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東響オペラシティシリーズ第142回(11月15日)

2024年11月15日 | 東響
音楽監督ジョナサン・ノットならではの、お馴染みリゲティを加えた何とも不思議なプログラムの演奏会だ。まずはこのホールの専属オルガニスト大木麻里の独奏によるリゲティの「ヴォルミーナ」。これがまるで大きな電気掃除機の中に頭を突っ込んでしまったのではないかと思われるような大音響で始まった。その後はオルガン的であったり、そうでなかったり。健康診断の聴音検査と思うような音も聞こえたり。比較的素朴で単純なトーンクラスターが定期的に変化してゆく。しかしどの音もどの響きもシンセサイザーのようでありながら決して無機質でなく、不思議と人間的な温もりを感じるところがオルガンを使った魅力だ。私は決して嫌ではなかった。どこまでが作曲者で、どこまでが演奏者で、どこまでが楽器なのかまったく区別はつかないが、とにかくハチャメチャでありながら奏者の体温を感じさせる興味尽きない15分だった。なるほど大木はノットが信頼するだけあるオルガニストだ。ノットのリゲティと言えば、これまで深く印象に残っているのは2015年11月の「ポエム・サンフォニック」だった。これは舞台に100台のそれぞれ異なる同期のメトロノームを並べただけの曲なのだが、その音響的なズレや重なりが独特の偶発的効果を生むという趣向だっだ。今回の曲は私の中ではそれに比肩する衝撃的な曲だった。続いては当団首席チェロ奏者の伊藤文嗣をソリストに迎えてヨーゼフ・ハイドンのチェロ協奏曲第1番ハ長調。弦楽器群はノンビブラードでスッキリと響き、そこに優雅で柔らかな伊藤のチェロが彩りを加える。オケ首席の独奏らしく自己を主張するというよりもオケの引き立て役を買って出たという趣で、良い意味で和気藹々の仕上がりだった。アンコールはバッハの無伴奏3番から珍しくクーラント。そして休憩を挟んでこの日のトリが何とモーツアルトのピアノ協奏曲第9番変ホ長調K.271「ジェノム」とは誠に珍しい。ソリストは若手人気ピアニスト務川彗悟。務川はペダルを極力控えめにして響きを抑えたフォルテ・ピアノ的な音色でモーツアルトを紡いだ。だからちょっと鄙びた味わいをも感じさせつつ、しかし繊細で軽やかなタッチから生み出されるニュアンス豊かな響き、そしてフレーズ間の絶妙な間合いに務川のセンスが光る珠玉のような演奏だった。お互いに高め合って行くノット+東響との一体感(静かな高揚感)も並大抵のものではなく、まったく夢のような時間を体感した。盛大な拍手に意外にもブラームスの間奏曲Op.117-1がアンコールされた。決して重厚ではなく透明感に満ち、しかしながら、しっとりと豊かな響きを聞かせてモーツアルトの響きとの対照を際立たせて聞かせた仕掛けにはまったく恐れ入った。ブルックナーやマーラーの大曲で重々しく終わらないこんな爽やかなコンサートもたまには良いものだ。