人が所有していた
骨董品として貴重な“幻の銃”を買い取ることにし、
翌日金を渡することを約束する。


しかし、タシから高僧が銃を所望していることを聞くと、
ペンジョーは銃を供物として差し出してしまう。
金を持って来て、
約束反故に驚いたロンは
タシの後を追い、二挺の銃と交換するために、
高い金を払ってインドから銃を密輸入する。
しかし、その動向を警察が監視していた。

そして、擬似選挙投票日、
高僧が執り行う法要に
一堂が会し、
高僧が銃を求めた意図が明らかになるが・・・

国王から突然送られた民主化に戸惑う村人個の姿が興味深い。
委員が「選挙制度によって国民が幸せになる」と言うと、
「今だって幸せなのに、どうしてそんなものが必要か」と問われる。
選挙で争いが生ずることを直感した老婆は、
「この制度はこの国には合わない」と言う。
なにしろ選挙人の登録に並んだ人は
自分の生年月日も知らないのだ。

ロンから高額の買い取り額を知らされると、
ペンジョーは、そんなに要らない、と言い、
半額に値下げされると、
「それなら、気が済む」という。
銃を買い取りたいと札束を見せられたタシは、
「そんなにあっても、使い道を知らない」と断る。
無欲というものの美しさを知らされる思いがし、
感動する。

タシは銃がとんなものかも知らず、
007の映画を観て、銃を決めるのが笑える。
コーラのことを“Black Water ”と呼んでいるのも面白い。

擬似投票の選挙結果は意外な偏りを見せる。
そのわけを聞かされた委員は驚愕する。
君主制に変わるものとして呈示された
民主主義が最良のものだとは言えないのだ。

なにより、ブータンの田舎の風景の美しさ
揺れる麦畑、満開の黄色い花々、
遠くに見える山際。
それだけで心がふるえる思いがする。


全員が集合した法要の場での終結部は、
深い感動を呼び起こす。
子供が投げ入れるものが皮肉だ。
銃を求めて来たアメリカ人には強烈な終わり方だし、
物質的な豊かさによって
失われたものの貴重さを教えられた気がする。
まさにブータンでしか出来ない映画

監督は、長編監督デビュー作「ブータン 山の教室」で
アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、
世界的に注目を集めたパオ・チョニン・ドルジ
脚本も手がけ、なかなかうまい展開だ。
演出は手堅く、深い思想に根ざすことが感じられる。
撮影もすぐれている。

若い僧侶タシを演ずるタンディン・ワンチュクは、
ロックバンドのリードボーカル
高僧を演ずるケルサン・チョジェは、
本物のラマ僧で、
ウラ村の上にある洞窟で瞑想に人生を捧げている。
ロンのガイド役ベンジを演ずるタンディン・ソナムは、
不動産業者、弁護士
銃コレクターのロンを演ずるハリー・アインホーンは、
ニューヨーク出身のアーティストで、
現在は台湾を拠点に華梵大学仏教芸術学院で教鞭を執る。
選挙委員のツェリンを演ずるペマ・ザンモ・シェルパは、
ブータンで最も人気のある歌手の一人。
タンディン・ソナム以外は、
皆、本作で俳優デビュー。 

                             
5段階評価の「 4.5」

ヒューマントラストシネマ有楽町他で上映中。

住民登録で、生年月日を知らない、という場面で、
落語「代書屋」を思い出した人もいるだろう。
履歴書の作成を依頼された代書屋が
客に「生年月日は」と問うと、
「そのようなものはないと思います」と答える。
年齢を問われると「26歳です」とのことで、
外見と合わない。
「親父が死ぬ時、お前の歳は26だぞ」と言われたというので、
父の亡くなったのは、何時だと訊くと、
「20年前です」と答える。
4代目桂米團治が、その経験から創作した
上方落語の名作。

なお、私はブータンが「幸せの国」と呼ばれることに違和感を感じていた。
その根拠は識字率
47.3%しかない。
国民に充分な教育が施されていない国が幸福なはずがあろうか。
それでも国民が「幸せだ」と感じているなら、仕方ない。
しかし、最近はその幸福の実感度が降下しているという。
外から情報が入ってきて、
自分たちの国が豊かでないことを知ってしまったからだという。
必ずしも豊かさが全てではないが、
産業を興し、仕事を国民に与えることは、国としての使命だろう。

