ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

続・隣の芝生

2024-09-23 12:00:00 | 投資理論
前の文章を書いてから、そういえばと、思い出した本がある。

それは、『にっぽんの商人』イザヤ・ベンダサン著である。



この本の出版は昭和50年(西暦1975年)で、これから日本がバブル景気に向かおうという時期に、当時も現在も一般通念となっている「モノづくり大国ニッポン」論に対して、「商人大国ニッポン」論を打ち出した異色の日本論である。

これはまた、なぜ日本だけがアジアの中で資本主義が高度に発達したのかという、歴史家の間で議論されているトピックに、一つの明快な答えを出した著作でもあって、ベンダサンは<日本を今日のように発展させたのは、勿論商人だけではない。そこには郷士という、非常に重要な役割を演じた忘れることのできない存在がある>とも述べていて、この<郷士>については述べられてはいないという留保を付した上で、この著作の内容を端的に述べている文章を、最終章「世界に冠たる商人大国日本」から、以下に引きたいと思うが、この文章をどのように読まれるであろうか。

このベンダサンの見地に立てば、日本の総合商社というのは、「にっぽんの商人」の現代的進化形であり、バフェットがこれまでにもなかったバルク買いをしたのは、この「にっぽんの商人」というビジネスモデルの優位性を余程確信したからであろうと考えることも出来る。

また、外から見た方が、この「にっぽんの商人」というビジネスモデルの優位性が良くわかるということかも知れない。従って、世界に冠たる「にっぽんの商人」であるから、重箱の隅をつつくトヨタへの「是正命令」の例が示す如く、その行動には、政府は下手に口を出して足を引っ張らない方が良いということにもなる訳である。


以下の言葉は、皮肉と考えないでほしい。外部から見ていると、日本とは、広い意味の商行為に従事するもの、いわば広い意味の商人だけが、国際間にあって、全く引けを取らずに大活躍をしているが、他には、何も存在せず、商人以外は全く無能な人たちの国のように見えるのである。そしてこれは戦後だけのことではなく、実は、日本が西欧に接したそのときからの実情なのである。日本は、軍事ではなく実は「商事」に関する限り、明治以来、不敗であったといってよい。そしてこの「商事」が敗北した如くに見えた場合も、実は、日本国内の他の要素、たとえば軍事が商事を妨害した場合に限られるのである。

この事情は今も変わらない。日本には国際的指導力をもつ政治家がいるわけではない。また世界の世論を指導する言論機関があるわけでもない。日本の言論機関は、国内では大きな発言力をもっているようにに見えるが、国際的には沈黙しているに等しい。また、世界的な指導力を持つ思想家がいるわけではない。外部から見ていると、日本には思想家は皆無だとしか思えない。政治においては、国会は不能率というより麻痺しているように見え、外交は拙劣の一語につき、だれもこれらを自国の模範にしようとは考えないであろう。また世界の学者をひきつける大学は存在せず、原子力の開発のような世界的な大発見・大発明をした研究機関があるわけでもなく、またその技術はほとんどが欧米から導入したもので、日本独特のものは少ない。さらに世界的な大芸術家がいるわけではない。また、世界が注目せざるを得ない膨大な資源をもっているわけでもない。勿論軍事力というべきものもない。

各人が静かに自問されればよい。一体日本に何があるので、世界は日本に注目し、日本を大国として扱い日本の動向に注意を払い、日本に学ぼうとするのかを。言うまでもなくそれは日本の経済的発展であり、それ以外には何もないのであるーこの言葉を、たとえ日本人がいかに嫌悪しようと。

そして日本の経済的発展は、原料を買入れて、下請けに加工させて、製品としてこれを販売した徳川時代の町人の行き方を、国際的規模で行うことによって、徳川時代の町人が富裕になったと同じ方法で達成されたのであった。そして日本で国際的評価に耐えうるもの、というよりむしろ高く評価されるものは、これを達成した「商人」しかないである。

