奇想天外、無知になって楽しめるコメディの佳作
日本人の作る喜劇(コメディ)はウエットだ。
昭和初期の、斉藤寅次郎時代から何か喜劇と言えどもウエットさを感じる。
しかし、アメリカの喜劇にそれは無い、とにかく映画初期のスラップステック時代から、実にあっけらかんとしている。
唯一路線が違っていたのは、チャップリンだろう。
彼はスラップステック以後、ヒューマニズムを中心とした喜劇を作り上げた。
その彼と対照的だったのが、バスター・キートンである。
彼は終始一貫して、スラップステック的喜劇を作り上げていた。
近年に近づく毎に、映画の尺は長くなってきている、そのような状態で、人を笑わせる映画を作ることは困難である。
スラップステックも十数分と言う、短い時間だから笑えるものの、これが1時間以上続くともう笑いはとれない。
そのなかでも、もう古い映画になるが、傑作コメディがあった、アメリカの「ポリスアカデミー」である。
私は封切りで観たが、その映画の面白さに心から笑えた。こんな映画が存在するのか、と不思議にも思った。
そんな「ポリスアカデミー」も続編が多く作られたが、最初の作品を撮った監督が死去し、監督が変わってからは徐々に面白さも消えていった。
未だあれを超える喜劇は製作されていないとおぼしい。
前書きが長くなってしまったが、本日紹介するのは、久々に面白いと言える日本の喜劇「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」である。
ストーリーを紹介しておこう。
警察学校を至上最低の成績で卒業した、正義感だけは強い菊川怜二。
彼はある日署長から、潜入捜査官、通称「モグラ」に任命される。
或る暴力団の麻薬ルートを暴き、暴力団の会長を逮捕することが彼の任務だ。
上手く暴力団へ潜入した怜二は、本業の潜入捜査よりも、他の暴力団との抗争に巻き込まれてしまう。
その中で同じ組の日浦と言う幹部に、彼は大変気に入られ、義兄弟となる。
様々な困難を回避しながら、潜入捜査を行なう怜二だったが.........
原作は漫画であると言う、私はその漫画を見たことが無い。
監督は三池崇史、私はこの監督の映画を何本か観ているが、正直好きな監督ではない。
脚本は宮藤官九郎、あの朝の連ドラ「あまちゃん」の脚本家と言えば、お分かりの方も多いのではないだろうか。
私は宮藤も、正直好きでは無い。
「あまちゃん」は面白かったが、彼が監督した「少年メリケンサック」はつまらなかった。
しかし、この映画は二人の呼吸が大いに合ったようで、とてもナンセンスな喜劇に仕上がっている。
兎に角、理屈でこの作品を観てはいけない、目の前に繰り出されるギャク(最近ギャクとは面白い一言とか面白い所作に対して使うが、もともとは映画で言うシークエンスの面白さをギャクと言うのが定説である。)の数々を、無知になり笑うことだ。
そこに原因や理屈等存在しない、でもそれが良いのだ、それが喜劇なのだ。
特に足を撃たれた日浦が、復活してくるシークエンスは理屈抜きで面白い。
久しぶりに観た、ナンセンス喜劇の佳作である。
是非観ることをお勧めする。
2013年日本製作、2014年日本公開、カラー、130分、監督:三池崇史
日本人の作る喜劇(コメディ)はウエットだ。
昭和初期の、斉藤寅次郎時代から何か喜劇と言えどもウエットさを感じる。
しかし、アメリカの喜劇にそれは無い、とにかく映画初期のスラップステック時代から、実にあっけらかんとしている。
唯一路線が違っていたのは、チャップリンだろう。
彼はスラップステック以後、ヒューマニズムを中心とした喜劇を作り上げた。
その彼と対照的だったのが、バスター・キートンである。
彼は終始一貫して、スラップステック的喜劇を作り上げていた。
近年に近づく毎に、映画の尺は長くなってきている、そのような状態で、人を笑わせる映画を作ることは困難である。
スラップステックも十数分と言う、短い時間だから笑えるものの、これが1時間以上続くともう笑いはとれない。
そのなかでも、もう古い映画になるが、傑作コメディがあった、アメリカの「ポリスアカデミー」である。
私は封切りで観たが、その映画の面白さに心から笑えた。こんな映画が存在するのか、と不思議にも思った。
そんな「ポリスアカデミー」も続編が多く作られたが、最初の作品を撮った監督が死去し、監督が変わってからは徐々に面白さも消えていった。
未だあれを超える喜劇は製作されていないとおぼしい。
前書きが長くなってしまったが、本日紹介するのは、久々に面白いと言える日本の喜劇「土竜の唄 潜入捜査官REIJI」である。
ストーリーを紹介しておこう。
警察学校を至上最低の成績で卒業した、正義感だけは強い菊川怜二。
彼はある日署長から、潜入捜査官、通称「モグラ」に任命される。
或る暴力団の麻薬ルートを暴き、暴力団の会長を逮捕することが彼の任務だ。
上手く暴力団へ潜入した怜二は、本業の潜入捜査よりも、他の暴力団との抗争に巻き込まれてしまう。
その中で同じ組の日浦と言う幹部に、彼は大変気に入られ、義兄弟となる。
様々な困難を回避しながら、潜入捜査を行なう怜二だったが.........
原作は漫画であると言う、私はその漫画を見たことが無い。
監督は三池崇史、私はこの監督の映画を何本か観ているが、正直好きな監督ではない。
脚本は宮藤官九郎、あの朝の連ドラ「あまちゃん」の脚本家と言えば、お分かりの方も多いのではないだろうか。
私は宮藤も、正直好きでは無い。
「あまちゃん」は面白かったが、彼が監督した「少年メリケンサック」はつまらなかった。
しかし、この映画は二人の呼吸が大いに合ったようで、とてもナンセンスな喜劇に仕上がっている。
兎に角、理屈でこの作品を観てはいけない、目の前に繰り出されるギャク(最近ギャクとは面白い一言とか面白い所作に対して使うが、もともとは映画で言うシークエンスの面白さをギャクと言うのが定説である。)の数々を、無知になり笑うことだ。
そこに原因や理屈等存在しない、でもそれが良いのだ、それが喜劇なのだ。
特に足を撃たれた日浦が、復活してくるシークエンスは理屈抜きで面白い。
久しぶりに観た、ナンセンス喜劇の佳作である。
是非観ることをお勧めする。
2013年日本製作、2014年日本公開、カラー、130分、監督:三池崇史