空飛ぶ自由人・2

旅・映画・本 その他、人生を楽しくするもの、沢山

処理水をめぐって

2023年08月31日 23時00分00秒 | 様々な話題

東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を巡り、
中国からのいやがらせが続いている。
日本からの海産物の輸入禁止という中国政府の措置だけでなく、
中国在住の日本人や日本の施設への攻撃、
日本製品の不買運動、
更に、国際電話での日本への抗議、
と国をあげての反日キャンペーンだ。

福島第一原発の原子炉建屋では1号機から3号機の
溶け落ちた核燃料を冷やすための
注水と建屋への雨水や地下水の流入が続き、
1日140トンのペースで放射性物質を含む汚染水が発生。
この段階は、まさしく「汚染水」

この汚染水は専用の浄化設備に送られ
多核種除去設備(ALPS、アルプス) 吸着剤で
大半の放射性物質が取り除かれる。
これが「処理水」
各国の原発でも常に処理水は生成している。
水で原子炉を冷却する関係上、必要不可欠な過程だ。
ただ、セシウム、ストロンチウム、ヨウ素、コバルトなど、
ほとんどが除去できるが、
トリチウム(三重水素)という放射性物質だけは除去できない。
だが、トリチウムは毒性が弱いので、
世界中の原子力施設から、
各国の基準に基づいて希釈した上で、
日常的に放出されているのだ。

例えばカナダのブルース原発では1年間で1971兆ベクレル、
フランスのラ・アーグ再処理施設では
年間1京3700兆ベクレルが海中や大気中に放出されている。
中国も原発の処理水を海洋放出しているが、
その中のトリチウムの量は、
日本の6.5倍にものぼる。
年間の処理水の量を見ると、
中国の紅沿河原発が90兆ベクレル(2021年) 、
泰山第三原発が143兆ベクレル(2020年) 、
寧徳原発が102兆ベクレル(2021年) である。
韓国の月城原発からは液体、気体合わせて
約143兆ベクレル(2016年)ものトリチウムが
排出されている。
トリチウムを薄めて放出すれば安全であること、
今までも放出されていたことをお分かりいただけただろうか。

日本国内の原発では、
1リットル当たり6万ベクレルという
基準以下であることを確認した上で
海に放出している。
今回の日本の放出計画は年間22兆ベクレル。
ケタが違う上に、放出先は太平洋。
それが回り回って朝鮮半島や中国沿岸に届く頃には、
充分希釈されている。

福島原発の処理水は、約1000基の貯蔵タンクに保管されるが、
全容量は137万立方メートル。
2023年2月現在で、
既に132万立方メートルトまで埋まっており、
今年の夏~秋頃には満杯になるので、
今、海洋放出を開始したのだ。

放出にあたっては、トリチウムの濃度を
WHO(世界保健機関)が示す飲料水の基準で、
7分の1程度に薄めるようにしている。
そして、IAEA(国際原子力機関)の査察を経て、
処理水が人間や環境に与える影響は「無視できる程度」だとし、
処理水の海洋放出について
「科学的に妥当」という見解を受けている。
つまり、科学的には安全性が認められている。

なのに、中国と韓国の一部野党はこれを認めようとしない。
というか、認めたくない。
政争の具としたいからだ。
IAEAの科学的見解を無視するのだから、
お話にならない。

トリチウムの放射線は紙1枚も透過出来ないほど弱いこと、
体内に入ってもすぐに排出されること、
韓国含め世界中の原子力発現所から
日常的に自然界に放出されるなど
安全なことは一切触れられていない。
なにより、処理水のことを「汚染水」として報道している。
悪意があるとしか思えない。
自国の処理水については沈黙し、
日本のだけを非難しているのだ。

「説明が足りない」という批判もあるが、
外務省は、科学データに基づき、説明している。
しないはずがない。
要するに、「聞く耳を持たない」のだ。
又は、「理解したくない」。

水産物禁輸だけではなく、
中国・韓国では、塩の買い占めが行われているという。
しかし、中国で流通している塩は岩塩と湖塩がほとんどで、
海洋汚染の影響を受けないのだ。