そして面白いことに、この事実を一番認めたがらないのが、実は日本人なのである。


相場雑感2024.9

2024-09-15 12:00:00 | 投資雑感
色々と思うところがあるので、現時点での気づきを文章にして残して置くことにする。

まず、大きな見取り図として言っておかなければならないのは、現在の日本の株式市場というのは、属国市場であるということである。

この日本の株式市場が属国市場だというのは、売買代金比率で外国人投資家に過半数を握られていることが端的に示しているように、主導権を完全に外資に握られていると言うことである。言い換えれば完全に制空権を握られているという事であって、それにもかかわらず、例えば、金融当局はHFTは野放しであるし、225先物を上下に振っておいてから、現物を売り買いするといった手口は広く知られているのにも関わらず、数銘柄でもって日経225の数値を簡単に操作することが出来る現在の状況に対しては、算出元の日本経済新聞社は全く手を打とうとはしていない事が挙げられる。他にも空売りなぞも、個人投資家が出来ない銘柄でも、機関投資家は売ることが出来るとか、数え上げればきりがないが、要は、外資はやりたい放題であると言って良い。

こういった現状は、金融ビッグバンの帰結でもある訳だが、現在ではその最終局面である総仕上げの段階に入りつつあるように思われる。株式持ち合い解消などがその典型だが、優待などのこれまで行われてきた日本的な様々な慣行が、今後もなし崩し的に縮小・撤廃されていくことになるのは避けられないであろう。個人的には、こういった「改革」は、功罪相半ばすると考えているので、例えば株式持ち合い解消などは、特に極端な円安局面おいては、それだけ買収され易くなるとも言えるので、なんらかの買収防衛策を取らざるを得ないことにもなる道理で、この意味では、現在関を切った様に、持ち合い株解消に動いている性急とも言える動きに、危惧を覚えるのは私だけであろうか。

それは兎も角、このような現在の属国市場という見取り図の中にあって、現在の日本の株式市場を動かしている主役は何かと言えば、それはAIアルゴだと言わなければならない。一般の弱小投資家を食い物にしているだけではなく、複数のAIアルゴ同志が食い合いをしているというのが、現在の日本の株式市場であると言って良い。

例えば、世界最大の投資会社ゴールドマンサックスは、世界中で数千兆円にも上る取引をしていると言われている。勿論、GSにそれだけの現金があるはずもなく、実際には高レバレッジを掛け、オプション取引などを多用した複雑なアルゴリズムによるプログラム売買を行っている訳だ。一度に数兆円というようなポジションを建て、それによって価格を動かし、次の瞬間には決済する。その間僅か10分の1秒に満たない時間フレームで、他の投資家が数秒遅れて参入した瞬間に利確しているといった有様である。


そして、こういったGSレベルの「特級」が、ごろごろしているのが、現在の投機市場で、プログラムの組み方はそれぞれの企業秘密で判る由もないが、基本は歴史的なビッグデータをスパコンにぶち込んで、回帰分析等でもってアルゴを組み上げて、そいつを実際に動かす中でAIに学習させながら運用しているのだろうと、素人の私などは見当を付けているが、ま、そう間違ってはいないだろう。

そして、気づきというのは、このことが、今回の暴落でもって明確に示されたと思うのだ。FXをやっている人は良く知っていると思うが、今回の暴落の動きは、フラッシュ・クラッシュそのものであり、この意味で、これまでの暴落とは明らかに違う性格のクラッシュであると、私の眼には映ったのである。

従って、メディアでは、例によって過去の暴落が参照され、今回と比べてどうのこうのと言われているが、このような見方からすると、これからはこうした晴天の霹靂的暴落は常態化し、さらにその規模は加速度的に肥大化していくことになる。

この意味で、現在の日本の株式市場は、未知の新しいフェーズに突入しつつあるというのが、私の認識であり危惧である訳である。であるから、すでに異なるフェーズに入っているので、旧態依然の硬直したこれまでのパターン認識や分析では、これからは太刀打ち出来んよ、ということである。

