空飛ぶ自由人・2

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あゝ総裁選

2024年09月30日 23時00分00秒 | 政治関係

自由民主党の総裁選挙が終わった。


現職の岸田総裁が出馬を見合わせたため、
史上最多の9名が立候補。
テレビ出演や討論会を繰り返す間に、
小泉進次郎氏のメッキがはがれ
逆に政策通の高市早苗氏の株が急上昇となった。

第1回投票では過半数を取った候補がいなかったため、
高市氏と石破氏との決戦投票となった。
第1回投票では、高市氏が党員・議員票ともにリードし、
一時は「日本初の女性総理」への期待が高まったが、
第2回投票では、
石破氏215票、高市氏194票
石破氏の当選となった。

10月1日の臨時国会で首班指名を受けて、
石破氏は日本国総理大臣になり、
10月27日には、
衆議院選挙が予定されている。(時期について、野党は反発)

第1回投票は国会議員票と党員票(都道府県票)の比率は1対1だが、
第2回投票は国会議員票が8に対し、都道府県票1になるから、
実質、国会議員が石破氏を選んだことになる。

近く解散総選挙が行われる公算が大きいことから、
国会議員が「選挙の顔」を選ぶ総裁選であり、
保守色の強い高市氏より、
リベラル色の強い石破氏の方が
穏健派の保守層の票が獲得出来るという目算が働いたのだろう。
落選すれば「ただの人」になってしまう議員にとっては、
少しでも自分の当選に有利になる総裁を選んだということだ。
また、高市氏は靖国神社への参拝を公言しており、
もしそれをしたら中国・韓国との関係が悪化する、
という懸念があった。

いずれにせよ、国会議員の選択の結果であるが、
第1回投票で国会議員票がわずか46票だった石破氏が
72票だった高市氏を逆転したのは、
それなりの理由があったと思われる。
第1回投票で2位以内に入れなかった候補の支持者の
票の行方を分析する向きもあるが、
私は勝敗の分かれ目は、
第2回投票前の
それぞれ5分間の演説にあったと見ている。

石破氏は、最初の方で、
「私は至らぬ者であります。
 多くの足らざるところがあり、
 多くの方々の気持ちを傷つけたり、
 いろんないやな思いをされたりした方が多かったと思います。
 自らの至らぬ点を心からおわび申し上げます」
と述べた。

石破氏には、「裏切りの歴史」がある。
1993年に細川護熙政権が誕生して
自民党が野党に転落した時、
自民党に離党届を出し、
新生党へ参加したのだ。
その後はあっさりと自民党に復党
2002年の小泉純一郎政権で
防衛大臣に抜擢された時も裏切った。
伊吹文明氏から目をかけられ伊吹派にいたにもかかわらず、
初入閣後に「閣僚は派閥に属するべきではない」「派閥は旧態依然」として、
派閥を離脱
麻生太郎政権では、閣僚を務めていながら
“麻生おろし”に加担するなど、
常に恩義のある人を裏切り続けていた。
だから、いわゆる「国民的人気」がありながら、
自民党内での支持者は少なかった。

その事実を暗に認め、謝罪したことで、
「そうか、本人も自覚しているのか。
 そして、謝罪している、そろそろ許してやろうか」
という心境になった議員もいるのではないか。

そして、石破氏は、
後半、
「日本を守りたい。
 地方を守りたい。
 国を守りたい」
愛国の心情を吐露し、
最後に、決定的な言葉を口にする。
「来たる国政選挙において、
 同志が、一人残らず
 議席を得ることができるように」と。
自分の当選を願う、議員心理の琴線に触れたのだ。

対して高市氏の演説。
岸田総理への思い、                               総裁選で多くのことを学ばせていだいたこと、
など述べたが、
石破氏と内容が同じで、後追いの印象を与えた。
そして、何回かミスを犯す。
冒頭、女性として決戦投票に残ったことを強調し、
「女性総理」への期待をにじませたが、
そんなことはわざわざ強調しなくても、見ていれば分かる。
女性の進出を望まない男性議員心理を逆撫でした。
そして、最後に公明党の新代表への思いなどを述べたが、
こんな場で持ち出す話ではない。
自公連立政権で
公明党が政策の足かせになっていることを
快く思っていない議員もいたことだろうから
逆効果だった。
しかも時間オーバー
そんな枝葉に触れずに、
得意の経済を持ち出し、
経済の建て直しをして、
日本列島を豊かにし、
かつての栄光を取り戻しましょう、
と訴えるだけでよかったのだ。
最終決戦に残ったら、
どんな演説をしようと、
検討する時間が無かったのだろうか。
そういう助言をするスタッフもいなかったか。

