日渡早紀著。
「ぼくの地球を守って」シリーズの最新巻です。
中途半端な5巻でレビューを書くのは理由があります。
「1/4のたわごと」の最終巻になるからです。
意味が分からない方が大部分ですので、ちょっと説明します。
以前、漫画雑誌と言えば広告収入が主な資金源でした。
その広告枠が縦に帯状にありまして、それがこの作品の掲載雑誌の場合、誌面の縦1/4スペースでした。
その1/4スペースによってコミックになった時にスペースが削られるので、日渡さんの場合は「1/4のたわごと」という近況報告などが書かれていました。
じつは私の場合、本編も好きでしたが、この1/4のたわごとが好きだったこともあります。
いまや、白泉社のコミックくらいでしかこのスペースを見ることができません。
ここが好きだというファンもいると思うのに…。
漫画家からしたら、本編の他にこのスペースを埋めるのが大変という方もいらっしゃるのでしょうけれど、残念だなぁ。
とくに日渡さんの場合、雑誌掲載時に人物の制服を間違えてしまって、男子高校生に女子高生の制服を着せてしまい、コミックになってからこの部分を描き直したことをこのスペースに書いていました。
そう言った作画の裏話等を知ることができて楽しかったのになぁ。
いまや漫画を描くにもデジタル化によって人員削減をしているし、男女の制服間違えを直すのも格段に簡単になっていることでしょう。
これも時代の流れ、未来の読者は、「このスペース何?」と感じるのでしょうね。
まだ印刷物としての漫画が存在しますが、あと10年もすれば、漫画雑誌がまだ印刷物なのかどうかも怪しいです。
そのうち「紙のコミックは、博物館で展示されているのを見たことがある」という世代が出てくるかもしれません。
またコミックの広告スペースのエッセイを専門に研究する研究者が登場してくるかもしれません。
なにしろ、このスペースを漫画家が自由に埋めていた時代は短くせいぜい40年くらいですから。
さて、本編の感想。
このシリーズは相変わらず全巻読んでいないと話の展開がとても分かりづらいです。
そして東京タワーへの執着…。
東京スカイツリーが出てこないのです。
一種の精神世界を描いているので、SFファンタジーとして楽しめる方なら面白いけれど、精神世界にどっぷりはまっている人にはどう映るのだろう?と感じます。
私は最初の「ぼくの地球を守って」は面白く読めたけれど、2作目「ボクを包む月の光」、3作目「ぼくは地球と歌う」と進むに連れて気持ちは少し冷めてしまいました。
たぶん時代が進むに連れて、表現方法に制限が出ているのだろうと感じる場面、ストーリー展開が見受けられるからです。
それと今回未来路(みくろ)くんが、大変身します。
色白の暗い(大人しく無口)印象の未来路くんがコレですか…という印象です。
元々このシリーズのストーリーテラーがハッキリしない群像劇です。
それが2作目からは、輪(りん)と亜梨子(ありす)の夫婦かと思いきや、2人の子ども蓮(れん)などになります。
大人の世界、子どもの世界、前世の世界の人間関係が複雑に入り乱れています。
それがさらに前世の世界の親子関係が絡み始め、もう群像劇と言っていいのか分からなくなってきました。
じゃあ何か?と聞かれれば、やはりSFファンタジーの群像劇としか言えません。