従って、この事実から目を逸らし、向き合わないでいては、恐らく生き残ることさえ難しいのではないかと思われる。やはり、ここからは、これまで以上に危うきに遊ぶことの出来るごくごく少数の名人だけが生き残り、死遺累々をしり目に生存者利益を一手に享受することになるだろう。

ここにおいて、基本的な戦略の見直し、特にリスク・マネージメントの改定は必須事項であると考える次第である。というと、スペンサーの「適者生存」だとか、ダーウィンの「強い者が生き延びたのではない。変化に適応したものが生き延びたのだ」といった言葉が、したり顔で引用され、投資においてもオポチュニック・スタイルが、結局、最強!などといった言説がすぐに思い浮かぶが、これらは無害衛生な一般論に留まり、肝心のその「変化」がどのようなもので、どのように「適応」していくのかについては、全く触れていないのが常である。

結局、ここでも方法論としては、トレンド・フォローが有効だと私は考える。つまり、「変化」のトレンドを捕まえることが重要で、「変化」の<トレンドが出たら(当たりを引いたら)、トレンドが継続している限りホールドすること>、「変化」の<トレンドが出なかったり、トレンドが終わったらさっさと切ること>という方法論である。



とまあいったことで、日下部篤也の状況認識が、実に的を得ていると思う、今日この頃であります(笑)。

引け!引け!なんでか知らないが、特級同志が殺り合ってる。蟻んこの上で象がタップダンスを踊ってんの‼一応言っとくけど、俺たちが蟻な‼
呪術廻戦 渋谷事変 霹靂


隣の芝生

2024-09-08 00:00:00 | 投資理論
バフェットが日本の商社株を買った理由については、色々としたり顔で穿った説明がなされてきたが、どうも私には今一つピンとこないものばかりであった。以前のバフェットの日本株に対する否定的な発言から考えると、そこには、バフェットの日本株に対する見方に何らかの変化があったようにも思われるのだが、まあ、わからないものはわからないので、そのままになっていた。

ところが、つい先日、知人が教えてくれたこの2つの動画を見て、なるほどそういった考えだったのかと改めて腑に落ちた次第、従って文章にして残しておくことにした訳である。

この動画内の発言からすると、どうやらバフェットの商社株購入の背後には、日本式経営文化に対して、より評価する方向にシフトした事実があるように思われる。考えてみれば、商社というのは日本特有の企業形態であり、アメリカにもこのような業態は見られないので、このシフトには、2つ目の動画で述べられているマンガーの比較文化論的な考えに基づいた日本式政治・経済運営文化に対する高評価が裏打ちしているのではないかというのが、知人の見方である。

考えてみれば、現在のバークシャーは、毛色の違った様々な企業を擁する”一種のウルトラ超巨大総合商社”であると見る事も出来るので、この意味では、そういったバークシャー特有の多種多様な様々な企業を運営していく経営上の経験による学びが、今回の商社株購入に至った最大の理由ということになるのかも知れない。

一つ目の動画自体の趣旨は、例によってしょうもないものだが、中で引用されているバフェットの発言は、バフェットらしい非常に肯首出来る内容で、恐らくかなり正確なものであろうと思われる。この発言によって、どういった考えのもとに日本の商社株を買ったのかが、私には非常に納得がいったのである。と共に色々と考えさせられる内容でもあるけれども。

「中国の方が日本より上ですよね?」日本を無視していた中国放送、”投資の神様”ウォーレン・バフェットの一言で沈黙した理由


私(バフェット)は日本に無限の可能性を見た。多くを日本に投資するとともに、今後も日本と良好な関係を維持していきたい。
・・・・
中国人は中国があらゆる分野で完全に遅れているという事実を認めるべきだ。そうした中国の現実は、長期的で安定した価値を重視する我々投資家にとって最悪だ。

我々は慈善家ではなく起業家であり、投資が成功する可能性が高い国に投資するのは当然だ。過去において私の目に狂いはなく、そうした経験から中国より日本を選んだのだ。日本は誰が何と言おうとも、華々しい復活を遂げた国だ。戦争で荒廃した都市を現代の先端都市に変え、多方面で発展した姿を見せており、世界最高の地位を固めている。この点で日本の可能性を確信し、日本に我々のすべてを投資しようとしたのだ。

