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(アリアーヌ) 自分のことは認識しているわ。そのためにかなり身を削ったもの。
(フィリップ) でも、それでもだよ、もし万一、きみが思い違いをしているとしたら… それは実験をする労に価するのではないかな?
(アリアーヌ) どんな実験?
(フィリップ) 単純に、普通の生活を再開するという実験だよ。
(アリアーヌ) ちょっと危険すぎるわね。けっこうよ。
(フィリップ) でも、もう一つの実験は ― きみが選んだ実験だけど ― それは危険が無いのかい? 聞いてよ、アリアーヌ、きみの到着以来、ぼくたちはまだ、落ち着いたひとときを持っていない。きみの亭主は居たし、きみが庇護している女性たちの一人だって居た…
(アリアーヌ) フィリップ、その言葉は嫌いだって知ってるでしょう。
(フィリップ) ぼくの考えの根本をきみに言うことを、ぼくは決心した。
(アリアーヌ) そのことに関して言い続けることは、勧めないわ。
(フィリップ) どうして?
(アリアーヌ) あなたは気づいている、(つづく)
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(つづき)じぶんが何も私に教えることができないということを。ずっと前から私は、あなたが私に言いそうなことはすべて考えていたわ。
(フィリップ) それでも、きみが知ることのできないことがあるよ。
(アリアーヌ) どんなこと?
(フィリップ) いまの場合、ぼくは具体的なことをほのめかすことはしない。ジェロームと関係していることか、そうでないか? ぼくはそれについては何も知らないし、それはぼくには関係ないことだ。だけど、ぼくが確かめた、深刻に思えることは、悲しみの、鬱状態のことで、きみが不在の時にあの坊やがその状態で生きていることなんだ。苦痛なのでぼくが触れたくない、いくつかの経済的問題のことは話さないが。
(アリアーヌ) 何を言いたいの?
(フィリップ) ぼくはきみたちの約束ごとは知らない。ぼくは知らない、きみが彼に収入を保障しているのか…
(アリアーヌ) とんでもないことを!
(フィリップ) けれども、それが最善の解決だと思うよ。それにしても、ぼくが衝撃を受けるのは、ほとんどあさましいと言える経済根性で、その根性は機会ある毎に証明されている。いろいろあるが、劇場で、ぼくたちが偶々一緒に行くレストランで、服をあつらえるときのやり方で。まったくひどいものだよ。
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(アリアーヌ) でも唖然とするわ… 彼の洋服箪笥は不充分でまずい状態だとは気づいているけど、私は、それは投げやりとぞんざいさのせいだと思っていたの。
(フィリップ、断固として。) それは間違いだよ。ジェロームは、ぼくには、家族が田舎に居る学生たちを思わせる。彼らは、どうやって月毎の細々とした為替にいたるまで維持しようかと、胸を締めつけられる思いで思案しているんだ。
(アリアーヌ) それは理解できないわ。ジェロームは小切手帳を持っているのよ。彼はとてもよく知っているわ…
(フィリップ) きみがぼくの考えの根本を知りたいのなら言うけど、ジェロームは自分が結婚しているとは感じていないんだ。遠くにいる友だちに扶養されているように感じていて、それが彼には気に入らないんだ。もしきみたちが一緒に生活していれば、とても違っているだろう… ああ! 事は全く論理的だと言ってはいないよ。それでもやはり、至極無理もないことだよ。
(アリアーヌ) 彼は、誰が身近で誰が疎遠か、一度も何も私に言ったことはないわ…
(フィリップ) もちろんだとも! それは多分、自白されることはない事柄だよ、おそらく。(沈黙。) ぼくがきみに粗暴に思われるなら残念だ。きみは一度も、彼に彼自身の自由を返すことが、きみの義務かもしれないとは、考えたことはないのかい?
(アリアーヌ) ねえ、よく知っているでしょ、四年前に…
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