名誉客演指揮者の大友直人を迎えてバルトークとエルガーの不思議な組み合わせのマチネーだ。音楽的には何ら共通点はない二曲だが、今回はそれぞれがとても良い演奏だった。まずはバルトークのピアノ協奏曲第2番Sz.95だが、この演奏の成功は何よりもピアノ独奏のフセイン・セルメットの技量と音楽性に資するものだったと言って良いだろう。それは打楽器のような強靭な打鍵からからとろけるようなロマンティックな響まで、それはもうピアノを操ってあらゆることが可能だと思わせる程の見事さだった。東響もそれに呼応し濃厚にしてエネルギッシュな好演。とりわけティンパニとトランペットのアクセントに胸が高鳴った。割れるような盛大な拍手にアンコールはうって変わってショパンの練習曲作品25-7で、セルメットはバルトークとは正反対の静謐な世界をも見事に描いた。休憩を挟んで後半は大友が大得意とするイギリス音楽、それもエルガーの交響曲第1番変長調作品55だ。プログラムによると大友が東響とこの曲を演奏するのは26年振りだと言う。さらに第2番は昨年演奏されて実況CDも出ている。つまりスペシャリストによるエルガーの佳作の演奏だ。そんなわけでこれが悪い訳がない。「ノビルメンテ」というにはいささか刺激的過ぎる音色だったと個人的には感じたが、それは東響の機能性が十二分に発揮されていたということなのかも知れない。大友特有のスマした音楽なので決して情熱的にならない。しかし青白い炎にような熱量が十分感じられる内的に激しい演奏だった。フィナーレで一楽章の主題が戻ってきて高々と奏された時には胸が熱くなった。
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