一方的で利己的な外交方針で成長した中国を、調和のとれた合理的な外交方針を持つ日本と比較するのは筋が違う。中国は国内で日本企業の製品が売れないように制限しておきながら、なぜ中国製品を日本に無差別に輸出しようとするのか?世界で中国のように一方的で利己的な外交方針を持つ国はない。中国人たちは依然として過去の考えに囚われて生きている。そうした考えを変えない限り、我々が中国に投資することは永遠にないだろう。

50年後の日本は今より成長した国になると確信している。5大商社は今後100年どころか永遠に生き残る企業だと評価して投資したのだ。


そして、もう一つの動画における故マンガーの、日米財政状況を比較する中で述べられている日本評も、日本人としてなかなかと考えさせられる内容である。

【もう一人の賢人チャーリー・マンガー】備えよ、世界の変化は加速する!これに気を付けろ!


<近代国家が大量のお金を刷ると借金が増えて株が上がる。その規模は世界的に新領域に入っている。なかでも日銀は想像を絶する金を印刷した。しかし日本はインフレを起こさず、未だに立派な文明*を維持している。政府が大量の金を印刷したにもかかわらず、最悪事態にならず、経済は25年間の停滞に止まっている。

日本が大量の金をばらまいても、文明*を維持して落ち着いていることに米国人の私は勇気づけられている。
米国も日本同様の結果になることを望んでいる。

しかし、日本が落ち着いているのは民度が高く義務を果たす文明的な人が多く、我慢して国に協力しているからだと思う。日本は単一民族の国家であり、日本人は自らにある種の誇りを持っているため、他国に比べて協力して諸問題に対処できるのだ。

それに対し、米国には多民族、多くのグループ間の対立が強い緊張状態を作っており、国の運営は非常に難しい。政府が多くの金をばら撒けば、いずれ最悪事態が発生する。例えばアルゼンチンなどの南米の国々である。我々米国人は その最悪事態に近づいている。

日本のように停滞に止まるか、もっと悲惨なことになるのか。私はそうなりたくない。

日本は過去に例がない信じられない量の金を印刷してきたが、今でも文明国家として存在している。莫大な有利子負債があるのに、利息を払わない当座預金で返済している。金利の支払いなしにマネーサプライが上がってゆくのは天国であり、政治家にとっては魅力的なことである。



ただ、この二人の日本に対する高評価というものは、日本人経営者や知識人のアメリカ式経営に対する憧れや高評価と同じで、多分に「隣の芝生は青く見える」バイアスが掛かっているように、私には思われるのも事実である。

例えば、同様の事例として、経営学で有名なドラッガーは日本の終身雇用や年功序列などの仕組みを高く評価していたし、これはあまり知られていないと思うが、バフェットの師匠と言われるフィリップ・フィッシャーも日本企業を評価基準にしていたことが挙げられる。

もう十年近く前の事であるが、私は以下のインタビューの中で語られている、この<私の物差しである「日本企業」>という一節を読んだ時、雷に打たれた如く驚き、「ああ、そうだったのか!」と目が覚めるような気がしたのを今でも覚えている。つまり、この<私の物差しである「日本企業」という凝縮された短い言葉の方が、彼自身のまわりくどい著作の総てよりも、はるかに彼の理想とする企業像を明確・端的に表していることを、一瞬で悟ったのである。

従って、これまた穿った見方をしたり顔で述べれば(笑)、このフィッシャーの考えを、バフェットは2020年になって実行に移したと見ることも出来る訳である。

Forbes【完全版】バフェットが師匠と仰ぐフィリップ・フィッシャーインタビューアーカイブ

<——あなたにとっての中核株の基準とは?
フィル・フィッシャー:まず、いずれも生産コストが低い企業ばかりです。次に、いずれも各業界で世界一か、あるい私の物差しである「日本企業」に比肩する競争力を持つ企業であるか、です。どの企業も期待できる新製品を開発しており、平均レベル以上の経営陣を有しています。>