まして、処理水が太平洋から黒潮に乗って北上し、
津軽海峡を通過して日本海に入り、
対馬海流に逆行して、
韓国・中国の沿岸まで到達すると仮定して、
その時間を考えれば、
今の時点で塩の買い占めに走る理由が分からない。
ほとんど笑い話だ。

福建省泉州市のガイドラインには
「泳いだり海に潜る時間をなるだけ短くしよう」
「野菜や果物、穀物の摂取量を増やすなど、
口に入れるものを多様化して汚染リスクを下げよう」
「雨に濡れないように注意し、
汚染エリアの天気予報や風向きをチェックしよう」
と、科学的根拠が疑わしい文言が並ぶ。
前述したように、海流を通じて中国沿岸に届くには時間がかかるし、
風に乗って放射能が中国に届くことなどありえない。
中国から日本には偏西風が吹いている。
それより黄砂やPM2.5の塵の方が問題だろう。

中国から日本人への電話で、
「汚染された水道水が出てくる可能性があるから飲まないほうがいい」
と、(善意の)アドバイスが入ったりしているという。
海洋流出と水道水にどんな関係があるというのか。
中国の科学教育はどうなっているのか。

あまりにも幼稚な反応に、
中国の民衆には、正確な処理水の情報が伝わっていないことが分かる。
政府とメディアが意図的に伝えていないからだ。
いや、歪曲報道の異常性が分かる。

処理水海洋流出は、
今後30年以上も続く話であり、
中国は、日本産の水産物の禁輸を
これから30年以上も続けるのであろうか。
輸入再開には理由がいる。
今更日本の処理水が安全とは言えないだろう。
つまり、30年間、禁輸は続く

日本の海産物を輸入するのは、
日本製品が良いからであり、
中国人が求めているからだろう。
それを拒絶するというなら、
日本製の質の高い海産物を
中国の民衆は口に出来ないということだ。
かわいそうに。

こうした中国政府の異常ともいえる過剰反応については、
不動産市況が悪く、失業率も高く、
中国の経済がガタガタなので、
中国政府は日本という仮想敵をつくることで
国民の不満をそらそうとしているのでは、
という指摘が定説になっている。

今回のことで、
「脱中国を」という冷静な声が沢山あるのはたのもしい。

○日本はこの機会に本気で脱中国に取り組むべきだと思います。
こんな非常識な国に依存している今の状態は極めて危険です。

○中国はリスクが高いので日本も脱中国の流れになってほしい。
中国へ進出など出店や工場や支社など、
いつどうなるか分からない。

○中国政府はもう落としどころを見つける手立てを失っており、
当面の間は禁輸政策は撤回しないでしょう。
数年は続くとみられ、日本食を扱う商社、メーカーは
事業の縮小、徹底を本気で検討すべきステージに入ったと思います。
中国人は、美味しくない自国の水産物を食べればいいですし、
そのおかげで日本産が適正価格で日本国内に流通するなら、
これほど喜ばしいことはありません。

○これを機会に毅然とした態度で中国離れを推進する
よい機会ではないでしょうか。
日本の各種メディア、マスコミこそ政府を批判するのではなく、
この恥ずべき中国と人民の行いを世界に大々的に報道をしたほうがよいのでは。

○中国進出企業よ。
こんな中国にいつまで未練たらしくしがみつくつもりだ。
中国の没落は既に始まっており、
恒大の破綻を口火にこれから巨大バブル崩壊で大変なことになる。
民衆の暴徒化が迫るなか、不満の吐口として
日本企業叩きが本格化するぞ。
株主からの突き上げが本格化する前に撤退の英断を下すのは今しかない。 

                                            中国からの観光客のキャンセルも相次いでいるという。
これについても、「歓迎」の声が多い。
観光地を傍若無人な中国人に「汚染」されるくらいなら、
来ないでくれた方がいい、
という意見が多いのだ。

科学的根拠を無視して、
しゃにむに反日に利用する中国政府と人民。
国際電話の料金をわざわざ負担して、
日本にいやがらせの電話をかける人々。
これだから、中国は嫌われることを
世界は理解するだろう。