この二人の演説が勝敗の分かれ目だったと私は思っている。
「最終演説を聞いて決断する」
と言っていた議員もいた。
21票差といえば、
11人の票が動くだけで逆転する僅差だ。
二人の演説を聞いて、
石破氏に投票することに決め議員は少なからずいたはずだ。

政治家は言葉の力を持っていなければならない。
随分前の、総裁選で、
複数の候補の演説を聞く機会を得たが、
他の候補が空疎な言葉を繰り返す中、
石破氏の演説が一番心に届いたことを覚えている。

私は以前から高市さんを強く推しており、
アメリカも女性大統領が誕生するかもしれない中、
日本も初の女性総理、という光景を見たいと思っていたが、残念だ。
しかし、選挙の結果は、神聖なものと受け止めなければならないだろう。

そして、今後のこと。
石破氏は総裁選に当たって、
金融所得への課税強化
法人税の増税を言っている。
そんなことをすれば、
国民の投資意欲を削ぎ、
会社が内部留保に走り、
賃上げもせず、
せっかく終わりかけたデフレ経済が元に戻ってしまうのに、
何を言っているのだろうか。
増税し、緊縮財政をしたら、景気が冷え込んでしまう。
それが分からないとしたら、
石破氏は本物の経済オンチだ。
選挙翌週の株価下落がその懸念を見せている。

国会では野田佳彦代表の立憲民主党と対峙することになる。
立憲民主党で最も保守的な野田氏と
自由民主党で最もリベラルな石破氏との対決、
という不思議な構図が興味深い。

既に書いたとおり、
今回の総裁は、
国会議員が選んだものだ。
その選択の結果は、
議員たち自身が受け止めなければならない。
仮に落選したとしても、
それは自身の選択の結果だ。

顔のことを言っては悪いが、
石破さんの顔は陰気だ。
しゃべり方も陰々滅々としている。
とても先頭に立って国民を引っ張る個性ではない。
政治家になると人相が悪くなる、という説があるが、
初当選当時の写真と比べて愕然とした。
日本の政界の汚濁を生き延びて来た悪相だ。
今後、外国首脳との会談でも、
見るからにさっそうとした外国首脳に対して、
日本の首相が陰気な表情で対する光景は、
予想しただけで暗くなる。
通訳を介しては、言葉の力は通じない。
特に、トランプ氏などは毛嫌いするだろう。

衆議院選挙、来年の参議院議員選挙がヤマだ。
リベラルな石破氏を選んだことで、
穏健な保守層や無党派層の票の流出は食い止めたかもしれないが、
自民党の岩盤支持層は、確実に離れるだろう。
もし連敗するようなことがあれば、
そこで石破氏の自民党総裁は終わりだ。
その時どうなるか。
小泉氏は選挙対策委員長になるというから、
その場合、小泉氏も共倒れだ。
もしかして、そこまで見通した布陣なのか?

10月の衆議院議員選挙、
11月のアメリカ大統領選挙、
来年の参議院議員選挙。
日本の命運が決まる。


小説『三千円の使い方』

2024年09月28日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

御厨(みくりや)家の人々のカネを巡る原田ひ香の連作短編集。
次女の美帆をはじめ、長女の真帆、母親の智子、
祖母の琴子の視点での6話構成

念願の一人暮らしを始めた美帆は、
先輩女性が突然リストラされたことで、
将来に不安を覚える。
恋人の大樹との間も隙間風が吹き始めている。
家を買おうと思い、1千万円の貯蓄計画を始める。

祖母の琴子は貯金の目減りを心配し、
少しでも働いてみようと思い、
コンビニの店員募集に応じてみるが、
73歳という年齢を聞いて断られる。
しかし、コンビニ店長の紹介で、
和菓子屋の団子売出店に就職する。
それを脇から見た真帆は涙する。

真帆はポイント獲得の「プチ稼ぎ」でわずか家計の足しにしているが、
消防士の夫の稼ぎでは、切りつめても月6万の貯金がやっと。
そんな時、短大時代の友達とのランチ会で、
友人の小春が豪華なダイヤの婚約指輪をもらい、
タワーマンションに住む予定、
新婚旅行もイタリアと聞いて、衝撃を受ける。
自分の婚約指輪時はチャチなもので、
新婚旅行も海外ではなかった。
真帆は、節約節約の毎日に疲れていたことに気づく。
しかし、小春から電話がかかり、
結婚辞めるかもしれないと告げる。
相手の父母に高額な生命保険に入ることを強要されたのだ。

