ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

相場雑感2024.9

2024-09-15 12:00:00 | 投資雑感
色々と思うところがあるので、現時点での気づきを文章にして残して置くことにする。

まず、大きな見取り図として言っておかなければならないのは、現在の日本の株式市場というのは、属国市場であるということである。

この日本の株式市場が属国市場だというのは、売買代金比率で外国人投資家に過半数を握られていることが端的に示しているように、主導権を完全に外資に握られていると言うことである。言い換えれば完全に制空権を握られているという事であって、それにもかかわらず、例えば、金融当局はHFTは野放しであるし、225先物を上下に振っておいてから、現物を売り買いするといった手口は広く知られているのにも関わらず、数銘柄でもって日経225の数値を簡単に操作することが出来る現在の状況に対しては、算出元の日本経済新聞社は全く手を打とうとはしていない事が挙げられる。他にも空売りなぞも、個人投資家が出来ない銘柄でも、機関投資家は売ることが出来るとか、数え上げればきりがないが、要は、外資はやりたい放題であると言って良い。

こういった現状は、金融ビッグバンの帰結でもある訳だが、現在ではその最終局面である総仕上げの段階に入りつつあるように思われる。株式持ち合い解消などがその典型だが、優待などのこれまで行われてきた日本的な様々な慣行が、今後もなし崩し的に縮小・撤廃されていくことになるのは避けられないであろう。個人的には、こういった「改革」は、功罪相半ばすると考えているので、例えば株式持ち合い解消などは、特に極端な円安局面おいては、それだけ買収され易くなるとも言えるので、なんらかの買収防衛策を取らざるを得ないことにもなる道理で、この意味では、現在関を切った様に、持ち合い株解消に動いている性急とも言える動きに、危惧を覚えるのは私だけであろうか。

それは兎も角、このような現在の属国市場という見取り図の中にあって、現在の日本の株式市場を動かしている主役は何かと言えば、それはAIアルゴだと言わなければならない。一般の弱小投資家を食い物にしているだけではなく、複数のAIアルゴ同志が食い合いをしているというのが、現在の日本の株式市場であると言って良い。

例えば、世界最大の投資会社ゴールドマンサックスは、世界中で数千兆円にも上る取引をしていると言われている。勿論、GSにそれだけの現金があるはずもなく、実際には高レバレッジを掛け、オプション取引などを多用した複雑なアルゴリズムによるプログラム売買を行っている訳だ。一度に数兆円というようなポジションを建て、それによって価格を動かし、次の瞬間には決済する。その間僅か10分の1秒に満たない時間フレームで、他の投資家が数秒遅れて参入した瞬間に利確しているといった有様である。


そして、こういったGSレベルの「特級」が、ごろごろしているのが、現在の投機市場で、プログラムの組み方はそれぞれの企業秘密で判る由もないが、基本は歴史的なビッグデータをスパコンにぶち込んで、回帰分析等でもってアルゴを組み上げて、そいつを実際に動かす中でAIに学習させながら運用しているのだろうと、素人の私などは見当を付けているが、ま、そう間違ってはいないだろう。

そして、気づきというのは、このことが、今回の暴落でもって明確に示されたと思うのだ。FXをやっている人は良く知っていると思うが、今回の暴落の動きは、フラッシュ・クラッシュそのものであり、この意味で、これまでの暴落とは明らかに違う性格のクラッシュであると、私の眼には映ったのである。

従って、メディアでは、例によって過去の暴落が参照され、今回と比べてどうのこうのと言われているが、このような見方からすると、これからはこうした晴天の霹靂的暴落は常態化し、さらにその規模は加速度的に肥大化していくことになる。

この意味で、現在の日本の株式市場は、未知の新しいフェーズに突入しつつあるというのが、私の認識であり危惧である訳である。であるから、すでに異なるフェーズに入っているので、旧態依然の硬直したこれまでのパターン認識や分析では、これからは太刀打ち出来んよ、ということである。

従って、この事実から目を逸らし、向き合わないでいては、恐らく生き残ることさえ難しいのではないかと思われる。やはり、ここからは、これまで以上に危うきに遊ぶことの出来るごくごく少数の名人だけが生き残り、死遺累々をしり目に生存者利益を一手に享受することになるだろう。