 


短編集『嘘つきジェンガ』

2023年08月29日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

直木賞作家・辻村深月による
詐欺を巡る3つの物語。

2020年のロマンス詐欺

2020年と言えば、コロナ禍が拡大し、
世間が不安に満ちていた時代。

大学進学のため山形から上京した加賀耀太だったが、
緊急事態宣言が発令され、
入学式は延期され、大学の授業も始まらない。
定食屋を営む故郷の実家の売り上げも下がって、
仕送りが半分になるという。
バイトしようにも、仕事先がない。
そんな時、
友人から
「パソコンでできる簡単なバイト
を紹介してもらう。
実際、始めてから分かったが、
そのバイトとはロマンス詐欺の片棒を担ぐことだった。
偽のプロフィールで、
架空の人物(六本木に会社を持つ実業家等)になり、
目星を付けた女性とメールで連絡を取り、
関係が出来た後、
最後は高額な商品を売りつける。
そんなわけだから、
罪悪感にとらわれ、なかなか実績は上がらない。
数多くの女性と接触する中、
未希子という主婦と親密なやりとりを交わすようになる。
ある日、未希子から「助けて」というメッセージが届く。
DVの夫に殺されそうだというのだ。
教えられた住所に耀太が行ってみると、
そこには・・・

五年目の受験詐欺

二児の母、風間多佳子に、ある人物から電話がかかってくる。
「あの紹介は、詐欺だったんです、私たち、騙されていたんです」
それは、5年も前のこと。
教育コンサルタントの「まさこ塾」で、
次男・大貴の中学受験に際して、
「特別紹介の事前受験」という名目で100万円を払って
中高一貫校に合格するよう、
便宜をはかってもらったのだ。
長男は優秀で志望通りに進学したが、
次男は成績が芳しくなく、
藁をもすがる思いで、話に乗ってしまった。
合格はしたものの、
いつバレて退学させられないかと不安な日々だった。
しかし、電話の話では、
実は金は学園に渡っておらず、
実力で合格したのを、口利きで合格したことにして、
金を巻き上げる詐欺だったというのだ。
不合格の人には、返金している。
訴訟団に加わってほしいと言われて多佳子は躊躇する。
夫にも、大貴にも秘密だったからだ。
もし詐欺だったとすれば、
大貴は自分の実力で受かったのであり、
そんなことを告白すれば、
子供の力を信じていなかったことがばれてしまう。
煩悶したあげく、多佳子は夫に打ち明けるが・・・

あの人のサロン詐欺

36歳の引きこもり女性・紡は
「谷嵜レオ創作オンラインサロン」を主宰している。
人気の漫画原作者・谷嵜レオとファンとの
非公式な交流サイトだったが、
今では月1000円の会費を取り、
オフ会を開き、谷嵜レオのファンと交流し、
会員の創作漫画に対する添削相談を受けてさえいる。
しかし、絆は、谷嵜レオではない。
ニセモノだ。

実は、紡はシナリオの専門学校に行ったが、
結局はモノにならず、
事務職などを転々とし、長続きしなかった。
ただ、谷嵜レオの漫画原作が大好きで、
その世界に没入している間に、
谷嵜レオ作品評価分析のサイトを開き、
その内容充実ぶりから、
「あなたは谷嵜レオではないか」という誤解を生み、
肯定した結果、会員が増え、
月1000円の会費を取るようになり、
創作指導さえし、
オフ会まで開催するようになったのだ。

というのも、谷嵜レオは、
ヒット作を連発し、
映画化もされている人気の漫画原作者なのにもかかわらず、
性別も経歴も容貌も謎の覆面作家だったからだ。
オフ会では、ファンたちは、
絆を谷嵜レオと思い、接して来る。
だから、この会合は秘密扱いと口止めする。
ファンたちが注ぐ視線が心地よくなり、
「女性だったんですね」「きれいですね」と
尊敬の眼差しで見られるのも快感だった。