琴子とホームセンターで知り合いになった小森安生(やすお)は、
アルバイトで貯めた金で海外に出かけるフリーター
恋人の本木きなりから、子供が欲しい、と言われて狼狽する。
子どもはコスパが悪い
費用対効果が最悪だ。
そんな時、季節労働先で一度だけ関係を結んだ女が
妊娠した、と言って訪ねて来る。
その騒動の中で、
安生は、妊娠したのがきなりであってほしかったと、初めて気づく。

智子は胃がんの開腹手術から帰宅して、
自分の気持ちの変化に気づく。
毎日毎日家事にあけくれ、
夫の食事を作る生活に疲れたのだ。
ついに、智子は夫に週一回、
夕食は自分で取ってくれ、と宣言する。
友人の千さとが離婚の危機で、
その財産の分配について、厳しい話も聞く。

美帆は大樹と別れた後、
新たに恋人になり、結婚も考えている翔平から重大な話を聞く。
翔平の美術大学の費用として、
父母が奨学金をもらっており、
その返済が突然自分に突きつけられてきたというのだ。
総額550万円。
毎月3万を返済しても、
利息を含め、20年かかる。
翔平の実家を訪ねたが、
大人になっていない人たちだと感じた。
事情を聞いた智子たちは結婚に反対するが・・・

最後の解決はほっとする。
ここに琴子の財テクが絡んでくるとは思わなかった。

翔平が言う、
会社は給料、仕事内容、人間関係、
この3つのうちのどれか一つでも良けれ続けられるが、
全部がダメなら、
精神が壊れるからやめた方がいい、
という話はうなずける。

生活することに、
お金の問題は欠かせない
日々の生活費から始まり、
突然の入院、離婚もあり、
将来的には介護費用の問題もある。
そのお金に関する話を赤裸々に綴るこの本。
身につまされる人も多いだろう。

題名の意味は、
「人は三千円の使いかたで、人生が決まるよ」
という祖母の話から来ている。

中央公論新社の「アンデル小さな文芸誌」に
2017年7月号から12月号まで連載され、
2018年4月25日に中央公論新社から刊行された。
元は「節約家族」というタイトルだったが、
本を出す前に中央公論新社の営業部から
「そのタイトルでは売れない」と言われ改題された。

発行部数は累計100万部を超え、
2023年1月に
葵わかなの美帆、山崎紘菜の真帆、
森尾由美の智子、中尾ミエの琴子
で、テレビドラマ化された。

ついでに私見を述べる。
庶民が生活に不安を覚えるようになったのは、
金利が異常に低いことが一因だ。
1990年代、銀行金利は5%はあった。
銀行に預けておけば、
自然にお金が増える、
というのが、どれほど庶民に安心感を与えたか分からない。
ところが、日銀が政策金利を下げ続け、
ついにゼロ金利に落としてしまった。
今、銀行金利は0.1%。
100万円を預けても、
もらえる利息はわずか年千円。(税金を引かれて、800円)。
これでは、生活に不安を覚えるのは、当然だ。
効果のない金利低下をもたらした日銀の責任は重い

 


ドラマ『SHOGUN 将軍』

2024年09月27日 23時00分00秒 | 映画関係

[ドラマ紹介]

実は、このドラマ、
大分前に、途中まで観て、やめた。
第1話、主役のイギリス人が伊豆に上陸した時、
無礼をはたらいた村人が首をはねられたり、
若い侍が裸の遊女と交わるシーンなどで、
また、こういう日本を描くドラマか、と途中でやめた
そこへ、エミー賞での史上最多部門受賞のニュース。
これは観なければなるまい、と、
ディズニー・プラスで視聴。

日本行きのオランダの軍艦に乗船していた
イングランド人航海士ジョン・ブラックソーンは、
日本とポルトガル(カトリック国)の外交を手切れにさせ、
代わりにイングランド(プロテスタント国)と
貿易・軍事関係を結ばせる立役者となることで、
立身する野望を抱いていた。
しかし、船は伊豆沖にて難破し、
ジョンは数名の同僚と共に、網代に漂着する。
ジョンはそこで、
天下を狙う関東の大名・吉井虎長と出会い、
虎長が天下を取っていく過程を目撃することになる。

物語は、
太閤の死後、覇権争いをする大坂の五大老たちと
関東を拠点に天下統一を目論む
虎長の動きを対比させて描く。

虎長の大坂脱出や
人質たちの去就、
網代の大地震で軍を失う虎長の窮地など
サスペンス感もたっぷり。
特に、通訳を務める女性・戸田鞠子の存在が
重要な要素を占める。