近代の毒ー実証主義(科学主義)について

2024-09-01 00:00:00 | 空気に水を差す
なにやら最近は、「主語の大きな話」という奇妙な言い回しが目に付く。もっぱら否定的な意味合いで使われているようだが、その一方で、現在の言論空間においては、「主語の大きな話」であるにも関わらず「科学的な言説」が溢れかえっているのは、じつに現代的な景色であるように見える。さらに現在においては、この「科学的な言説」は、このように特権的な位置を与えられているだけではなく、我々の生活のあらゆる面にまで入り込んで、有形無形の制限や強制と言った形で強く影響を及ぼしてもいる。言わば、一つの権力装置として機能しているといっても良い。この権力装置としての科学的な言説」はまた、近代に始まり、徐々に政治と結びつき先鋭化して、現代においては完成形に近づきつつあると言っても何ら過言ではない。

従って、このブログの言わば裏のテーマでもあるので、この権力装置としての科学的な言説」について、さらに一つ進級を上げた見地から俯瞰して、あえてさらに一回り「主語の大きな話」をしてみようというのが、この文章の趣旨である。一言で言えば、近代の毒=権力装置としての実証主義(科学主義)批判ということである。

とこう文章にして改めて見てみると、ふむ、いや我ながら実に「主語の大きな話」ではないか、これは(笑)。

まず、この議論の切り口の建付けをざっくりと説明すれば、こういったことになろう。

人類の歴史において、近代における最も輝かしい成果としては、科学の驚異的な発達・発展が挙げられよう。それとともに、それを裏付ける思想として、実証主義思想(科学主義)が一般に広く流布し、考え方やものの見方の上で、言わばデファクト・スタンダードになったと言うことが出来る。つまり、世界中のあらゆる森羅万象は、科学によって解明できるという科学に基づいた一元論的世界観が、ここにおいて確立することになった訳である。

現在、この科学的な一元論的世界観に対して、異を唱える人は殆どいないと思われるが、人間の営為上の問題としては、広範な科学上の具体的問題についての知見や言説の細部についてその総てを知ることは、個人の能力を遥かに超えるところにまで科学は発展してしまったという事実が挙げられる。これは個々の科学者においても同様であって、自分の専門以外の分野についての知識や知見は、一般人とさほど違っている訳ではないことは言うまでもない。

従って、普通には科学的な言説が正しいといった常識や通念を持っているだけに過ぎないことは、わが身を振り返って胸に手を当てて考えてみれば、すぐに判る事である。そのため、現代生活においては、「科学的な言説」は、普通の人間にとっては、水戸黄門の印籠のごとく「へへ―」とひれ伏す他はない対象になっている。実際には科学的におかしな言説、極論すればたとえフェイクであったとしても、学識経験者がしたり顔で述べれば、そのトピックに関して科学的に正確な知識や知見が無いと反論することはまずもって不可能なので、結果的に押し切られてしまうことになるのが普通である。それどころか、常識に照らしておかしいと思って異を唱えれば、非科学的な悪質なデマとして排斥され、断罪されかねないというのが実情である。

原理的に言えば、科学的な仮説をも含む実証主義(科学主義)的言説というのは、文字通り主義=イデオロギーであって厳密に限定された科学的事実としての言説とは明確に区別されなければならないのだが、科学の発達・発展に伴って、専門分野の多岐化・多様化と分野個々の深堀り・先鋭化によって、この境界がどんどん曖昧になって来ているというのが実情である。そして、その傾向は時間の経過とともにますます先鋭化していると言わなければならない。

従って、この近代が生んだ実証主義イデオロギーという毒に対抗する解毒方法としては、取り分けマスコミに出てくる学識経験者の述べる、一見「科学的な言説」については、一度は疑ってみるべきだということになる。現在では、ググれば幾らでも調べられるのだから。