娘が就職もしないで家にいることを心配していた両親も
いつしか絆が谷嵜レオであることを信ずるようになり、
早や5年。

そして、破局が来た。
本物の谷嵜レオが下着泥棒で逮捕されたのだ。
サイトは荒れた。
「あなたは誰?」
「ニセモノだったのか」
とのファンの質問に、
どう対処していいか分からない。
会費を取っているのだから、
詐欺になるだろう。
会員たちの動きが怖い。

ネットに公開された谷嵜レオの写真を見て、
絆は驚愕する。
それは最後のオフ会に来て、隅にいた男性だった。
どうやら、そういうオフ会があるとの噂を耳にして、
偵察にやって来たらしいのだ。
ネットにさらされた住所のアパートを訪ねた絆は、
たまたま帰宅してきた谷嵜レオ本人に会ってしまう
そして・・・

3篇中、これが一番面白かった。

ニセモノが本物より本物らしくなるというアイロニー
コアなファンの行き着く先を示して興味津々。
着地点もなかなかいい。

どの作品も、いかにも現代を反映している。
特にSNSの普及による匿名性が新時代の詐欺を生む。

題名の「ジェンガ」とは、
互い違いに組み合わせたブロックで作った塔から
ブロックを抜いて積み上げていくバランスゲーム。

ひとつ嘘をつくと、
ジェンガが積み上がるように嘘をつき続けなければならず、
バランスを崩すと一瞬で全て崩れてしまう。
嘘の論理を積み上げ、
ジェンガが崩れた瞬間に事件として発覚する。
というのが3篇の作品に共通する。

 


映画『疫起 エピデミック』

2023年08月28日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

台湾で4月14日に公開された作品を
早くもNetflixで配信。

エピデミックとは、
パンデミックよりももっと狭い範囲の
地域で感染症が広がる状況をいう。

台湾の総合病院の胸部外科主任の夏正は、
勤務時間を終えて、
5歳になる愛娘の誕生日のために帰宅を急ぐが、
タクシーの中で急患対応の連絡を受け、
仕方なく病院へと戻る。
手術を終えた夏正が帰宅しようとすると、
病院全体が突然封鎖され始めた。
未知のウィルスによる病気が発生したのだという。
病院内にいた一般患者も病院から出ることが出来ず、
1000人の人々が病院に留め置かれる。
感染を恐れた看護師らは、
部屋に籠城し、医療行為をしようとしない。
上層部にかけあって帰宅組に入れてもらった夏だったが、
感染患者の手術の執刀を申し出る。
しかし、体温が上がり、夏自身も感染の恐れがあった・・・

これに並行して、
国境なき医師団に参加しようとする研修医と看護師の恋、
感染源を突き止めてスクープを取ろうとする記者、
夏の忘れ物を届けに来て、
病院封鎖に巻き込まれた人の良いタクシー運転手、
看護師長の母に会いに来て、
隔離のため会えないまま母の死を迎える幼い少女の話
などがからむ。

疫禍発生により閉鎖された病棟を軸とする群像劇で、
新型コロナの話かと思えば、
そうではなく、
2003年のSARS(新型肺炎)の時に、
実際に起きた総合病院封鎖を元に作られた作品。
しかし、観る側はどうしても新型コロナと重ねてしまう
というか、それを意図して作られた作品だろう。
未知の病気に対する恐怖は同じで、
新型コロナの時も
死を省みない医療従事者の行動が注目されたが、
それと全く重なる。
絵空事のパニック映画ではなく、
この数年間の不安に満ちた生活の記憶が蘇る。