ジョンは外国人で武士になった
三浦按針(ウィリアム・アダムス)がモデルだという。
虎長は徳川家康、
鞠子は細川ガラシャ(明智光秀の娘)、
五大老を牛耳る石堂和成は石田三成がモデルというが、
実際は、全く史実を無視した内容で、
戦国時代の日本を舞台に
そこに紛れ込んだイギリス人の冒険譚という趣き。

しかし、描かれるものは深く、
異文化衝突、日本人の死生観、「宿命」、
権力の虚しさ、武将たちの夢などを素材とした
人間ドラマの様相。
この深遠な内容をおバカな(失礼!)アメリカ人が
どれだけ感じ取ることが出来たのか不思議だが、
この高評価を見れば、受け止めたのだろう。
「運命」と「宿命」の違いなど、区別がついたのだろうか。
個人主義のアメリカ人にとって、
主君のためなら命を投げ出す「忠義」の心など、
理解不能だと思うが、
理解不能だから驚いて、評価したのかもしれない。

原作は、ジェームズ・クラベルによる歴史小説。
1975年に出版され大ベストセラーとなり、
1990年までに世界中で1500万部が売れた。

1980年にアメリカのNBCによって、5日連続、
合計9時間のミニテレビシリーズとしてドラマ化され、
リチャード・チェンバレン、三船敏郎、島田陽子が出演、
全米視聴率では平均32.6%を記録した。
後に2時間に編集された劇場版も公開された。


(ツタヤで借りて、第7・8話を観たが、
 今回の作品より分かりやすい。
 また、島田陽子の美しさが際立つ。) 

評価は高く、エミー賞では、
作品賞 (ミニシリーズ部門) 、
グラフィックデザイン・タイトル賞、
シリーズ部門・衣装賞を受賞、
ゴールデン・グローブ賞では、
テレビシリーズドラマ部門・作品賞
男優賞(リチャード・チェンバレン)
女優賞(島田陽子)を受賞。

テレビシリーズの後、ブロードウェイでも舞台化された。

という実績ある小説を、再ドラマ化したのが本作。
2月27日にアメリカではFXで、
日本ではDisney+ で配信され、
1980年作品を越えて、大きな評価を得た。

今回の特徴は、全編カナダで撮影され、
台詞の大部分は日本語で、英語字幕が付く。
(1980版では、
 主にジョンの視点で描かれるため、
 英語の場面が多く、
 日本語の台詞には字幕も付けず、
 アメリカの視聴者は日本語の台詞を「音響効果」のように聞いた。
 しかし、通訳役を通じて英語に言い直され、
 部分的には英語の説明が補っていた。)
これまでハリウッドで日本の時代劇が作られたことはあったが、
台詞は英語が中心。
(なにしろ、イエス・キリストさえ英語で話す。)
そのため、
俳優を選ぶ時は、役に最も適した俳優ではなく、
英語が話せる日本人俳優を優先的に選ぶことになってしまっていたが、
今回の作品では、
日本側が沢山描かれるため、日本語中心。
英語を喋らなくてもよくなったことで、
日本の錚々たる俳優陣のキャスティングを可能にした。


吉井虎長に真田広之


戸田鞠子にアンナ・サワイ


その他浅野忠信、平岳大、西岡徳馬、二階堂ふみらが脇を固める。


1980年版の俳優と比べると、
リチャード・チェンバレン→コスモ・ジャーヴィス、


三船敏郎→真田広之、
島田陽子→アンナ・サワイ、
フランキー堺→浅野忠信
金子信雄→平岳大ら。
真田広之、アンナ・サワイの演技は、
受賞を納得させる素晴らしい出來。

画面を観て驚かされるのは「金がかかっている」という印象。
壮大なロケ、豪華な装置、衣裳、小道具に至るまで、
全く手を抜いていない。
制作費は1話あたり数十億円と言われ、
10話で計100億円以上とされる。

脚本家兼エグゼクティブプロデューサーのジャスティン・マークス
彼の妻で監督補佐プロデューサーのレイチェル・コンドウは、
1980年作品のようなハリウッドチックではなく、
現代人に日本の文化が伝わるような脚本にするため、
1年以上を費やした。
最初の脚本段階は英語、それを日本語に直訳し、
別の脚本家が時代劇の言い回しに書き換え、
さらに英訳し直して字幕をつけるという
手間のかかる作業が行われた。
また真田には当初、主演を依頼したものの、
後にプロデューサーとしての参加を要請した。
エミー賞の作品賞授賞で真田広之がススピーチしたのは、
プロデューサーだから。

