毎年元旦の夜のお楽しみは、テレビの前に陣取ってウイーン・フィルのニューイヤー・コンサートの生中継を観ることだ。此の時期にウイーンに居たことは幾度かあるのだけれど、ムジークフェラインの大ホールは私には高値の華なので、シュターツ・オパーかフォルクス・オパーの「こうもり」がいつもの私のお楽しみだ。2011年には市庁舎前の広場のライブ・ビューイングで、ウイーン児に混じってグリュー・ワイン片手に肩を揺すりながらウエザー=メストのを楽しんだ思い出がある。さて今年の指揮は1993年以来7度目の登場だというリッカルド・ムーティだった。若い頃はその元気がとても威圧的で楽しめなかったが、歳と共にそれも少しはこなれてきて楽しめる曲も混じるようになってきたなという印象を持っていた。そして今年はというと、どうも寄る年齢のせいか、もったいぶっていて腰が重くってちっとも楽しくなかったというのが私の正直な印象だ。毎年の「東京春祭」でのヴェルディでは巨匠風が功を奏して随分と立派な音楽を聞かせてくれるのだが、シュトラウスとなるとどうも勝手が違うようだ。実は大晦日に予習をした。溜め込んていた録画の中から2013年のマリス・ヤンソンスの二度目の回のを引っ張り出して観たのだ。積極的に選んだというよりもリストを眺めていたらちょっと目を引いたのでかけてみたというのが正直なところで、演奏の印象など全くなかったのだ。しかしこれが見始めたら止められないような自発的で楽しい演奏だった。何よりも指揮者も楽団も聴衆も皆が笑顔で楽しそうでワルツの快楽が溢れ出ているのだ。ニューイヤーコンサートなんてこうでないといけない。それじゃあということで、長年のボスコフスキーの弾き振り体制の歴史が終わり、マゼールが登場して幾年か連続して振った最初の1980年の回のLPを引っ張り出して聞いてみた。その頃は7年連続なので彼の語り口に飽き飽きしていた記憶がありもう40年以上も聞いていなかった盤だ。ところが久しぶりで聞くと何ともどの曲も実に爽快に器用に料理していて新鮮!これはこれで文句なく心楽しい時間だった。来年は私などには意表をついた人選で、メトとフィラデルフィアのシェフを務めるネゼ=セガンだという。どんなワルツを聞かせてくれるか怖わさ半分、楽しみ半分というところだ。
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