『稜線の路』には、全体の結末とは切り離して、心に留めておいてよい名文句がある。つぎのようなものである。《病者の内的優越》とでもいったものであろうか。
「私は、パリに来る度に、確かめるのですけれど、私自身の家族内にいたるまで、自分を抑制しようと努めることさえ、もう、されなくなっています。まるで、生活の重圧が、あまりに強く、あまりに耐え難くなってしまって、心という心が破裂しているみたい。」
「病人たちの事情は、ちょっと違います。どんな場合でも、彼らはもっと護られ、もっと防御されています。彼らの病気そのものが、彼らと世の出来事との間の、一種の幕みたいなものなのです。でも、ここでは… あなた方は、あらゆる力に、あらゆる酷い流れに、引き渡さていて、この流れは、世界の上に荒れ狂っています。あなた方は、保護されていません。」
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