ま、ある意味、これはしんどい作業ではあるけれども、昔から言われている功罪相半ばというのは何事にも付きもので、科学についても原子爆弾が良い例で、その成果の良いとこ取りだけで済まそうなどというのは、実に虫のいい話であって、まずもって虫のいい話通有のしっぺ返しが待っているのは間違いないと断言して差し支えない。廻りまわってしっぺ返しが、必ずやってくるという事例に事欠かないのが、人類の歴史なのだから。



そして、こういった意味合いで「科学的な言説」が、最近のマスコミで盛んに取り上げられている特徴的な事例を幾つか挙げれば、コロナ・パンデミックに関する様々な科学的な言説、SDGSの基になっている地球温暖化に関する科学的な言説、そして南海トラフプレート説などの地震に関する科学的な言説が挙げられよう。現在、政府はこれらの「科学的な言説」に基づいて、多大の予算を計上して施策を行っているという点でも、これらは重要な議案だと言わなければならないだろう。

まず、一つ目のコロナ・パンデミックに関しては、ここで議論を蒸し返す気はないが、最近は潮目がだいぶ変わって来たのを感じるのは私だけではないだろう。ワクチン被害がNHKで取り上げられ、お笑い番組でおかしなコロナ対策がネタにされたりと、オールド・メディアの手のひら返しが、目に付くようになってきた。その意味でも注目は、年内に予定されている一変申請レプリコン・ワクチンが、実際に実施されるのかどうかで、厚労省の内部でも揉めているという話も聞くが、実際のところは判らない。まあ、個人的には、時間が掛かるかもしれないが、ワクチン被害が薬害認定されるのは、時間の問題だと考えていることに変わりはないけれども。

そして、二つ目の地球温暖化の原因が二酸化酸素排出量の増加によるという科学的な言説に関する基礎論文が科学的に論証に耐え得ないものであるということは、ググれば判ることであるし、ある程度広く認知されて来ていると思われるので、議論は省いて、ここでは、あるいは知らない人も多いと思うので、三つ目の地震に関する科学的な言説である南海トラフ説やプレート説についても、学術的に根本的な反論がなされているという事実を、以下に紹介して置きたいと思うのである。


まず、南海トラフ地震に関する科学的な言説については、東京大学名誉教授の地震学者ロバート・ゲラー氏を筆頭に、根本的な批判がなされている。

まあ、ここ何十年かに日本で起こった大きな地震が、政府の出しているハザードマップから見れば、皆「想定外」だったことを考えれば(ハザードマップというよりハズレマップ?©ロバート・ゲラー)、南海トラフ説というのは、ショック・ドクトリンとしてコロナ・パンデミックと全く同型であることが判ろうというものである。

「予知なんて出来るはずない」ハザードマップではわからない本当の危険性は?(ロバート・ゲラー、高荷智也、村上建治郎、目黒公郎)TheUPDATE


ゲラー東大名誉教授が地震予知批判 「南海地震は神話」

X→Robert Geller; ロバート・ゲラー



福島原発事故は果たして「想定外」だったのか? 浜岡原発の地震発生確率84%の信ぴょう性は? 地震予知が当たらない本当の理由、打ち出の小槌と化している東海地震、日本の防災をダメにしている元凶など、地震学研究一筋35年の東大現役教授が語る、知らないと損をする大震災と原発事故の危ない真実。