ここにおいて、基本的な戦略の見直し、特にリスク・マネージメントの改定は必須事項であると考える次第である。というと、スペンサーの「適者生存」だとか、ダーウィンの「強い者が生き延びたのではない。変化に適応したものが生き延びたのだ」といった言葉が、したり顔で引用され、投資においてもオポチュニック・スタイルが、結局、最強!などといった言説がすぐに思い浮かぶが、これらは無害衛生な一般論に留まり、肝心のその「変化」がどのようなもので、どのように「適応」していくのかについては、全く触れていないのが常である。

結局、ここでも方法論としては、トレンド・フォローが有効だと私は考える。つまり、「変化」のトレンドを捕まえることが重要で、「変化」の<トレンドが出たら(当たりを引いたら)、トレンドが継続している限りホールドすること>、「変化」の<トレンドが出なかったり、トレンドが終わったらさっさと切ること>という方法論である。



とまあいったことで、日下部篤也の状況認識が、実に的を得ていると思う、今日この頃であります(笑)。

引け!引け!なんでか知らないが、特級同志が殺り合ってる。蟻んこの上で象がタップダンスを踊ってんの‼一応言っとくけど、俺たちが蟻な‼
呪術廻戦 渋谷事変 霹靂


相場雑感3

2023-01-09 15:00:00 | 投資雑感
大体予想したシナリオ通りの展開で、取り立てて言うこともないが、備忘録代わりに。

日経225CFD週足チャート


若干、不鮮明なチャートで申し訳ないが、これは日経225CFDの週足チャートである。なお、縦に入っている点線は一年間の区切りを示している。これで見ると、ここに2年間は、レンジ相場であったことが良くわかる。黄色の線はフィボナッチであるが、2021年では上から二番目の23.6の線がサポート・ラインになっていたが、2022年は、一段下がり、この23.6の線を中心にして、これも分かりにくいが、赤線で示しておいたようなレンジであったことがわかる。従って、このレンジ相場であるという認識が出来たかどうかが、成否の分水嶺であったと思われる。

他の人はどうか知らないが、私は、相場を1レンジ、2トレンド、3どちらでもないカオスという三つに分類している。従って、手を出して良いのは、このうち1と2だけであるが、これまでも述べてきたとおり、2023年は1から2(ダウン・トレンド)へ転換する可能性が高いと思っているので、(レンジの上限辺りで)ショートを積み上げているが、現在はレンジの下限辺りなので、上がっていくようであれば、フル・ヘッジのロングを入れる予定である。


US500CFD週足チャート


一方、日本株に対し、2022年のUS500CFDの週足チャートは、高値安値を切り下げているので、明らかにダウン・トレンドである。どうやらインフレ第一波は収まったようなので、一旦は調整しそうである。しかし、前にも述べたように、インフレは一波で収まるはずもないので、もしFRBが利下げに転ずるようなことがあれば、インフレ第二波は相当に酷いことになろう。従って、その時の戻り高値は絶好の売り場になるというシナリオを描いている。

GOLDCFD月足チャート


金は基軸通貨ドルとは逆相関になるので、ドル独歩高の修正に伴って、ようやくアップ・トレンドへ転換した模様。基本ロングなので、これはヘッジのショートを外したところである。


*現在、世界で起こっている様々な出来事は、私の大局的ベア・シナリオを裏付けるものばかりであるようだ。

日本については、コロナ対策として、3年間で100兆円もの財政出動をしたのにもかかわず、このありさまで景況感は一向に改善せず、異常な超過死亡数と相まって経済はシュリンクしていく一方である。逆に言えば、この財政出動があったからこそ、この程度で済んでいるとも言うことが出来よう。また、目につくのは貿易収支で、どうやら恒常的黒字から恒常的赤字へトレンド転換したようだ。内需もダメ、外需もダメで、現況は内外需ともに黄信号から赤信号へと変わりつつあると言っていいだろう。対する政府の対策はこれといった経済振興策もなく増税路線で、日本経済に引導を渡しに来ているとしか思えないのは私だけであろうか。