総指揮のジャスティン・マークス
「当初、ハリウッドがこの数十年、
日本を描く時『どんな間違いを犯したか』を
ずっと真田さんと議論しました」
と述べている。
真田広之は
「日本人が見てもおかしくない日本を描こう」
「誤解された日本を描く時代を終わらせたかった」
と語っている。
これまでにハリウッドで描かれた日本は、
時代劇、現代劇を問わず、
日本人から見ると「ヘンテコ日本」としか言いようがない描写や
舞台美術、衣装などが溢れ返っており、
「出演した俳優たちは、これはおかしい、と言わなかったのだろうか」
と思うことがしばしばだった。

真田がプロデューサーに加わったことで、全てが変わった。
旧知の着物スペシャリストを東映京都から呼び寄せたのをはじめ、
時代劇のあらゆる分野の専門家を日本から招集、
多数のキャスト・スタッフが渡航し、
日本流の時代劇作りに情熱を注いだ。
舞台美術や小道具のスタッフには、
日本の文化を理解している日本人を起用する徹底ぶりを見せた。
海外のスタッフや出演者らには、
日本の歴史や文化をまとめ日本を正しく理解してもらうための
約900ページにも及ぶマニュアルを作成。

真田ら製作陣が重視したのは、
戦国ドラマを、
究極のレベルに高めることだった。
これまで日系と他のアジア系が混同されがちだった
ハリウッドの価値観に挑戦するかのごとく、
真田はすべての日本人の役を、
日本人、または日本にルーツを持つ俳優が演じるよう提案。
キャスティングはこの方針の基に行われ、
エキストラもカナダに駐在している日本人や日系人を起用した。
登場人物の言葉使いから座り方などの細部にまでこだわり、
自ら美術、衣装、メーク、所作などを指導、
撮影現場ではあらゆるディテールが
歴史的、文化的にふさわしくなるように、
立ち振る舞いから、周りとの接し方など細かい所作まで演出指導が行われた。
セットの畳には土足厳禁、
ケータリングには日本食を用意し、
衣裳の家紋の位置から、わらじの履き方、
兵士が持つ銃や槍を全員に右手で持たせたり、
お城に農民を入れないようにするなど細かく指導し、
妥協を許さない作品作りが行われた。
真田は自身が出演しない日も撮影現場に通い、
日本の文化が正しく描写されるよう指導したと言われる。
また、不自然な日本の描写を正すために
編集作業にも加わり、
1年半かけて全ての編集、レコーディング、VFXを自身で確認した。

真田は昔から、
「日本の武士道や、日本の時代劇を
ちゃんとハリウッドで表現することができない、
俳優だけでは全てやり遂げられない、
口出せないことも多い」
と悔しがり、
「誤解に満ちた日本人像が今まで結構多かった。
僕たちの時代でそれを払拭したい」
と願っていたと言われる。
真田のたゆまぬ献身と努力が、
ようやくハリウッドで報われたとも評され、
エンターテイメント作品を通じて、
日本大使的な役割をも担う真田の
集大成的な作品となったとも称賛される。

初回エピソードの世界配信開始から6日間で
900万回の再生回数を記録した。
世界配信されたドラマシリーズの再生回数としては歴代1位である。

エミー賞では、
作品賞や主演男優賞など、25の部門にノミネートされ
業界を驚かせた。
作品賞に英語以外の作品がノミネートされたのは「イカゲーム」以来、2 年ぶり。
また、11人の日本人がノミネートされ、過去最多となった。
浅野忠信、平岳大も助演男優賞にノミネートされた。
日本人が俳優部門にノミネートされるのは
2007年に「HEROES」(2007年)でノミネートされた
マシ・オカ以来、17年ぶりとなった。

9月8日、エミー賞の授賞式に先駆けて、
技術系や美術系などの一部部門が発表され、
撮影賞や視覚効果賞などで受賞して、14冠を獲得。
9月15日、エミー賞主要部門の授賞式が行われ、
フレデリック・E・Oトーイが監督賞
真田広之が主演男優賞
アンナ・サワイが主演女優賞
そして、作品賞を受賞した。


非英語作品が作品賞で受賞したのも、
日本人が俳優賞の主要部門で受賞したのも、初めて。
作品賞、監督賞、
主演男優賞、主演女優賞、
ゲスト男優賞、視覚効果賞、
音響編集賞、音響賞、撮影賞、編集賞、
プロダクションデザイン賞、キャスティング賞、
メイクアップ賞、プロスティック・メイチアップ賞、
ヘアスタイリング賞、衣裳デザイン賞、
メインタイトルデザイン賞、スタント・パフォーマンス賞と、
同賞創設以来過去最多となる合計18冠を獲得。

