数学教師の書斎

自分が一番落ち着く時間、それは書斎の椅子に座って、机に向かう一時です。

あまり見ないテレビドラマですが・・・

2023-09-27 04:52:27 | 読書
 普段あまりテレビドラマは見ないのですが,このところNHKの朝ドラ「らんまん」を録画してみています.基本観たいテレビ番組は,録画して,コマーシャルを飛ばしながら観ることで,番組によっては1時間のものが40分くらいで観られるので,よくこうしています.しかし,ドラマはあまり観ないのですが,この「らんまん」は観始めると,今までのテレビのドラマと違い,番組全体が,何とも言えない気分良さを醸し出すので,ついつい引き込まれます.「らんまん」にはその意味が込められているのでしょうか.
 
 そこで,早速牧野富太郎の自伝があるというので,写真の本を買い,読んでみました.今週でこの番組も終わるようですが,実際の自伝を読みながら史実と番組を比べていくと,番組としての趣旨も見えてきたりしますが,史実との違いなども浮き彫りになりますね.この自伝では,何回も同じ内容の文章が掲載されつつも,それでかえって私の記憶に残ることになり,こういう編集もありかなと,読後は新たな気持ちで内容を振り返ることができます.自伝では,大学を退職する際の東大理学部長が寺沢寛一で,数学や物理を齧ったものには「寺寛(てらかん)」で親しまれている,物理数学の本を思い出させてくれます.私が学生時代でもその分野の古典的な本でしたが,座右の書としておられる方もいるのではないでしょうか.

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 この本は,私が生まれた年に発行されていますので,今は確かに古典ともいうべきかも知れませんが,中身は読みやすく,工学系で数学を使う学科の学生や,物理系の学生にも今でも十分に使える本だと思います.写真の本は活字もきれいで,製本も上製本でしっかりしていて,いまではなかなか見られない装丁の本です.寺沢寛一は長岡半太郎を師匠にもつ物理学者ですが,当時(牧野富太郎が大学を辞職した当時:昭和14年)大阪帝国大学が創立されて,理系大学の色彩が強い大学で,当時の物理学科には長岡半太郎の弟子たちがその創設に尽力したようです.そういえば,湯川博士も確かその阪大で,中間子の理論を構築されたようですね.このように阪大は理系の色彩が強く,歴代の総長もほとんどが理系の学者で,哲学者の鷲田清一だけが文系の総長だったように記憶しています.また,今の総長の西尾先生は私の卒業した学科の先輩ですが,この総長の出身学科の同じ研究室の先輩の川合先生も阪大の総長を務めていました.この二人の先輩の恩師の長谷川先生が実は阪大出身で,私も学生時代,この長谷川先生の講義を受けていました.いつも黒板4面(上下する4枚の黒板)にひたすら書いていくので,それをノートするのが大変で,教科書はないので,ひたすらそれを書き留めては,後で読むというものでした.教科書がないというのは,それだけ最先端な内容であり,専門の講義はほとんどがこういう形式でした.
 本を読むことで,何かしら関係性を見出すことでそこに面白さも垣間見れるのは,今の私の読書の一つの楽しみ方でもあります.

高木貞治,岡潔,ガロア,広中平祐・・・

2023-06-06 10:40:26 | 読書
 前回紹介した

では高木貞治に関する記述に関して,その恩師や明治初期の日本の数学事情が詳しく書かれていますが,その他の高木の記述に関しては
に網羅されていると思われます.この年になると,読んだ本の内容は言うに及ばず,読んだことも覚えてない状況です.しかし,それにはもう一度読み返すことで,新たな感動も覚えるという点では,また愉しからずやです.まあ最近はそんな考え方もしています.
を日本語訳した
の第2巻の方にも高木貞治のことは書かれています.尤もこの原著の高木の記述内容に関しては,昔,数学セミナーに立教大の本田先生が書かれた高木貞治の内容をそのまま英語訳したのではと思われるのですが.この本を訳された蟹江先生には,そのことも翻訳されるときにお話しして,数学セミナーの記事のコピーもお渡ししました.意外なことに,数学者の逸話なども史実を確かめなく,言い伝えだとか,誰かが書いたことを引用することからいつの間にやら定説になったりすることがある様です.例えば,数学者ガロアに関しても
では,そうした史実とは違う点に自ら確かめて書かれたことがあり,梅村先生の人柄がにじみ出た名著だと感心しました.
 高木の後の世界的な数学者の岡潔についても
が同じように岩波から出ていて同じ著者の呼吸が感じられます.そこで,高瀬先生とはどんな人かと思う人は

に青春期が書かれています.私より少しだけ年上ですが,時代背景も同じで,自分の青春期を思い出す気分になります.岡潔に関して,高校時代自分が確か角川文庫で,
を読んだ記憶があります(写真は角川文庫ではありませんが).その後
を読んで感動した思いは今も忘れることはありません.そしてその後にこの本の後続として
があります.
 私の世代の数学のヒーローは当時広中平祐



でしたが,後者の本は,日本に帰って来た広中平祐が,京大で行った集中講義を森重文がノートに書いたのを製本化したものです.
 東京の神田の書店,書泉グランデにはこの本の森重文のサイン本が置かれてあり,驚いたことがありました.この書店は,数学に関して,売り場の担当者もいろいろ勉強されていて,その様子は日本数学協会の会誌の「数学文化」でも紹介されていました.