また、ロシア・ウクライナ紛争の長期化に伴って、EU諸国及びアメリカは戦時財政下にある訳で、この巨額の戦費支出のツケがどこかで暴発し、突発的な”リーマン・ショック”以上のアクシデントが起こるものと予想している。例えば、あまり話題にのぼらないが、EU諸国ユーロ圏全体ではインフレは10%を超えており、20%超えの国もいくつか散見される酷さである。

また、これまで世界経済の牽引車であった中国経済のバブルは弾け、韓国経済はデフォルト寸前。それと共に、どうやら朝鮮戦争再開といった有様。中東も、イラン・イスラエルが一触即発で、いよいよ第三次世界大戦へというシナリオが現実化してきたようだ。

といったことで、さあ「どうする家康」、いや「どうする日本」?



相場雑感2

2022-05-28 13:00:00 | 投資雑感
山は登ったら降りるものよー宇多田ヒカル


日経平均長期チャート(1949~)


残念なことに、株式市場は今のところ私のベア・シナリオ通りの展開になっているようだ。

以下は、2021年以降の日経平均の日足と週足のチャートであるが、テクニカル的には実に判り易い綺麗な展開になっている。3万円を少し超えた辺りでダブル・トップを付け、ご覧のような綺麗なレジスタンス・ライン(青線)に沿って下げている。

日足


週足



これまでも述べてきたが、私のシナリオでは、現在は日本の40年周期ダウン・トレンドの最終段階に入りつつあって、周期性から言って2030年辺りにボトムを付けることになる。つまり、その意味するところは、これからボトムを付けに行くということで、日経平均は2008年10月28日につけた、バブル崩壊後の最安値6,994円90銭を更新することになるのではないか、という見立てである。日柄でいうと後8年で、まだカタストロフの全貌は見えてきていないが、色々な兆候がすでに表れて来ている。

第三次世界大戦の蓋然性については再三述べているが、ここでは現在進行中のインフレについて、考えてみたいと思う。

この点については色々なことが言われているが、例によってそのほとんどは経験主義な思考でしかないように思われる。つまり単に過去のインフレの場合がこうだったからこうなるといった公式主義の域を出ていない言説ばかりだと言って良いだろう。

勿論、こうした経験主義な公式というものが存在するのには、それなりの理由もあろうが、前提自体が変わっていく、或いはもうすでに変わってしまっている未体験の大変革期においては、経験主義的公式というものは、役に立たないどころか、むしろ進んで火に飛び込むことになり兼ねない。例えば、株式投資では「戦争は買い」という有名なテーゼがあるが、今回のロシア・ウクライナ紛争の場合がどうなったのかは、言うまでもないだろう。

この意味で、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という格言が、今ほど必要とされている時もないのではないかと思う。では「経験」と「歴史」とは一体どう違うのか。ここで強調しておかなければならいないのは、「歴史」には人間の一生という短い期間に限定されないもっと長い時間軸の洞察が含まれているという事である。人間の一生という短い期間に限定された「経験」に関する洞察をいくら集めても、それは「歴史」に関する洞察には成り得ないということである。経験至上主義には、この長い時間軸に関する洞察が欠けていると言い換えてもよい。


さて、インフレであるが、世にはリフレ派という公式主義者が結構な数いるようで、このインフレを歓迎している。中には、これからバブルがやってくるという奇特な御仁もいるが、私の見立ては全く逆で、これからやってくるのはインフレ+不況、つまりスタグフレーションで、これから世界は大不況に突入していくことになる。それは、繰り返し述べているように今後の世界は分断され、ブロック経済化されていくからで、すなわちグローバル・サプライチェーンが分断され、いくつかの経済ブロックに再編されていくからである。結局のところ、世界経済は再編のための大混乱期を経て、最終的に縮小均衡を余儀なくされていくことになる訳である。前に”自由主義の終焉”と言った所以であるが、ここで押さえておかなければならない重要な視点は、これまでとは違って、このような世界では、資源を持つ国が圧倒的に優位に立つという事である。