未知のウィルスへの恐怖。
感染のリスクにさらされ、
システムが崩壊しつつある院内に残された人々が、
自分を守るべきか、それとも他人を救うべきなのか悩む姿。
感染のリスクを冒さねば職務が果たせない
最前線での医療従事者の苦悩が
見事に描かれる。
特に帰宅出来る夏が、
感染妊婦の胃穿孔と帝王切開の同時手術にあたり、
医師の安全優先を言い募る会合の様子を廊下で聞き、
迷った末に帰宅を諦め、
手術に名乗りをあげる場面が感動的。
また、研修医がSARSに感染して隔離される中、
他の患者の危機を救うべく頑張る姿も胸を打たれる。
研修医の恋人の看護師が
感染を恐れて立てこもっている看護師たちのドアを叩き、叫ぶ。
「隠れてないで出て来て、仕事してよ。
人の命を救うのが仕事なのに、何が看護師よ。
医療に危険を付き物よ。
私もウィルスは怖い。
それでも人助けをする。
命を救うのが仕事だもの。
仲間は不眠不休で闘っている。
大勢の病人が救いを求めているのよ。
部屋にこもって何もしないなんて。
隠れて恥ずかしくない?」

今、観ることに意味のある作品である。

監督は林君陽(リン・ジュンヤン)、
主人公の夏正を王柏傑(ワン・ポーチエ)が、
記者を薛仕凌(シュエ・シーリン)、
研修医の李心妍をクロエ・シアン
看護師・安泰河をツェン・ジンホアが演ずる。
脚本家のリウ・ツンハンは、元々ER(救急外来)の看護師。

先の台北映画祭で最優秀監督賞、最優秀主演男優賞を獲得

 


バスケ日本1勝!

2023年08月27日 23時30分00秒 | 様々な話題

バスケットボール男子・ワールドカップ1次リーグで、
日本代表がフィンランド代表に逆転勝利
初めて欧州勢の壁を破り、
オリンピック、ワールドカップでの勝利をあげた。

日本は世界ランク36位、フィンランドは同24位。
格上の対戦相手に第3クォーター(Q)までリードされたものの、
最後の4Qで、
神がかり的な逆転をした。

試合冒頭、最初の3分で7対5とリードすると、
そのままの勢いで1Qは22対15と7点リード。
2Qはフィンランドが実力を発揮、
14対31と大量リードを許し、
36対46と、10点のビハインドで前半戦を終了。
一時18点差を許し、
2日前にやはり格上(11位)のドイツ相手に
3ポイントシュートが決まらず、
18点差で完敗した記憶が蘇る。
しかし、ドイツ戦でも
後半は勝っていたので、
期待が高まる。

3Qは27対27で、点差は縮まらず、
3Q終了時、63対73で10点ビハインドのまま。
一時は18点差をつけられ、
あ~このまま今度も負けるのか、
と気の早い人はを予想。

しかし、この後がすごかった。
4Qが始まると、
富永、河村の3ポイントシュートが嘘のように決まり、
比江島、ホーキンソンらの活躍で、
残り4分35秒に逆転すると、
更に点を加え、
終わってれば、
98対8810点差で勝利
4Qだけで35対15と20点差をつけたのだ。
10点ビハインドから10点のリードへ。
まさに、「神がかり」
これが日本の底力。

東京オリンピックで1勝も出来なかった屈辱を見事に晴らし、
五輪、世界選手権で初めて欧州勢(過去11戦全敗)から初勝利をおさめ、
2006年大会のパナマ戦以来、17年ぶりのW杯勝利を飾った。
次は29日に、世界ランク3位のオーストラリアと対戦し、
勝てば、1次リーグを突破し、2次リーグに進出する。

我が家は娘が無類のバスケファンで、
仕事で行ったBリーグの試合にはまり、
地元千葉ジェッツの試合には、
船橋アリーナまで電車を乗り継いで出かける。
カミさんと私も巻き込まれる形でテレビ観戦。
欧州の壁は固いと思われていたので、
今度の勝利はことの他嬉しい。

で、今日は予定を変更して、
バスケ試合を掲載した。

 


『コンビニオーナーになってはいけない』

2023年08月25日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

衝撃的な題名
帯に
「これは現代の奴隷制度なのか?」
と更に衝撃的なキャッチコピーが続く。
著者が「コンビニ加盟店ユニオン」だから、
加盟店側の立場に立って書いているからだろう。

