藤原歌劇団とNISSAY OPERAの共同制作による「コジ」である。モーツアルトとダ・ポンテによる”女と男の物語”三部作のトリともいうべきこの作品だが、今回の岩田達宗のニュー・プロダクションは、哲学者ドン・アルフォンソの軽い戯れといったブッファ的な作りではなく、どちらかと言うとセリア的なメッセージ性の強い舞台だったことが興味を引いた。フィオルディリージに迫田美帆、ドラベッラに山口佳子、グリエルもに岡昭宏、フェランドに山本康寛、デスピーナに向野由美子、ドン・アルフォンソに田中大揮という歌手達を揃えた配役は歌唱・演技ともにとても充実したもので、ダ・ポンテの描く人間の本性をモーツアルトの音楽に乗せて強烈に描き出した。中でも迫田美帆の迫真に迫る伸びやかな歌唱は聞き応えがあった。ピットは川瀬賢太郎指揮の新日本フィルだったが、こちらは毎度の川瀬節で随分歯切れ良く威勢のいい音楽だった。まあ今回の場合はそれが岩田の強いメッセージと符合するところもあったと言えるかもしれないが、この作品にはもう少し心の機微に触れるような音楽作りが欲しいところだ。そういったモーツアルトがこの音楽に盛った二面性を鮮やかに描き分けてくれれば、より奥行きの深い感動が得られただろうと思う。
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