ロシアに対する経済制裁は、ロシアを国際経済から徹底的に排除し、デフォルトに追い込もうとする試みだったと言えよう(実際、一時的にルーブルが暴落したために、今にもロシアがデフォルトするのではといったニュースも流れた)が、デフォルトどころか、むしろロシア経済は強くなり、ルーブルも経済制裁の以前の状態に戻ったどころか、対ユーロで史上最高値を更新してしまった。

それは、対露経済制裁がむしろロシア経済を返って強くしているからある。

というのは、(欧州委員会によれば)EUはガスの40%、石油の27%、石炭の46%をロシアから調達しているからで、資源を持つアメリカやカナダ・ノルウェイはともかく、資源を持たない他のEU諸国にとって、経済的に自滅の道をわざわざ選んでいるとしか私には思えない。何故なら、アメリカやヨーロッパが表向きはロシアの資源を締め出すと宣言したことで、原油価格が高騰し、その一方、裏ではヨーロッパは実際にはロシアの原油や天然ガスを輸入せざるを得ないからだ。そのため元々資源不足で危機的状況にあったヨーロッパはかなり厳しい状況にならざるを得ないだろう。しかもそれは原油や天然ガスだけではない。小麦など農作物にも飛び火してしまっている。つまり、EU諸国はわざわざ敵国ロシアの輸出品の価格をつり上げておいてから、輸入するという何とも馬鹿げたことをやってのけているのである。

従って、今後EUは資源をロシア以外から輸入する手立てを求めざるを得ないし、また実際にも、例えばスペインなどは割高ではあるが、カタールからヨーロッパへLNGを輸入するハブ基地を目指してすでに動き出している。その一方で、ロシアはロシアで、中国やインド、アフリカや中東諸国などへ資源を売る動きを見せてもいる。現時点で、この紛争がどのような決着を見せるのかはわからないが、こういった流れは加速することはあっても、元に戻ることはないであろう。つまり、ロシアへの経済制裁を機に、今後は資源の世界的サプライ・チェーンの再編が行われ、経済圏は多極化してゆくという事である。このような中にあって、資源を持たないEU諸国は相当な苦境に追い込まれていくことは火を見るより明らかである。現時点でさえ、インフレによってEU諸国の生活事情は相当にむごいことになっている。フランスでは、冬の暖房費が賄えない人のために現金給付をせざるを得ない始末で、ドイツでも燃料節約のために政府が毎日風呂に入らないようにという勧告を出したり、ガソリン価格の高騰のため、自動車通勤を止めて馬で通勤する人が現れたというニュースが流れた程である。

そして当然のごとく西欧に追随する、同じく資源を持たない日本は.言うまでもないであろう。日本ではまだそれほどインフレが進んでいないので危機感は希薄だが、EU諸国の惨状は将来の日本の姿である。それは近い将来、このインフレで、単に物価が上がるというだけではなく、生活必需品が手に入らなくなるということを意味している。電気やガスの供給にも支障が出てくるであろう。

現状、実質的に国民負担率が50%を超えているのにもかかわらず増税ラッシュが続いているが、→世界の一人当たりの購買力平価GDP(USドル)ランキングでは例年順当に順位を下げ続けて、現在36位で欧米諸国や韓国にさえ後塵を拝している始末。ここ数年の超過死亡数の異常さも相まって人口減少は歯止めがかかるどころかむしろ加速しており、人口動態的にみても、日本の将来はとても明るいなどとは口が裂けても言える状態ではないだろう。そこへ今回のインフレである。ほとんど日本経済は”詰んでいる”と言っても過言ではないと私は考えるのだが、どう思われるだろうか。

とは言っても、MMTの議論で指摘されているように、まだ→日本は世界最大の海外純資産を持っているという意見もあるかもしれない。ここで詳しくは述べないが、これに対しては、世界経済の多極化・ブロック化にともなって、これが不良債権化する可能性が十二分にあることを指摘しておこう。まあ、このことはロシアへのリース航空機がどうなったかを見てみれば容易に想像がつくと思うが、結局、”自由主義”を前提とした議論はすべてこれからは通用しなくなると言い切っても間違いではないという事である。