日本でも、制度の変化を何度も経験している。
幕藩体制が崩壊して、
武士が全員失業した事態を、
当時の民衆はどのように受け止めたのだろうか。
議会の概念などなかった当時の日本人が、
憲法や法律や国会の開設をどう受け止めたのだろうか。
選挙制度の導入では、どんな戸惑いがあったのか。
戦後、アメリカ式民主主義が導入され、
婦人参政権の確立など、
本作がフォーカスしたような映画を誰か作らないか。

明治維新で近代化が進み、
欧米の仕組みを取り入れ、
古い日本が変革したことで、
同時に失われたものも沢山あったはず。


短編映画『シェパード』

2024年12月13日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

1957年、雪の降るクリスマス・イブ。
英国空軍のパイロット、フレディ・フックは、
恋人に会うために、急遽夜間の単独飛行を申請する。
ドイツ北部・英国空軍基地を離陸して、
オランダ上空から北海を越えて
ノリッジの基地へ向かうフライトは約66分。
80分相当の燃料を積載した飛行は
夜間飛行資格を取ったばかりのフレディでも
楽勝のはずだったのだが、
離陸してすぐにコンパスが機能しなくなり、
続いて電気系統に異常が現れる。
方向感覚を失い、
無線での呼び掛けに応答はなく
深い霧に包まれた中、
迷走した飛行機の燃料はあっという間に少なくなる。
「誰か僕を着陸させてくれ・・・」
恐怖と後悔がフレディを襲う。
燃料計が0を指した時、
機体はオーロラの中に入り込み
オーロラを抜けると、
フレディは右手前方に機影を発見する。
それは、プロペラ機のモスキート戦闘機。
ごく古い機種だ。
「誘導が必要なのか?」
戦闘機のパイロットはそう呼び掛けてくるが、
無線機が故障したフレディの声は届かない。
フレディは機を横付けし、
手信号で状況を説明し、
誘導してもらうと、
雲の切れ間に、
誘導灯の灯いた滑走路が現れ・・・

ディズニープラスの短編映画
原作は、「ジャッカルの日」のフレデリック・フォーサイス
リチャード・ジョンズ(プロデューサー) と
イアン・ソフトリー(脚本・監督) は、
30年前にジョン・トラボルタ
同名小説の選択売買権を手にしたことを知り
映画化の交渉を始めた。
フレディ役を演じるために権利を買い取ったトラボルタは
子供の頃から操縦士に憧れを持つ航空機マニア。
映画化に際し、トラボルタは、主役を譲り、
モスキート戦闘機からフレディを誘導する
ベテランパイロット役で出演。
制作総指揮もしている。


アルフォンソ・キュアロンがプロデュース。
                      
雲の上と星々の間を飛ぶ飛行機の姿が美しい。
イブの夜に起こった、
不思議な物語
その背景には、
大戦で散った、沢山の若者たちへのに鎮魂の思いが含まれている。

38分の短い映画だが、
心に残る作品。
2023年度アカデミー賞の
短編実写映画賞ショートリストに選出されたが、
ノミネートには至らなかった。

「シェパード」には、羊飼い、牧羊者、
(教会員を羊に見立てて) 牧師、(精神的) 指導者、
よき羊飼い=イエスキリストなどの意味がある。
犬種名で有名。


映画『ジャワーン』

2024年12月09日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

インドの国境付近の村。
川に流れ着いた傷だらけの男が救助され、
村人たちによって手厚く保護される。
その矢先、中国兵による侵攻が起こり、
村人たちは惨殺されてしまう。
祈祷師が神に助けを求めると、
それが通じたのか、
包帯だらけの瀕死の男は立ち上がり、
中国兵を一人残らず殲滅してしまう。
男は救世主と呼ばれ崇められたが、
自分の過去を全て忘れていた。
記憶はなくても、体が反応して闘ったのだ。

一挙に飛んで30年後
ムンバイの電車が武装集団によってハイジャックされてしまう。
チーフと呼ばれる首謀者の丸坊主の男が、
政府との交渉に入る。
矢面に立たされたのは農業大臣で、
男は年間に1万人以上の農民が借金苦で命を絶っているのを、
ある実業家から金を融通してもらって救え、という。
そして、その金を借金を抱えている農民に配り
負債を帳消しにしろというのだ。
武器商人のカリの一人娘が乗っており、
4000億ルピーを出させることに成功し、
警察は身代金が振り込まれた口座を凍結しようとしたが、
すでにその金は70万人の貧しい人々に配られていた。

