毎夏恒例フェスタサマーミューザKAWASAKI 2024に、いまや引っ張りだこの沖澤のどかが登場、さらに共演が人気ピアニスト阪田知樹だというから会場は満員御礼だ。まずはR.シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」作品20で颯爽と開始された。沖澤の振りには迷いやブレが一切なく、オケが確信を伴って響くのでそれが実に快い。そしてダイナミックも大きくとられ読響の機動力に富んだ馬力が物を言う快演であった。続いて阪田が真っ黒な僧服のような出立で登場した。それはまるでフランツ・リストが写真帳から出てきたよう。演奏の方も強靭なフォルテと羽毛のような繊細で軽やかなピアニッシモを駆使していとも楽々とこの難曲を弾き切り、リストもかくやと思わせた。チェロの遠藤真理のソロも聞き映えがした。割れんばかりの盛大な喝采にアンコールは自ら編曲したフォーレの「ネル」。リストで聞かせた以上の繊細なピアニズムに心打たれた。最後はこのホールのオルガニスト大木麻里を迎えてサンサーンスの交響曲第3番ハ短調作品78「オルガン付き」。沖澤はドイツ物もフランス物もそれぞれに的確なスタイルで聞かせる秀でた手腕をもはや完全に身につけている。繊細さもあるがいざという時の強烈なフォルテも潔い。この4月に東響から移籍して来たオーボエの荒木奏子のリードする木管アンサンブルをはじめとしたこのオケの上手さを全面に押し出した、シャープな推進力を持ったサンサーンスに会場は大沸きだった。三日の間を開けて京都と川崎でこの沖澤のどかを聞いたが、この人は稀に見る逸材だと言って良いと思う。
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