潮見浩著。
先日訪れた秦野市の桜土手古墳資料館で手に取った「技術の考古学」。もう少しじっくり読みたいと思い、川崎市の図書館にあるか検索してみた。
すると、資料館で見たのは1988年版で、2000年に改訂版が発行されていた。
せっかくだから改訂版を読んでみることにした。
加筆修正は最低限にしていると書かれていたが、じっくり読んでみてやっぱり面白い!
例えば、打製石器と磨製石器。
どうやって作ったか…あ、興味ない?そうでしょーねー、普通は学校で習った分でお腹いっぱいですよねー。
ところが私、この本を読んだら、学校で習ったことがむしやしない程度にもならなかったことに気が付く。
関東だと、石器は黒曜石を使うことが多いので黒いガラス質(黒の半透明)と言う印象だ。
ところが著者は広島大学教授なので瀬戸内海沿岸の遺跡を引き合いにも出しているから、サヌカイトの石器の分布にも触れている。
私、サヌカイトって石琴で甲高い音がする石と言うことしか知らなかったかも…。
ところが読み進めて行くと、学生時代に考古学の授業を思い出して来た。
その授業は、同じ時間に資格取得のための授業があったが、次年度履修すればいいやと振ってまでどうしても履修したかった考古学の授業だった。
結果、同じ学科からの履修者は私だけ。それでも本当に面白かった。
内容はこの本の内容と重なる部分が多く、石器、土器、金属器、住まい、貝塚、古墳などの製造方法から遺跡、地域ごとの特徴、伝播など。
考古学を専攻している学生が私のノートを見て「S先生のその授業のノートをコピーさせてくれ」と言われたほど、概論として充実していた。
この本は、イラストで図解していることが特徴で、石をどの方向から力を加えて割り、どのように鋭利な石器にしていくか手順が詳しい。
そして著者が住まう中国地方だけではなく、全国の発掘調査で出土した物品を引き合いに出している。
私が学生時代に学んだ授業でも同じような解説があって、ノートにびっしりと書いた記憶がある。
骨角製品としての釣針の作り方、鉄や青銅の加工法もなんとなく習った記憶がある…。
後書きに著者は、最初に本を出してから10年も経つと新たな発掘調査や研究で改訂が必要になったので改訂版を作成したと書いていた。
そらなら2010年頃にも改訂版を出版されているかと思ったら、2006年にお亡くなりになっていた。
非常に残念!
日本は技術立国と言われているけれど、すでに古代から中国などから伝播した技術に工夫を加えて、自分たちの新しい技術として取り入れている。
そして、この本の続編と言うべき、現在までに分かっている古代の技術を総合的に紹介した本に出会いたいと思った。
古代史に興味があって、技術史にも興味があれば、面白く読むことができる1冊だ。