コンビニ経営の問題点は多いが、
一番重要なのは、その利益配分方法
粗利(販売価格と仕入れ価格の差)の60パーセントほどが
ロイヤリティ(チャージ)として本部に徴収される。
(セブンイレブンの場合、56~76%で粗利額ごとに率が変わる)
消費期限の来た商品の廃棄分は、店舗の負担(営業費)。
ならば、食品ロスを出さないように調整して仕入れるはず。
なのに、本部推奨品として強制的に仕入れさせられる。
販売ロス(客が買おうとした時、商品がない)を防ぐためだという。
仕入れ品、つまり在庫(陳列品)が少ないと、本部から叱責される。
契約更改にも影響する。
仕方なく、配送を受け入れる。
消費期限が過ぎ、廃棄が出る。

一つのコンビニで、廃棄は年間500万円といわれる。
その分、売上原価が減り、粗利が増えるので、
その60%、300万円が
本部の収益増加になる。
おかしくないか。

通常スーパーがやっている見切り販売(値引き販売)も許されない。
仕入れた分だけロイヤリティーが生ずるから、
商品が残ろうが、廃棄されようが、本部は全く痛くも痒くもない。
むしろ廃棄が出た方が本部の実入りは増えるのだ。
中には廃棄を出すよう目標化されていることさえあるという。

(その後、裁判になり、
 見切り販売は認められ、
 廃棄の15パーセントは本部が持つことに改められた)

更に追い打ちをかけるのが、
24時間、365日営業という形態。
「セブンイレブン」は、朝7時から夜11時まで、という意味で、
初期はそのとおりの営業時間だったが、
今は24時間営業が強制されている。
確かに、深夜でも、売れれば、もうけは出るが、
その間の人件費は店舗持ちだ。
深夜営業はほとんどの加盟店にとっては赤字だが、
やめると契約違反を問われる。
本社の社長は「やめる気はない」と言う。
本部からすれば、売れて、
粗利益が発生する限り利益となるのだから、
その間の人件費がいかにかかろうと、知ったことではない。

コンビニはきついから、アルバイトが集まらない
最近では、外国人に頼る有り様だ。
24時間営業で人が足りず、
あるいは人件費を節約するため、
家族に運営を手伝ってもらう場合がある。
オーナーで、店長も兼ねた場合はほとんどがそうだ。
しかし、無料あるいは格安の人件費で
家族に長時間働いてもらう状態が続くと、
家庭が崩壊してしまう
シフトが満たされず、
家族が交代で出なければならいと、
家族の団欒も休みも奪われる
病気でもしなければ休めない。
いや、病気でも、お店は開けなければならない。
台風の時も開店していなければならず、
客など来ないのに、店を守る。
東日本大震災の津波の時も、
オーナーはコピー機の上で浸水に耐えたという。
閉めてはいけない契約だからだ。
人命より、商売優先
まさに「現代の奴隷制度」だ。

コンビニオーナーは独立した経営者という扱いなので、
労働基準法の適用はない
フランチャイズ制が法律逃れとも言われている。

という話を様々な実例を上げながら、
問題点を上げるのが、この本。

ならば、やめればいいじゃないか、
と言われそうだが、
フランチャンズ制の場合、
途中契約解除は違約金がかかる。
だから、契約期間の間だけでも続けなければならない。
契約満了でやめても、
開業資金が無駄になる恐怖がある。

開業資金はチェーンによって違うが、
最低150万円。
ストアスタッフ募集や許認可申請などで50万円ほどかかり、
店長研修受講時の交通費・宿泊費、2、3ヶ月程度の生活費も必要。
内装設備工事費用をオーナーが負担するプランの場合、
約1000円ほど必要。

そんな苦労をして、オーナーにいくら残るのか、
収入が多ければ、苦労するのは仕方ないのでは、
とも思うが、
この本では、オーナーの実入りについては書かれていない。
他の記事を読むと、
オーナーの年収は平均で600万~700万程度だという。
大きな店舗ならもっと増え、1000万円を越える場合もあるし、
小さな店舗なら、その逆に、収入は少ない。
年収600万なら、平均以上というが、
実は、オーナーとその家族の分も含めてである。
その結果、さっきも書いたが、家族の団欒は奪われ、
夫婦がすれ違い生活になる。
無理をして体を壊してしまうと経営を続けられなくなる。