作品賞受賞の時、
真田は、「日本語で」と断って、
「これまで時代劇を継承して支えてきてくださった全ての方々、
 そして監督や、諸先生方に心より御礼申し上げます。
 あなた方から受け継いだ情熱と夢は
 海を渡り、国境を越えました」
とスピーチした。
時代劇を作り続けて来た日本のスタッフに送ったメッセージだった。

第2シーズンと第3シーズンの制作が、既に発表されている。


好きなアイスランキング

2024年09月26日 23時00分00秒 | 様々な話題

訪日外国人が日本の食の美味しさに驚いているが、
最近では、アイスにまで話題が及んでいます。
確かに外国に比べ、
日本のアイスはその量・質共に世界一

そんな中、
先日、テレビ朝日の
「今夜ついに決定! 
 1万人が選ぶ令和・平成・昭和
 好きなアイスランキング」
という番組で、
歴代のアイスの人気ランキングを放送したので、
紹介します。

今回のランキングの特色は、
昭和を「創成期」
平成を「革命期」
令和を「新時代」と分け、
その時期に発売開始したアイスについて、
20代以下、30代、40代と
それぞれの世代から1000人ずつ
計1万人に
各時代の好きなアイスベスト3を選んでもらい、
1位5P、2位3P、3位1Pとポイントをつけ、集計したもの。

以下が、そのランキングです。

 

創世期の昭和アイスランキング ベスト20

1位 雪見だいふく(ロッテ)昭和56年発売


2位 ジャイアントコーン チョコナッツ(江崎グリコ)
                  昭和38年発売


3位 ミニカップ「バニラ」(ハーゲンダッツ)
                  昭和60年発売


4位 レディーボーデン パイントバニラ(ロッテ)
                  昭和46年発売


5位 ビスケットサンド(森永製菓)昭和55年発売


6位 パピコ チョココーヒー(江崎グリコ)
                  昭和52年発売


7位 アイスメロン(現在:メロンボール)(井村屋)
                  昭和47年発売

8位 あずきバー(井村屋)昭和48年発売


9位 ピノ(森永乳業)昭和51年発売


10位 BLACK(赤城乳業)昭和53年発売

11位 輪切りパイン(井村屋)昭和56年発売
12位 ガリガリ君ソーダ(赤城乳業)昭和56年発売
13位 ブラックモンブラン(竹下製菓)昭和44年発売
14位 ホームランバー(協同乳業)昭和35年発売
15位 ミニカップ「チョコレート」(ハーゲンダッツ)
                   昭和60年発売
16位 サクレレモン(フタバ食品)昭和60年発売
17位 宝石箱(雪印乳業)昭和53年発売
18位 南国白くま(セイカ食品)昭和44年発売
19位 スイカバー(ロッテ)昭和61年発売
20位 パナップ グレープ(江崎グリコ)昭和53年発売

 

革命期の平成アイスランキング ベスト20

1位 MOWバニラ(森永乳業)平成15年発売


2位 ミニカップ「ストロベリー」(ハーゲンダッツ)
                   平成4年発売


3位 PARM チョコレート(森永乳業)平成17年発売


4位 ミニカップ「クッキー&クリーム」

                                       (ハーゲンダッツ)平成4年発売 

     

5位 チョコモナカジャンボ(森永製菓)平成7年発売


6位 スーパーカップ 超バニラ(明治)平成6年発売


7位 爽 バニラ(ロッテ)平成11年発売


8位 ミニカップ「マカデミアナッツ」                                   (ハーゲンダッツ)平成8年発売

9位 クーリッシュ バニラ(ロッテ)平成15年発売


10位 モナ王 バニラ(ロッテ)平成8年発売

11位 ガツン、とみかん(赤城乳業)平成10年発売
12位 サンデーカップ(森永製菓)平成元年発売
13位 スーパーカップ 抹茶(明治)平成14年発売
14位 チョコバッキー バニラ(シャトレーゼ)
                   平成30年発売
15位 ミニカップ「グリーンティー」(ハーゲンダッツ)
                   平成8年発売
16位 ガリガリ君 梨(赤城乳業)平成14年発売
17位 クリスピーサンド キャラメル(ハーゲンダッツ)
                   平成13年発売
18位 スーパーカップ チョコクッキー(明治)
                   平成17年発売
19位 ガーナチョコ&クッキーサンド(ロッテ)
                   平成24年発売
20位 ICE BOX グレープフルーツ(森永製菓)
                   平成元年発売
 