このように経済に限ってみても、8年後の2030年の日本の惨憺たる状況は、容易に想像がつくだろう。

これは、今日本は、内政だけでなく、外交政策の大転換を迫られていると言い換えてもよい。今後没落していく西洋と運命を共にしていくのか、それとも西洋追随をやめて、独自に別の生き延びる道を模索していくのか。ところが、岸田政権のロシアの経済制裁にいいねを押している日本国民を見ていると、どうも前者の道を変える気は毛頭ないように私には見える。まあ、民族にはその民族の生き方があるのでどうのこうの言っても始まらないが、この嬉々として西洋を追いかけて没落していく日本の姿は、後世の歴史家の目にはどのように映るのであろうか。


さてマクロの話が長くなったが、一気に視点をミクロに移してみよう。

このようなマクロの視点に立って考えると、インフレに対するアメリカFRBの考えは、私には楽観的に過ぎるとしか思えない。

Fed(連邦準備制度)が5月のFOMC会合で、通常の倍の0.5%利上げを行うとともに、2018年に世界同時株安を引き起こした時の2倍の規模の量的引き締めを発表したのを受けて株価は下がっているが、これまで低金利政策を続けてきた各国の中央銀行は大きなジレンマに立たされている。インフレを抑えるには利上げと金融引き締めを行わなければならないが、利上げと金融引き締めは、このように株式市場の下落を引き起こすからである。問題は、これまで続けてきたゼロ金利金利政策で、インフレ率を抑えるにはまるまるその分を利上げ幅で相殺しなければ、実質金利がプラスにはならないという点である。従って利上げ幅を大きく取らなければインフレが進行してしまい不況に突入してしまうが、かと言って大幅な利上げは株価の暴落を引き起こすことになる。

現在、FRBは中立の実質金利を0.5%と想定していて、金利を2.5%まで上げてそれで中立になると主張している。つまり、現在のアメリカのインフレ率は8%を越えているのにも関わらず、FRBはこれは一時的なもので、長期的にはインフレ率は2%まで低下すると見ていることになる。

5月26日に発表された最新のサーベイによるスタンスでは、今のインフレは一時的で、今後の数ヶ月で頭打ちと予想、5年先にインフレ期待は3%と、長期的な見通しの数字を3%に上げているが、基本的なスタンスには変更はないようだ。

What Do Consumers Think Will Happen to Inflation?

私には、このインフレは一時的なものとは思えないし、ましてやインフレ率が2%や3%で落ち着くとは到底思えない。従って、FRBはソフト・ランディング政策に失敗し、ハード・ランディングがこの先に待ち構えているのはほぼ確実と見ている。それも長きに渡った低金利政策からのトレンド転換であるから、相当なハード・ランディングになるのではないかと思われる。恐らくFRBは後追いで、さらに金利を上げざるを得ない状態に追い込まれることになるであろうが、リセッションは避けられないだろう。まあ、どちらにしても、暴落は避けられないということである。

そして、市場はまだハード・ランディングを織り込んでいないので、暴落はこれからが本番ということになる。それはドルの暴落がまだ本格的に始まっていないことからも伺えるが、興味深いのは、真偽のほどは解らないが、日本人投資家は相場の最終局面に現れるというテーゼが、外国人投資家の間では常識になっているという話を聞いたことがあることである。思えば、ここ何年かのアメリカ株ブームに乗った日本人投資家達は、現在アメリカ株の下落に対しては円安で多少なりとも助かっているが、これから本格化する株の暴落に加えてドルの暴落のダブル・パンチで退場を余儀なくされるのではないかと思われる。

2020年の暴落時には、日米ともに証券会社の口座数が爆発的に増えたというニュースがあったが、現在株式市場は下がっていると言っても、日米ともに2020年の暴落時から見れば相当に高い位置にある。ということはこれらの新規参加者の殆どは、今回の下落で多少は減らしたとは言え、まだまだ十二分な含み益を持っているという事になる。恐らくこれらのノービス組が退場させられる水準にまで暴落しないと、今回のダウン・トレンドが終了してボトムをつけることはないのではないかと私は考えているが、ここまで悲観的な予想をしている市場参加者はあまりいないように見受けられる。けれども、あえて名前は上げないが著名な外国の投資家の中には同様の見方をしている人物が何人もいるようだ。勿論、自分で考えることが肝心だが、市場においては常に少数者の方に軍配が上がるというのも厳然たる事実である。



