ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

隣の芝生

2024-09-08 00:00:00 | 投資理論
バフェットが日本の商社株を買った理由については、色々としたり顔で穿った説明がなされてきたが、どうも私には今一つピンとこないものばかりであった。以前のバフェットの日本株に対する否定的な発言から考えると、そこには、バフェットの日本株に対する見方に何らかの変化があったようにも思われるのだが、まあ、わからないものはわからないので、そのままになっていた。

ところが、つい先日、知人が教えてくれたこの2つの動画を見て、なるほどそういった考えだったのかと改めて腑に落ちた次第、従って文章にして残しておくことにした訳である。

この動画内の発言からすると、どうやらバフェットの商社株購入の背後には、日本式経営文化に対して、より評価する方向にシフトした事実があるように思われる。考えてみれば、商社というのは日本特有の企業形態であり、アメリカにもこのような業態は見られないので、このシフトには、2つ目の動画で述べられているマンガーの比較文化論的な考えに基づいた日本式政治・経済運営文化に対する高評価が裏打ちしているのではないかというのが、知人の見方である。

考えてみれば、現在のバークシャーは、毛色の違った様々な企業を擁する”一種のウルトラ超巨大総合商社”であると見る事も出来るので、この意味では、そういったバークシャー特有の多種多様な様々な企業を運営していく経営上の経験による学びが、今回の商社株購入に至った最大の理由ということになるのかも知れない。

一つ目の動画自体の趣旨は、例によってしょうもないものだが、中で引用されているバフェットの発言は、バフェットらしい非常に肯首出来る内容で、恐らくかなり正確なものであろうと思われる。この発言によって、どういった考えのもとに日本の商社株を買ったのかが、私には非常に納得がいったのである。と共に色々と考えさせられる内容でもあるけれども。

「中国の方が日本より上ですよね?」日本を無視していた中国放送、”投資の神様”ウォーレン・バフェットの一言で沈黙した理由


私(バフェット)は日本に無限の可能性を見た。多くを日本に投資するとともに、今後も日本と良好な関係を維持していきたい。
・・・・
中国人は中国があらゆる分野で完全に遅れているという事実を認めるべきだ。そうした中国の現実は、長期的で安定した価値を重視する我々投資家にとって最悪だ。

我々は慈善家ではなく起業家であり、投資が成功する可能性が高い国に投資するのは当然だ。過去において私の目に狂いはなく、そうした経験から中国より日本を選んだのだ。日本は誰が何と言おうとも、華々しい復活を遂げた国だ。戦争で荒廃した都市を現代の先端都市に変え、多方面で発展した姿を見せており、世界最高の地位を固めている。この点で日本の可能性を確信し、日本に我々のすべてを投資しようとしたのだ。

一方的で利己的な外交方針で成長した中国を、調和のとれた合理的な外交方針を持つ日本と比較するのは筋が違う。中国は国内で日本企業の製品が売れないように制限しておきながら、なぜ中国製品を日本に無差別に輸出しようとするのか?世界で中国のように一方的で利己的な外交方針を持つ国はない。中国人たちは依然として過去の考えに囚われて生きている。そうした考えを変えない限り、我々が中国に投資することは永遠にないだろう。

50年後の日本は今より成長した国になると確信している。5大商社は今後100年どころか永遠に生き残る企業だと評価して投資したのだ。


そして、もう一つの動画における故マンガーの、日米財政状況を比較する中で述べられている日本評も、日本人としてなかなかと考えさせられる内容である。

【もう一人の賢人チャーリー・マンガー】備えよ、世界の変化は加速する!これに気を付けろ!


<近代国家が大量のお金を刷ると借金が増えて株が上がる。その規模は世界的に新領域に入っている。なかでも日銀は想像を絶する金を印刷した。しかし日本はインフレを起こさず、未だに立派な文明*を維持している。政府が大量の金を印刷したにもかかわらず、最悪事態にならず、経済は25年間の停滞に止まっている。

日本が大量の金をばらまいても、文明*を維持して落ち着いていることに米国人の私は勇気づけられている。
米国も日本同様の結果になることを望んでいる。

しかし、日本が落ち着いているのは民度が高く義務を果たす文明的な人が多く、我慢して国に協力しているからだと思う。日本は単一民族の国家であり、日本人は自らにある種の誇りを持っているため、他国に比べて協力して諸問題に対処できるのだ。

それに対し、米国には多民族、多くのグループ間の対立が強い緊張状態を作っており、国の運営は非常に難しい。政府が多くの金をばら撒けば、いずれ最悪事態が発生する。例えばアルゼンチンなどの南米の国々である。我々米国人は その最悪事態に近づいている。

日本のように停滞に止まるか、もっと悲惨なことになるのか。私はそうなりたくない。

日本は過去に例がない信じられない量の金を印刷してきたが、今でも文明国家として存在している。莫大な有利子負債があるのに、利息を払わない当座預金で返済している。金利の支払いなしにマネーサプライが上がってゆくのは天国であり、政治家にとっては魅力的なことである。



ただ、この二人の日本に対する高評価というものは、日本人経営者や知識人のアメリカ式経営に対する憧れや高評価と同じで、多分に「隣の芝生は青く見える」バイアスが掛かっているように、私には思われるのも事実である。

例えば、同様の事例として、経営学で有名なドラッガーは日本の終身雇用や年功序列などの仕組みを高く評価していたし、これはあまり知られていないと思うが、バフェットの師匠と言われるフィリップ・フィッシャーも日本企業を評価基準にしていたことが挙げられる。

もう十年近く前の事であるが、私は以下のインタビューの中で語られている、この<私の物差しである「日本企業」>という一節を読んだ時、雷に打たれた如く驚き、「ああ、そうだったのか!」と目が覚めるような気がしたのを今でも覚えている。つまり、この<私の物差しである「日本企業」という凝縮された短い言葉の方が、彼自身のまわりくどい著作の総てよりも、はるかに彼の理想とする企業像を明確・端的に表していることを、一瞬で悟ったのである。

従って、これまた穿った見方をしたり顔で述べれば(笑)、このフィッシャーの考えを、バフェットは2020年になって実行に移したと見ることも出来る訳である。

Forbes【完全版】バフェットが師匠と仰ぐフィリップ・フィッシャーインタビューアーカイブ

<——あなたにとっての中核株の基準とは?
フィル・フィッシャー:まず、いずれも生産コストが低い企業ばかりです。次に、いずれも各業界で世界一か、あるい私の物差しである「日本企業」に比肩する競争力を持つ企業であるか、です。どの企業も期待できる新製品を開発しており、平均レベル以上の経営陣を有しています。>

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