新時代の令和アイスランキング ベスト20

1位 ミニカップ「ショコラデュオ」(ハーゲンダッツ)
                    令和4年発売


2位 ブルガリアフローズンヨーグルトデザート(明治)
                    令和4年発売

3位 リパリサンド(森永製菓)令和元年発売


4位 ジャイアントコーン 大人のアーモンドショコラ
             (江崎グリコ)令和3年発売


5位 レディーボーデン ミニカップ バニラ(ロッテ)


6位 セルフチョコレートクラッシュ!チョコミント
              (赤城乳業)令和4年発売


7位 MOW PRIME クッキー&クリーム

              (森永乳業)令和4年発売


8位 Dear Milk(明治)令和5年発売


9位 レディーボーデン ミニカップ コーヒー

               (ロッテ)令和元年発売


10位 ファンタグレープ アイスバー

              (丸永製菓)令和4年発売

11位 クーリッシュGreen バニラ(ロッテ)
                    令和4年発売
12位 リプトンミルクティーサンドアイス(森永乳業)
                    令和6年発売
13位 ブラックサンダー チョコミントアイス

           (セリア・ロイル)令和元年発売
14位 ミニカップ「豆乳チョコレート&マカデミア」
           (ハーゲンダッツ)令和5年発売
15位 The Premium バニラ(明治)

                    令和4年発売         
16位 しずく白ぶどう(クラシエ)令和6年発売
17位 Patire 誘惑のラムレーズン(協同乳業)
                    令和元年発売
18位 ごろろん果肉アップルパイバー(井村屋)

                    令和3年発売
19位 しずくゆず(クラシエ)令和4年発売
20位 ZERO アイスケーキ(ロッテ)令和元年発売

 

私は昭和の人間なので、昭和と平成のものは

ほとんど食べたことがありますが、

令和のものは逆にほとんど知りません。

 

総合ランキングのトップ10

1 位 雪見だいふく(ロッテ)
2 位 ジャイアントコーンチョコナッツ(江崎グリコ)
3 位 ミニカップ「バニラ」(ハーゲンダッツ)
4 位 MOW バニラ(森永乳業)
5 位 ミニカップ「ストロベリー」(ハーゲンダッツ)

6 位 PARM チョコレート(森永乳業)
7 位 レディーボーデン パイントバニラ(ロッテ)
8 位 ミニカップ「クッキー&クリーム」

                (ハーゲンダッツ)
9 位 ビスケットサンド(森永製菓)
10位 チョコモナカジャンボ(森永製菓)

 


「地面師たち」原作本と続編「ファイナル・ベッツ」

2024年09月24日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

Netflix でドラマ化され、大ヒットした「地面師たち」の原作本。

ストーリーは、8月21日のブログで十分したので、
ここでは、原作とドラマの違いについて述べる。

最初の詐欺の場面で、
なりすまし役の老人の窮地を救うための
茶のこぼし
近所のスーパーの件でのハリソンの無線での助力というくだりは
ドラマオリジナル。

辻本拓海の趣味は山登りという
原作の設定はドラマではスキップ。

免許証偽造者の長井は事故のため
顔面に火傷がある引きこもりという設定で、
その心をほぐす拓海との友情物語が原作にはあるが、
これもドラマではスキップ。

寺の持ち主の尼僧を沖縄に行かせるための作戦で、
拓海はホストクラブに潜入するが、
それはドラマオリジナルで、原作にはない。

尼僧の愛人は劇団主催者の男。
尼僧が男を買ってホテルで快楽の夜を過ごすという設定は
ドラマのサービス。
尼僧が土地を売りたい動機として、
劇場の建設というニセの設定が原作ではなされ、
その為のニセの完成予想図も用意される。

尼僧を沖縄に行かせるのは、
劇団主宰者への講演の依頼を作り上げ、同行したという設定。
尼僧だけ戻るのは、主宰者の男と喧嘩したらしい。
従って、沖縄の空港で殺人事件
ハリソンによる竹下の虐殺などは、ドラマオリジナル。

尼僧の到着寺の見学のサスペンスは原作、ドラマ共通。
ただし、ドラマでの文化財の仏像のくだりは原作にはない。
反対に、麗子の指のマニキュアがサスペンスの一つの要素となっている。
なりすましの女性は、
旅館の仲居で、病気の息子を抱えている、
というのがドラマの設定だが、
原作では、FX投資で損を出した主婦になっている。
従って、麗子がなりすまし役を探すために
旅館の仲居となって働く、という
少々不自然な設定はドラマ独自のもの。
なりすまし役の翻意は、息子の死ではなく、
夫に投資の失敗がばれたため。

