この宮本亜門のプロダクションは、残されたピンカートンの息子が、父であるピンカートンの重篤な病床で、それまでの蝶々さんとの顛末を記した手紙を遺書として渡されるところから始まるのだが、そのプロダクションの2019年のワールド・プリミエが余りにも素晴らしかったので、その感動をもう一度という思いで出かけた。ドレスデン、サンフランシスコの舞台を経て、それなりに進化した舞台は納得できるものだった。しかし今回は歌手の力不足が目立った。東京文化会館の2階右で聞く限り、全員声量が全く不足しているのが極めて残念だった。蝶々夫人の高橋絵里は演技はとても良いのだが、声は張り上げると聞こえるがそうでないと力が急に減衰してほとんど聞こえない。何より声に響きがないのが致命的だ。ピンカートンの古橋郷平は常に非力で歌唱も演技も精彩に欠ける。(終幕の松葉杖の使い方などは論外。誰か指導しなかったのだろうか。)そしてピンカートンの与那城敬は重厚感に欠けるので、シャープレスの重要な役割が欠損するという具合なのだ。更にスズキの小泉詠子も説得力に乏しい歌唱。このように歌唱的・演技的にそれぞれの役割がきちんと果たせていないので、オペラとしてのドラマがなかなか成立しない結果になった。だからエッティンガー+東フィルの感情豊かな伴奏だけが虚しく響く誠に残念な公演となった。若手の実力を聞きたくてあえて裏キャストを選んだのだが、こんな仕上がりを許すことで東京二期会は大丈夫なのだろうか。
goo blog お知らせ
プロフィール
最新コメント
ブックマーク
カレンダー
goo blog おすすめ
最新記事
- 藤原歌劇団「ファルスタッフ」(2月2日)
- 東京シティ・フィル第375回定期(1月17日)
- 都響第1040回定期(1月14日)
- ウイーン・フィル・ニューイヤーコンサート
- 新国「ウイリアム・テル」(11月26日)
- 東京シティ・フィル第79回ティアラ江東定期(11月23日)
- 藤原歌劇団「ピーア・デ・トロメイ」(11月22日)
- 東響オペラシティシリーズ第142回(11月15日)
- NISSAY OPERA 「連隊の娘」(11月10日)
- 八ヶ岳高原サロンコンサート(11月1日)
- びわ湖ホール声楽アンサンブル第15回東京公演(10月14日)
- 東響第97回川崎定期(10月13日)
- 新国「夢遊病の女」(10月9日)
- 東京シティ・フィル第373回定期(10月3日)
- 東響オペラシティシーリーズ第141回(9月28日)
- 紀尾井ホール室内管第141回定期(9月20日)
- 東フィル第1004回オーチャード定期(9月15日)
- 東京シティ・フィル第372定期(9月6日)
- 第44回草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティバル (8月28日〜30日)
- ロッシーニ・オペラ・フェスティバル2024(8月17日〜21日)