解放された乗客たちに紛れて
姿を消した犯人たちが向かったのは、
郊外にある女性刑務所だった。

事件の交渉と捜査には女性警官のナルマダが抜擢され、
捜査を開始する。
ナルマダには娘スージーがいて、
その縁で、ナルマダは、
女性刑務所の所長アーザードに好感を持ち始める。
その男こそが一連のテロの首謀者であったが、
そんなことを知らぬまま、
ナルマダは娘のためを思って、
アーザードと結婚することになった。

と、話は再び30年前に戻り、
兵士隊長のヴィクラムは
武器商人のカリの納めた武器が正常に作動せず、
沢山の部下を死なせたことでカリに恨みを抱く。
しかし、ヴィクラムはカリに捕らわれ、
飛行機上からジャングルに突き落とされてしまう。
冒頭、瀕死のところを村人に助けられ、
中国人の侵入に対して、
自然に体が動いて撃退した男の過去があらわになる。

また、ヴィクラムの妻のアイシュワリヤは、
刺客を殺したことで逮捕されるが、
死刑の直前に妊娠していることが分かり、
死刑囚が妊娠していた場合、
その生んだ子供が5歳になるまで、
死刑を延長されるという規定に従い、
女性刑務所で子供を生み、
5年後に死刑台の露と消える。
息子は看守が養母となって育て、
長じて、刑務所改革を行った。
その人物こそハイジャックの首謀者アーサードで、
囚人の中からチームを編成してテロに及んでいたのだ。
そのメンバーはそれぞれが不当な罪で投獄されていたり、
理不尽な所業ゆえに犯罪を犯した人ばかりだった。
彼らの行為には世直し的な意味合いがあり、
アーサードの仕業は国民の支持を得ていく。

そして、最終的にカリとの対決が始まる。
山奥の村からヴィクラムがやって来て、
アーサードと父子の対面を果たす。

という30年に渡る物語を
時間軸を交錯させながら、
父子の物語として展開する。

インド映画は面白い。
面白さの秘訣は、
まず勧善懲悪であること。
いろいろあっても、最後に善が勝つ。
観客は喜ぶ。
娯楽映画の王道だ。
次に主役が美男美女であること。
それも桁外れの。


やはり、映画の主役は美しくなければ。
反対に悪役は、こんな面相の人間がいるのか、
と思うほど、顔がものを言う。
こっけい部門の担当は、
ひたすら間抜けな人物で、笑いを誘う。


そして、工夫をこらした怒涛のアクション
今までにないアクション画面を作ろうと競い合う。
更に、歌と踊り
本作でも、要所要所で、歌と群舞が展開する。
なんだかヘンテコな振り付けで。


そして、ド派手な音楽
これこそ娯楽映画、これこそ映画を観る楽しみ

ただ、今回の作品は、単なる娯楽映画だけでなく、
社会問題を内包する。
農民が疲弊して、借金まみれなのに、
政治家は大金を銀行から帳消しにされている、とか
医療設備が整っていない病院を救うために
保健大臣に迫って、
全ての病院に最新の設備やトイレなどを設置させる、とか。
5時間しか持たない蚊取り線香に熟考するのに、
5年続く政治に無関心なのはなぜか、
選挙の1票が大事、
しっかり見極めて国や地域の代表を選ぼう、とか。
政府が10年経ってもできないことが、
テロリズムによって5時間でできる、とか。
日本と同じだな、と思わされる。

ただ、インドの俳優は顔が見分けがつかない。
本作でも、あの人とこの人は顔が似ているが、
と思ったら、
ヴィクラムとアーサードは、
同じ俳優(シャー・ルク・カーン)が父と子を演じているのだ。
監督は、アトリー

この映画、
初日世界興収は22億円を突破、
最終興収200億円をたたき出し
インド映画世界歴代5位を記録したという。

でも、日本での人気は今一つ。
私が観た幕張の映画館では、
観客は7人しかいなかった。

タイトルの「ジャワーン」は、
「兵士」の意。

5 段階評価の「4」

新宿ピカデリー他で上映中。