[映画紹介]
「シンペイ」とは、作曲家の中山晋平のこと。
明治に生まれ、大正・昭和を生き、
今も歌い継がれる童謡、歌謡曲、音頭、民謡まで
幅広いジャンルの約2000曲を残した
中山晋平(1887~1952 明治20年~昭和27年)の生涯を、
彼の音楽とともに綴った物語。
信州から上京して大学教授・島村抱月の書生になり、
東京音楽学校(現・東京藝術大学音楽学部)で学び、
小学校で教鞭を取るかたわら、
島村抱月が松井須磨子らとともに旗揚げした「芸術座」に参加。
1914年(大正3年) 、
トルストイの「復活」公演の劇中歌「カチューシャの唄」を作曲。
松井須磨子の歌唱によって大流行となり、
一躍有名になった。
翌年公演したツルゲーネフの「その前夜」の
劇中歌「ゴンドラの唄」も大人気で、地位を不動のものにし、
野口雨情、西條八十らと組んで数々の歌を生み出す。
自分の音楽を理解してくれる敏子と結婚し、
子供が出来なかったため、
二人の養子を迎えて幸せに暮らす。
敏子が亡くなった後は、
既に関係のあった鹿児島の芸者歌手・喜代三と再婚するが、
やがて、戦火に巻き込まれ・・・
という生涯をつづる。
映画の中に登場する歌は、
「これも中山晋平の曲だったのか」「あれも・・・」
と驚くほど。
映画に出て来なかった曲を含めて、主な曲をあげると、
「シャボン玉」「てるてる坊主」「あめふり」「雨降りお月」
「証城寺の狸囃子」「こがね虫」「あの町この町」「背くらべ」
「まりと殿様」「砂山」「肩たたき」「兎のダンス」
「カチューシャの唄」「ゴンドラの唄」「船頭小唄」
「波浮の港」「出船の港」「東京行進曲」「東京音頭」
など、日本人のDNAに響く歌の数々が胸を熱くする。
「シャボン玉」の背景にあった野口雨情の悲話、
「東京行進曲」の歌詞「いっそ小田急で逃げましょか」
が生まれた経緯、
「東京音頭」の前奏が「鹿児島小原良節」から採ったなど、
初めて知る話が沢山。
黒澤明監督の映画「生きる」の中で
「ゴンドラの唄」が歌われたことを知っていたのか、
と思って調べたところ、
1952年12月2日に「生きる」を映画館で観た翌日に倒れ、
12月30日、入院先の熱海国立病院で死去。
死因は膵臓炎であった。
65歳没。
死去の際、自ら作曲した「あの町この町」を口ずさんでいたという。
告別式は翌年1月16日に築地本願寺で、
日本ビクターの社葬として行われ、
オーケストラによる「哀悼歌」、児童合唱団による「てるてる坊主」、
最後には「カチューシャの唄」が歌われた。
墓所は多磨霊園。
死後50年を経て、
2002年12月31日(死後50年)著作権消滅。
晋平役は映画初主演となる歌舞伎俳優・中村橋之助。
18歳から亡くなる65歳までを演ずる。
野口雨情役は三浦貴大、
西條八十役は渡辺大、
島村抱月役は緒形直人、
妻の敏子役は志田未来。
佐藤千夜子役の歌は、
当時のものの歌唱風に
吹き替えにできなかったのか。
監督は神山征二郎。
題材的に日本人の心情に響く内容で、
端正に作られている。
5段階評価で「4」としたいところだが、
演出、演技共に超古臭いので、
0.5点減点して、「3.5」。
TOHOシネマズ日比谷他で上映中。