[ドラマ紹介]
聖域とは、この場合、相撲の土俵のこと。
Netflix が日本で製作し、
5月4日から全世界で配信中の
大相撲を題材としたオリジナルドラマ。
配信後1週間の累計視聴時間1125万時間を記録し、
週間グローバルトップ10(テレビ・非英語部門)で2週連続トップ10入りした。
北九州の不良の小瀬清は、
その柔道の試合を見た猿将部屋の親方にスカウトを受け、力士になる。
猿将親方から、力士になって出世すば、
金がもうかる、と言われ、
金を稼いで、借金で失意の中にいる父親に
昔やっていた寿司屋を取り戻してやりたいからだ。
しかし、センスと体力はあるが、
当初から相撲を馬鹿にしており、
金のために入門したので、相撲への敬意や品格は一切ない。
稽古を軽んじ、四股の意味も理解せず、
自己流でふてぶてしい態度は、
先輩力士の憎悪の的となり、
虐待にも似たしごきや、嫌がらせにあう。
ある日、父が事故で倒れ、
意識はあるが動くことも話すこともできない状態になってしまう。
一切入院費を払うつもりはない、と宣言する母の代わりに、
多額の入院費用を工面する必要ができた清は、
本腰を入れて相撲に取り組むこととなる。
夜更けに公園でひとり、四股を踏んでいた時、
桜を見上げて佇む、別の部屋の力士静内(しずない)と知り合い、
何か共感するものがあって、交流を深めてゆく。
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やがて、親方の猿将は、
清に『猿桜』(えんおう)の四股名を授けた。
序の口、序二段、三段目と無敗の優勝を遂げた猿桜は、
番付も幕下へと昇進し、そんな中で迎えたのは、
強敵・静内との一番。
そこで猿桜は、心身共に深く傷付けられるほどの重傷を負う。
頭を張手で狙われると恐怖にかられる心的外傷に見舞われた猿桜は、
力士として再起不能となった。
猿将と確執のある犬嶋親方は、
これを機に猿将部屋を葬ろうと、
腰巾着の馬山部屋を使い
出稽古の形で猿将部屋の力士を虐め抜く。
その際に猿桜が起こした暴力事件により、
もはや彼の解雇は避けられないものとなった。
猿桜は、自ら部屋を去る決意をするが、
そんな彼を止めたのは、これまで父を邪険に扱ってきた母であった。
母は猿桜を激しく叱咤し、ショックによって彼は立ち直ることに成功する。
その日から、猿桜は真面目に稽古に取り組むようになる。
親方の猿将や先輩力士の猿谷に教えを請い、
猿将の現役時代の取組の型を取り入れたりして、精進する。
そんな猿桜の態度は、
怠惰だった周囲の力士をも変えてゆく。
そして、再び馬山部屋の出稽古を迎えるも、
今度は実力伯仲となった上、猿桜は勝利を収めた。
迎えた、静内とのリベンジマッチの取り組みがやって来る。
向かい合った両者は、土俵の上でこれまでの人生を回顧し、
激しくぶつかり合う・・・
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/14/b3af6f4827c424d4403fde92254d8e3b.jpg)
という、とんでもない所で、
8話は終わってしまう。
否が応にもシーズン2に期待が高まる。
という主筋に、
取材に来た新聞社の相撲担当記者の国嶋飛鳥との関係などがからむ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/30/d7ba805f78d342a8d4d321e830c7349d.jpg)
飛鳥は帰国子女で、相撲部屋を初見学した時、
しごきを始めとする暴力体質に驚き、
現代に合わない相撲界の常識は変わるべきだと感じている。
元は政治部にいたが、強引な取材、
それを上司に庇ってもらえなかったことで人事異動を受けた。
いつか政治部に戻ってやるという決意を持っていたが、
清と出会い、その相撲を見る内に
相撲そのものに興味を惹かれていく。
また、静内の過去も絡んでくる。
少年の頃、目の前で母と弟の惨殺を目撃した過去がトラウマとなっており、
その事件を取材する記者から
脅迫を受け、猿桜との対戦で負けるように示唆される。
先輩力士の猿谷(えんや)は、
猿将部屋の出世頭で、
小結まで昇ったが、
膝を痛めて敗北を重ね、
十両陥落、今では、幕下まで落ちている。
猿桜の才能を見抜き、的確な助言をする。
引退を決心した猿谷は、
第8話で、断髪式を行う。
国技館でするほどではない力士は、
部屋で行うのだと、初めて知った。
この断髪式の場面は涙を誘う。
他に、体格に恵まれず、相撲を諦めた同門の清水の