拓海の父が騙された詐欺師は地面師ではなく、
医療機器売買に関する詐欺。

騙される石洋ハウスの社内事情は、
ドラマの方が詳しく、納得の出來。
会長と社長の確執は原作にはない。
モデルとなった「積水ハウス地面師詐欺事件」の
実話を取り入れたようだ。

ドラマと原作の最も大きな改変は、
刑事の辰の取り扱い
ドラマでは女性刑事が助手として付くが、
原作ではこの女性刑事は登場しない。
墓で待ち伏せし、拓海を追究するのは、
女性刑事ではなく、辰本人。
ドラマでは辰は殺されるので、
その後の展開で女性刑事が必要となったらしい。
従って、殺されかけた拓海を助けるのは、辰本人。
ドラマでの「ダイハード」の下りは、
当然原作にはない。
脚色者の秀逸な設定
きっと映画ファンなのだろう。

総じて、ドラマは映像的に映えるように脚色されており、
ドラマのヒットの要因も、
脚色者の功によるところが多い。

小説とドラマは、別のメディアなので、
改変は当然だが、
今回の例は、改変がうまくいった実例。

また、ハリソンを演ずる豊川悦史をはじめ、
綾野剛、ピェール瀧、小池栄子、
リリー・フランキー、山本耕次、
お笑い芸人のアントニーまで
配役がドラマを面白く立体的にした。
映画は配役が決まった段階
ほぼ成功が確定する。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「地面師たち」の続編
2024年7月に刊行したばかりの新作。

前作の不動産詐欺事件の関係者は次々逮捕され、
主犯のハリソン山中だけが消息不明に。
前作から引き継いで出て来るのは
ハリソン以外には、
辻本拓海と刑事を退職した
前述のとおり、
辰はドラマでは殺されているが、
続編では生きている。
後藤や麗子が出て来ないところを見ると、
ハリソンに殺されたらしい。

冒頭、シンガポールのカジノでバカラに没頭する男・稲田の描写から始まる。
この男、元サッカー選手で、
裏カジノ通いが報じられ、チームからクビになった男。
タイのサッカーチームに拾ってもらおうと渡航したが、
結局契約に至らず、帰路立ち寄ったシンガポールで、
有り金かけた大勝負の末、一文無しになってしまう。
途方に暮れる稲田に声をかけた日本人がいた。
あるビジネスに参加してくれたら、
莫大な金を提供するという。
その男こそ、潜伏中のハリソン山中だった。

というわけで、稲田を加えた新たな詐欺グループの標的は、
シンガポールのリゾート開発会社御曹司で社長のケビン
会長の父親からの低評価を挽回すべく、
新たな物件で起死回生をしようと焦っている。
ハリソン山中のグループからの釣り糸につけられたエサは釧路。
地球温暖化の影響で、
北極海の氷が減っているため、
欧州から太平洋へ抜ける航路が現実味を帯びており、
通年使用が可能になれば、
スエズ運河経由の航路より
ヨーロッパから東アジアまでの距離が4割短縮され、
輸送コストや日数も大幅に削減できるという。
そうなった場合、玄関口である釧路港が
海運の拠点のハブ港として、
重要な役割を果たすことになる。
釧路に世界中から人とモノと金が集まり、
開発ラッシュが繰り広げられる。
とういう現実的には未定の話で、
港に面した一等地、
総額210億円をひっかけようという作戦。

チームは影であやつるハリソン山中と
交渉役の吉沢安彰、稲田、売り手権堂のニセ者で元芸人の金本、
買い主側に潜入した女性マヤ、
そして、ケビンに偽情報をつかませる友人のリュウたち。
契約は豪華客船の上でなされるが・・・

これにハリソン山中を追う刑事の佐藤サクラの動きや
地元受け入れ時の菅原がヒグマに襲われる挿話などがからむ。

佐藤は刑務所にいる拓海と面会し、情報を得る。
また、佐藤の父親との関係も描く。

出来栄えは前作より劣る。
本題のだましに入るまでが長過ぎるし、
だましのテクニックも
前作でさんざん見せられているから、新鮮味がない。
なにしろ、新参加の稲田の人間性が不快だし、
ハリソンが何を見込んで、
このサッカー以外に能無しの男をチームに入れたかが不思議。
題名に「ファイナル・ベット」とあるように、
ギャンブル依存症のこの男と
最後の賭けに持っていきたいからとしか思えない。

単独では十分面白いのだけれど、
ドラマが抜群の面白さだっただけに、
期待が大きくなり、損した感じ。