さて、最後に、これからやってくるスタグフレーション下の投資について少し私見を述べてみよう。

基本的にダウン・トレンドであるから買いだけで利益を上げるのは難しいだろう。分散投資でポートフォリオを多様化するパッシブ投資も、買い持ちになるので、勿論利益を上げられないだろう。かといって現金で持っていてもインフレで価値が棄損していくというダブル・バインドになるので、パッシブ投資としては、これからは金本位制に回帰していくので、金を買って寝かせておくというのが一番有効且つ簡単な資産防衛方法になろうかと思う。

アクティブ投資としては、”危うきに遊ぶ”ことの出来る一握りの投資家のみが生き残れる、相当に難度の高い難しい相場になるのではないかと考えている。恐らく、アベノミクス相場で輩出した”億り人”のほとんどが、また元の木阿弥に戻っていくことになろう。自分もその一人にならないようにしたいものであるが、さてどうなることやら。基本的には、インフレで下落する資産(株式や債券)を売り、上昇する資産(コモディティ)を買えばいいという事になるが、これまでもそうであったように、通常インフレが一回の景気後退で収まることはほとんどないので、複数回のインフレ対策が功を奏して、やっとのことでインフレが収まることになるということを考えれば、暴落が一回で済むはずもないので、この辺りの乱高下の見極めが出来るかどうかが、生死を分ける分水嶺になろう。


と言ったようなことで、以上のような極端に悲観的なシナリオを考えている人は稀だろうが、プランB或いはプランCとして心のうちに留めて置いてもらえれば、と思う次第である。



投資雑感

2021-01-04 17:00:00 | 投資雑感


2020年は、個人的にいろいろな意味で節目となる年だったので、備忘録がてら考えや結果を文章にして残しておくことにする。

こうして日経225の年間チャートを改めて眺めてみると、この一年は非常に判りやすい相場だったように思う。日米ともに、暴落時に証券会社の口座数が爆発的に増えたというニュースがあったが、これらの新規参入者だけでなく、2020年は、恐らくほとんどの参加者がプラスで終えたのではないだろうか。その後のV字回復によって、暴落に耐え抜いた人はもちろんのこと、暴落で痛手を負った人も巻き返して、結果としては、プラスで終ることができた人も結構多いのではと想像する。例によって、先物による無理やりな指数操作とは言え、特に最後の11月12月のバイデン曲線かと見間ごう如き上げによって救われた人も多いだろう。(私なぞは逆にそれが恐ろしいと思うのであるけれども。)

私にとって2020年は、結果としては、プラス200%以上とすこぶる良好な成績を収めることできた年であった。一般に、こうした易しい相場を逃さないというのは、投資における必須の成功要因であるが、これはいわゆる二度のドテン売り、ドテン買いがうまくいったからで、一つ目の黒丸でドテン売り次の赤丸でドテン買いに転じ、私は2019年に付けた2万4448円で天井を付けたのではないかと思っていたので、二つ目の黒丸で買い玉が二倍以上になったのを機に、半分を利確した。この厳選した3回の売買タイミングがうまくいった形である。従って、現在は、気分的にストレスの掛からない、いわゆるタダ株のポートフォリオになっている。なお、年度末時点のものを以下記録として残しておくが、例によってセカンダリー投資として、すでに持っていたのを買い直したので、IPO年度でくくってある。