呼び出しへの転身と、猿桜への応援。
清と同郷であることから意気投合し、彼を翻弄してゆくホステスの七海。
IT企業のCEOで、猿桜の初のタニマチになる村田。
角界で注目されている龍谷部屋の大関・龍貴の
父からの重いプレッシャーとの闘い。
物語は重層的に進んでいく。
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監督は江口カン、脚本は金沢知樹。
猿将親方はピェール瀧、その妻の女将は小雪、
龍谷親方は岸谷五朗、タニマチの伊東を笹野高史、
飛鳥の上司で定年間近の大相撲担当記者の時津を田口トモロヲ、
清の父母をきたろうと余貴美子、
理事長を中尾彬、犬嶋親方は松尾スズキなど、
ベテランが固める。
実は、このドラマ第1話を5分ほど観て、一旦、やめた。
冒頭、相撲部屋でのしごきの場面が続き、
こんなドラマ、観たくない、と思ったからだ。
しかし、あまりに評判がいいので、
再度観たところ、
一挙に8話分観てしまった。
それほどよく出来ている。
まず、主人公の清、後の猿桜のキャラクターがいい。
「土俵にはカネ、地位、名声、オンナの全てが埋まっている」
との甘い言葉に誘われて、
相撲の世界に飛び込んでみたものの、
その封建的な体質になじめず、
稽古の古いやり方にことごとく反抗する、という設定が面白い。
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それを演ずる一ノ瀬ワタルが圧倒的にいい。
たたずまいに哀愁があり、魅力的。
既に様々な映画やドラマに出演している方だが、
オーディションによって選出され、初の主演作品となった。
元プロ格闘家(キックボクサー)という前歴が生かされた役作り。
オーディションで求められたのが、
120キロ以上の体重だった。
1次オーディション時は80キロ後半。
半年後の最終オーディション時には93キロまで増やした。
専門医や栄養士の指導を受け、
さらに半年後のクランクイン時には113キロの増量に成功。
入門から番付を上げるストーリーに合わせ、
撮影期間も肉体改造を続け、最大130キロ超に到達した。
ただ、ざんばら髪を髷に結う時の描写は必要ではなかったか。
また、相撲取りを演ずる無名の俳優たちがすごくいい。
まず、猿谷を演ずる、澤田賢澄(さわだけんしょう)。
ものすごくリアリティのある演技をする。
元大相撲力士であり、現役当時の四股名は千代の眞(ちよのしん) 。
最高位は西幕下五十九枚目。
弟は九重部屋所属の現役大相撲力士の千代の国。
平成24年9月場所を最後に引退し、
その後10年間は飲食店を経営する。
新型コロナウイルスの直撃を受け、
「このままでは終わってしまう。俺の人生これで終わって良いのか?」
と考えていた矢先、このドラマのキャスト募集を知り応募し、
猿谷役を勝ち取り、俳優としてデビュー。
現在、小錦らと共に世界各国にて相撲SHOWを公演している。
静内を演ずる飛翔富士廣樹(ひしょうふじひろき)も元大相撲力士。
身長193㎝、体重212㎏。
最高位は東十両13枚目。
無口でほとんどセリフはないが、
その苛酷な人生がにじみ出る演技だ。
龍貴を演ずる佳久創(かくそう)は、元ラグビー選手。
父は中日ドラゴンズや台湾プロ野球で活躍した郭源治(現:佳久源治)。
その他、力士を演ずる俳優たちがみんないい。
ろくでもない奴らなのに、
愛しく、可愛く見える。
オーディションで選ばれたのだと思うが、
配役がはまった時、その作品の評価はおのずと決まる。
馬山親方役のおむすびなど、
極度の肥満体、びったりの悪相で、
どこからこんな役者をみつけてきたのかと思うほど。
国嶋飛鳥役の忽那汐里もなかなかいい。
力士役を演じる全ての俳優陣は、
専門家の指導の下、1 年間に及ぶ肉体改造や相撲の稽古を行ったという。
元十両・維新力さんの監修のもと、股割り、四股、鉄砲と相撲の基礎を学んだ。
稽古や取組のシーンは代役もCGもなし。
役者同士の熱のこもったぶつかり合いが迫力ある映像になった。
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Netflix は日本における実写オリジナル作品の制作の拠点として
東京都世田谷区の東宝スタジオと複数年の賃貸契約を結んでおり、
本作についても東宝スタジオにて撮影が行われた。
大相撲が開催される国技館(みたいな場所)は、
セットが組まれたという。
久しぶりにヒットした日本製ドラマ。
シーズン2が待ち遠しい。
8話連続。計6時間47分。