店長を雇えるような場合、
現場管理は店長に任せられるため、
ある程度の余裕が生まれる。
しかし、なかなか信頼できる店長の獲得は難しい。
店長の給料は店舗持ちだ。
お金がからむので、
監視は欠かせない。
あるコンビニ店員経験者の話では、
ほぼ毎日、1万円ほどの不足が出るという。
それでも売上高はある(レジで明瞭)から、
その分を本部に送金せざるをえない。

セブンイレブンの場合、
毎日の売上を本部に送金するのだという。
加盟店の会計は加盟店が行うのではなく本部が代行する。
オーナーはこの制度以外では決済できない。
加盟店が給料等、月々のやりとりに充てるのは「月次引出金」として
所定の算式で本部に稟議を上げ、承認を受けた後、
口座に振り込みされる。
オーナーなのに、自店のお金が自由に出来ないのだ。

コンビニといえども、生身の人間が運営している。
10年以上1日も休まず店舗運営している人、
パックヤードにダンボールを敷いて
細切れの仮眠をとりながら、
何日も続けて店に立っている加盟店オーナーもいる。
厚生労働省の調査では、コンビニオーナーの死亡率は、
他に比べ2~3倍高いという。

ブラック企業職種ベスト3というのがあり、
一つ目が「小売り」で、コンビニやアパレル。
二つ目が「飲食」で、ファミレス、カフェ、居酒屋。
三つ目が「塾」だという。
セブンイレブンは、2015年にブラック企業大賞を受賞している。
しかし、巨額のCMを出している関係か、
マスコミはなかなか報じない。

以上で分かるように、
加盟店の苦労で、
本部が儲かる仕組みだ。
その結果、
たとえばセブンイレブンの会社としての収益は、
2018年の場合、
本部の運営費、人件費等全部差し引いた、
純利益で1667億円もある。
そのほとんどは加盟店が本部に支払するロイヤリティ=チャージ。
通常の商品の仕入原価は発生せず、
粗利率が90%を超えている。

昔の藩に対する年貢
戦前の小作人からの収奪を想起する。

これだけ儲けているのなら、
年に一度、売上高に応じて、
店舗に還元したらどうかと思うが、
そういう話は聞かない。
2万店に100万ずつ還元しても、
200億円。
純利益の1割ちょっとだ。
本部が莫大な利益を上げているのは、
加盟店の苦労の上なのに。

それでも全国にコンビニは増え、
酒屋や雑貨店を廃業して、
オーナーになる人たちは多いのだから、
それなりの実入りはあるのだろう。

物事には何でも光があれば、影もある。
ただ、影に入ってしまった人を救うのは、
企業の責任だろう。
その点で、コンビニを指導する本部員の言動は、ちょっと悲しい。

たとえば、
「シフトが組めなくなるので、
子どもはつくらないように」と言われるという。
人権問題ではないか。
「夫婦で12時間ごとに担当すれば、
人件費が減り、収入が増えるよ」と言われたこともある。
家庭崩壊の推奨だ。
従業員が殴られたりした時、指導員はこう言ったという。
「オーナーや従業員が怪我しようと、死のうと、
セブンイレブンには関係がないの」

末端の指導員の所業は、その企業の性格を意味する。
指導員は、まるで悪代官のように見える。
本部はその実態を知っているはずだから、
改善したらどうか。
鈴木敏文さんのような立派な経営者が始めたビジネスモデルなのだ。
改めるべきは改められないのか。

アメリカで始まったコンビニエンスストア。
ヨーロッパでは全く根付かず、
アジアで花開いた。
その中でも、質において日本のコンビニは群を抜いている
何事も工夫し、改善し、より良いものを目指す日本人気質に合っていたのか。
オリンピックなどで取材に来日した記者たちが驚愕している。

便利なコンビニだが、
実態を知ると、
気軽に利用しては悪い気がして来る。
そんな思いにさせる本書だった。