2016IPO

2017IPO

2018IPO

2019IPO



さらにいわゆる100バガーを達成したという点でも、記憶に残る年でもあった。売る前に持っていた銘柄のうち、断トツの上位二つは3064MonotaROと6035アイ・アールジャパンホールディングスだったが、この2つも3月23日に買い戻したが、6月11日には全部売ってしまった。それは100バガーを達成した(MonotaROは60バガー)からで、普通に考えて、まあここからさらに100倍になることはないだろうという考えからである。両者ともに決算は好調で成長株としてはいまだ魅力的であるが、次の100バガー候補に資金を振り向けた方がよいのではという目算である。また、これまでの資金的制約から思うようなポートフォリオが組成できなかったくびきから解放されたという意味でも、記念すべき年であった。これで思い描いていた理想の投資法がようやくにして実践できるというものである。

最近は時価総額の小さい小型グロース株でテンバガーを狙うといった投資法が流行っているが、そもそもIPO直後は時価総額は小さい訳であるし、私に言わせるとIPO後のいわゆるセカンダリー投資のほうがスクーリングなどの調べる手間が省けて楽ちんである。またこのセカンダリー投資法では逃してしまう銘柄もある訳だが、そういったものは別にリストを作っておいて暴落時に仕込めばいいので、結局のところ、グロース株投資は、セカンダリーと暴落時に限るというのが、かねてよりの私の持論である。2020年もそれらを実践した訳である。

とはいっても、これは自戒を込めて書いておくのであるが、こうした単年度の好成績は、これだけではそれほど意味はないので、この成果をいかにキープして、減らさずに増やしていくことが出来るのかということの方がはるかに重要である。

「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」という有名なテンプルトンの言葉は、ジェシー・シュタインの「自分が天才だと思ったら相場から撤退する時である」という言葉とともに、常に胸に銘記しておこう。

なお、私が天井を付けたのではないかと考えた理由の一つに、「小型成長株でテンバガー」といった大同小異の成功した個人投資家本が陸続と出版されたことがあげられる。これは「靴磨きが株の話をしだしたら天井」という相場格言の現代版だと認識しているが、この現象は過去の個人バリュー投資家本の出版氾濫現象を思い起させる。これらの本に共通した特徴は内容が手法一辺倒な点で、むしろそれよりも重要なリスクマネージメントやマインドマネージメントにはほとんど触れられていないことがあげられる。投資というのは対戦ゲームの一つなので、対戦型スポーツがいい例で、勝ち続けるためには、攻撃も無論大事であるが、何といっても防御やマインドセットの方が大事なのであるが、相場というのは罪作りなもので、数年に渡る楽観や陶酔がこの真実を過小評価あるいは無視させるのもまた繰り返される歴史であるとも言えよう。

言い換えると、相場には、5年±2~3年の周期的な上昇下降の波があって、私に言わせると、バリュー投資であれグロース投資であれ、そのすべての局面において有効な投資法というのは存在しない。従って、勝率も損益比率も悪くなる苦手な相場局面においては、如何に防御に徹することが出来るのかが、一発屋で終わるかかどうかの分水嶺になるということである。野球やサッカーでいえば、7-3で勝つことももちろん重要であるが、鉄壁の守りで1-0で勝つことの方がはるかに重要であるということである。


さて、述べたように、私は2万4448円で天井を付けたのではないかと思っていたので、2020年は全世界的金融緩和の威力を思い知らされた一年でもあった。なんせ緊縮財政派の御本尊IMFにしてからが、金融緩和推奨レポートを出すほどで、テクニカルにおいても、アメリカのダウに続いて日経225も上値を更新したので、ダウ理論から言ってアップ・トレンド継続確定で、現在は3万円を目指す流れと言えよう。だが、私に言わせれば、現在は完全にバブルである。いや、恐ろしい。



これは日経225の30年チャートであるが、私はバブル最高値3万8915円は超えないと思っているので、つまり、現在はダウントレンドの中の単なる綾戻しでしかないと考えている。現状ではこのアップトレンドがどこまで行くのかはわからないが、ここからは天井圏の危険水域突入だと捉えている。前にも述べたが、天井を付けた後は前回のバブル崩壊時と同じように、2030年辺りの大底に向かってまっしぐらのダウントレンドになると考えている訳である。

従って、今はこれまで培った知識と能力を総動員して如何に天井を捉えるかに注力することだけを考えているが、その心強い味方となるのはトレンドフォローという考え方であるというは、再度ここで強調しておきたいと思う。