 岡潔に関しては,私には,伝説的な数学者とも言えそうでした.私が大学生になった頃には,すでに高木貞治はなくなっていましたが,岡潔は奈良女子大を定年退官して,京都産業大学で講義(数学ではなく日本文化みたいな内容)を行っていました.知り合いが,京都産業大学で,彼は英米科でしたが,理系科目で岡潔の講義を採っていましたが,岡潔を偉大な数学者と知らないことにびっくりしました.しかも説明してもピンとこないことに二度びっくりしました.入学式も制服で出席するというような変わった大学としか思っていませんでしたが,京都では右寄りの大学で,上賀茂にあり,左京区の大学からすると???という目で見ていましたが,いまはそんな気配すらないのでしょうね.

読みやすい本

2022-09-03 05:44:59 | 読書
 前回は、「なかなか読み進めない本」でしたが、今回はそれとは正反対で、一気に読み終える本です。あくまで私にとってですが。
 藤原正彦の本は、「若き数学者のアメリカ」
以来全部読んでいるので、表現の仕方にも慣れているし、知っている人から話を聞いている感じで読めるものです。

 さて、今回の「日本人の真価」は雑誌のコラムを寄せ集めたもので、適度な短さが、落語の小話を聞くような感覚で読めます。もっとも内容は多義に渡っていますが、最後のオチも落語のオチを意識して書かれている感じで、どうオチに来るかと楽しみながら読めるのも読み方の一つかもしれません。まあ、そんな読み方をしては作者に申し訳ないのですが。
 教養や学問的な見識に裏付けされた、コメントは説得力が違います。昨今の首相には窺い知れないものを感じます。本の中でも、国家観や政治哲学が感じられない最近の首相たちへの厳しい姿勢も伺い知れます。また、いかにも数学者らしいというニュアンスにも他の著者には感じられない気持ちの良い切れ味があるので、どうしても読んでしまう自分があるのでしょう。
 20代で書いた「若き数学者のアメリカ」からすでに50年の歳月が流れ、デビュー50周年でも企画して欲しいですね。父親の新田次郎が卒後された電波講習所が現在の電気通信大学の前身で、私の父も同じ学校の卒業生であることからも妙に近親感を覚えたものです。まあ、私も50年にも渡ってその現役の著者の作品を読み続けているというのも珍しいかもしれません。
 いつまでもその舌鋒鋭い語り口とユーモアを含んだその表現を楽しめることを楽しみにしたいです。そういえば、10年ほど前に三重県に来られて講演された時は直接話を聞く機会がありましたが、全く著作からの印象と変わらない感じで、ホッとした思いを懐かしく思い出しました。


なかなか読み進めない本

2022-08-29 21:13:20 | 読書
 数学書は、なかなか読み進めないものですが、最近は、とにかく易しい本を読んで大まかに理解してから、本格的な本を読むことを進める数学者もいます。
 私の学生時代は、本格的な本を読まないといけないというか、それしか方法はないと思っていたのでしたが、確かに易しい本を読むことで挫折することなく勉強できることは大切ですね。生徒に教える立場になると、そのことはよく理解できるのですが、難しいものを理解することが大事みたいな、そんなやり方ではやはり挫折だけが待っているのでしょう。最近そういう視点で数学書を読み始めています。
 今回紹介するのは、数学書ではなく、読むのに時間がかかった本です。
 興味がある分野ですが、とにかく読みにくいというのがこの本です。400ページほどの文庫本ですが、引用文献が400ほどあるので、1ページに半分くらいが引用文であったりして、読み続けていくことが苦痛になるくらいでした。確かに文献を引用しながらの実証的な内容の本ですが、まあ、文庫本になるとは予想しないで、純粋な学術書として意識された本でしょうが、でもねと言いたくなります。
同じ内容の本でも下の本は読みやすく、全く印象が違います。読みやすいということも本として大事な要素だとつくづく感じた今回の本ですが、みなさんはどう思いますか。


甲子園は清原のためにあるのか

2022-08-08 19:32:04 | 読書
 このフレーズが思い起こさせる季節がきました。甲子園の中継の合間に過去の名勝負をハイライトで紹介してくれていますが、私にとっては、やはり箕島対星稜戦ですね。また、当時は阪神より強いと言われたくらい桑田清原のPL学園の強さも印象的でした。
 そんな当時の清原と対戦した投手達のその後と清原との対戦の思いを取材した本が、
です。今の清原を描いた以前の本より読みやすく、1時間で読める内容とインパクトの強さがあります。また、清原との対戦が投手に与えた影響をリアルに取材からうかがい知れる本です。スポーツの魅力、そして人生に与える影響を伝えてくれる本です。それぞれの年代の人に自分なりに読める本ではないでしょうか。スポーツに打ち込んだ人なら共感できる内容です。思い当たる節がある人いると思います、スポーツに高校時代打ち込んだ人なら。