また、この古舘伊知郎氏の動画も、予算獲得のための学会内政治にかなり踏み込んでいて、とても判り易い。

【日向灘地震】南海トラフ巨大地震発生確率の信憑性に疑問。これまでの地震とこれからの備え。


古舘氏が動画の中で触れている小沢記者の著作。


発生確率70~80%→実は20%!?
地震は日本のどこで起きてもおかしくない。 なのに、南海トラフ地震ばかりが確率の高さの算出で 「えこひいき」されている? 「科学ジャーナリスト賞」受賞の新聞連載を書籍化‼
私が南海トラフ地震の確率が「水増し」されていることを初めて 知ったのは2018年。それまで科学的根拠に基づき算出されている と思っていた確率が、いい加減な根拠をもとに政治的な決められ 方をしていたことに、唖然とした。 また、取材をしていくと、防災予算獲得の都合などから、南海ト ラフ地震が「えこひいき」されて確率が高く示されるあまり、全国の他の地域の確率が低くとらえられて油断が生じ、むしろ被害 を拡大させる要因になっている実態も見えてきた——。 (まえがきより)
西日本から東日本の太平洋側を中心に、大きな被害が予想される「南海ト ラフ地震」。この地震がこれから30年以内に起きる確率を、政府は70%~ 80%と予測する。この数値の出し方に疑問を持つ記者が、その数字を決定 した会議の議事録や予測の根拠となる室津港の水深を記した古文書など を探し出し、南海トラフの確率の出し方が「えこひいき」されている真実 を浮き彫りにするノンフィクション。



さらにまた、この地震に関する科学的な言説南海トラフ地震対策だけでなく、原発再稼働不許可の論拠にもなっている。最近初めて不許可の裁定がなされた福井県の敦賀原発2号機再稼働案件問題については、再稼働を目指す日本原電側が直下に活断層がないことを証明するさまざまな根拠を示したのに対し、→原子炉の真下にある断層が活断層であることを否定できない>ので<稼働の前提となる規制基準に適合しないという原子力規制委員会側の説明がなされている。原子力規制委員会のメンバーには石渡明という地質学の専門家の名前が見えるが、要は<活断層であることを否定できない>もし活断層であれば、科学的に地震が起きる可能性が高い原発再稼働不許可というなんとも???な悪魔の証明的たらればロジックである。

ただ、私がここで問題にしたいのは、日本原電側も原子力規制委員会側も、どちらも「活断層による地震発生という因果関係説」を前提にしているが、この前提自体に疑義があるという点である。

つまり、両者ともにこの「活断層による地震発生という因果関係説」に立っているがために→<直下の活断層の有無が焦点となっていた>訳であるが、この「活断層による地震という因果関係説」自体、「プレート説」を前提にしているのであって、この大前提である大本の「プレート説」自体が根本的に批判されているのである。

従って、これはそもそも地震発生のメカニズムをどう考えるかのかという、ちゃぶ台返し的な議論になる訳であるが、活断層・プレート説に対しては、「熱移送説」による根本的な批判があることを指摘したい訳である。


そのプレート説に対し、「熱移送説」を取る藤和彦氏(経済産業研究所主席研究員)が、根本的に異を唱えている動画及び書籍(地震学者角田史雄氏との共著)をここで紹介して置こう。

藤氏が述べているように、昔は「南海トラフ地震」とは言わず「南海大地震」と言っていたが、これが「東南海大地震」を経て「南海トラフ地震」へと段々と大規模化してきたのは、不安を煽る「ショック・ドクトリン」の先鋭化手法そのものであると私の眼には映るのであるが、どう思われるであろうか。

経産官僚が暴露 「南海トラフ地震利権」の真相


特番「南海トラフM9地震は起きない! ~プレート説は根拠なし、熱移送説で地震のメカニズムを解き明かす~」ゲスト:経済産業研究所主席研究員 藤和彦氏「ザイム真理教は7割の国民が信用し、プレート真理教は100%が信用している





2016年熊本地震、2018年北海道胆振東部地震
2024年能登半島地震……東日本大震災以降、
なぜ大地震は南海トラフ以外で起きるのか。
「熱移送説」で地震発生のメカニズムを解き明かす。

プレートの枚数は現在も確定しておらず、プレートが衝突したり沈み込んだりするとされている場所から2000㎞以上も離れた中国内陸で起きた四川大地震は説明できません。地震の発生原因は、地球内部の熱移送であり、大地震発生前には必ずその周辺で熱移送と火山性群発地震が起きています。プレート説に基づいて地震予知研究をしているのは日本だけ。活断層が動いて直下地震が起きると思っているのも日本だけ。ほとんど信仰と言っていいプレート説を真剣に見直す時期が来ていると思います。(本書「おわりに」より)