ものぐさ屁理屈研究室

誰も私に問わなければ、
私はそれを知っている。
誰か問う者に説明しようとすれば、
私はそれを知ってはいない。

『Merry Christmas』『Inspire』

2018-03-30 13:00:00 | Lexi Walker
Lexi Mae Walker のニュー・アルバム『Inspire』が届いたので、前の『Merry Christmas』と合わせて感想を。





結論から述べると『Merry Christmas』が期待に違わぬ出来だったので、『Inspire』には非常に期待したが、私の期待が大き過ぎたためか、少しばかり残念な出来であったと言わざるを得ない。彼女の進歩は充分に感じられただけに、いささか惜しまれるアルバムの出来であった。

私のその不満の拠ってくる大きな原因は、2つある。まず選曲とアレンジであるが、これがどうも一本調子なのである。彼女の大きな魅力である劇的にに歌い上げるタイプの曲ばかりを、これまたダイナミックなオーケストレーションによる過度な編曲で次々と聞かされてはいささか食傷気味になろうというものである。the prayerもデュエットではなく、Jenny Oaks Baker のバイオリンとの掛け合いというのも成功しているとは思えない。このプロデュ―ス・コンセプトはちょっといただけないと思うのは私だけであろうか。

ちょうどネットに両方があったので貼っておく。前者は音が悪いが、それでも歌唱の素晴らしさは十二分に伝わってくる。

Lexi Walker to Lexi Hansen "The prayer" w/Nathan Osmond


Lexi Walker: The Prayer with Jenny Oaks Baker


さらにそれに輪を懸けるのが、少しサ行が強調された微妙に分離の悪いほんの少しだが微妙にざらついた録音である。再生装置側の問題や成長期ということで声質の変化もあるのかも知れないが、私にはこれはミキシングの問題だと思われた。オーケストレーションに声が埋没してしまい、肝心のツゥッティで分離が悪いためにうるさく聞こえるのである。

何度か聴き直したが、この2つの原因のために音楽に入り込めないので、聴いていてなんとももどかしいフラストレーションを覚えることとなった。残念ながらこの『Inspire』には、私はなんらInspireされなかったのでありました。

これに対し、『Merry Christmas』では、Lexiの素晴らしい声がはっきりと前にせり出して聞こえ、ために彼女のボーカルを堪能することが出来る。選曲もバランスよく適度にバラエティーに富んでいて、編曲も彼女の声を引き立てる節度のあるもので非常に好ましい。「Let it go」も付いてくるので、私としては断然こちらの『Merry Christmas』をお薦めする次第である。それにしても、今更ながらに、この「Let it go」の編曲は素晴らしいと思う。Alex boyleの音楽性に賛辞を贈りたいと思う。スタンディング・オベーションものであると言っても過言ではないだろう。異論があるかも知れないが、現在までの処、やはりこの曲が彼女の代表曲という事になるのであろうと思われる。何と言ってもまだティーン・エイジャーなので次の新しいアルバムに期待したいところである。

『Inspire』については辛口の評となってしまったが、これはその前にEva cassidyを聞いていたのが災いしたのかも知れないとも思う。曲目もOver the RainbowとWhat A Wonderful World の2曲がダブっていたこともあり、頭の中で比較して聴くことになったのも確かである。これを、丁度モーツァルトを聞いた後でハイドンを聞いた時特有の、あの無いものねだりの欠落感と同じもの感じたと言ったら果して判って頂けるであろうか。

Lexi Walker - "Somewhere Over the Rainbow" (Live at the Utah's Stars & Friends concert 2015)


Eva Cassidy - Over The Rainbow

Lexi Walker

2014-04-20 00:00:00 | Lexi Walker

 御存じの方も多いと思うが、大ヒット中のディズニー・アニメーション最新作『アナと雪の女王』=『Frozen』の主題歌「Let It Go」も大ヒットに伴って、多くのカバーがネットにアップされている。ひょんなことからそのうちの一つ、このビデオ映像を観て、歌っている少女の歌唱に驚くやら感心するやら、一目で(一聴で?)すっかり気に入ってしまった。The Corrs とともに、最近私の心の琴線に触れた音楽の一つである。



 この主題歌は腕(喉?)に自慢のある歌い手達が、YOUTUBEに次々と現在もカバーをアップし続けているようだが、それらの中にあって、オリジナルを含めても、この Lexi Walker という少女のそれは最高度にランクされる歌唱だと思う。何とまだ11歳とのことだが、「子供の」という括りは全く必要のない上手さである。歌い手としては、これまでにも多くの Les Enfants Terribles が存在したが、彼女はその中でも傑出した才能の持主ではないだろうか。このナンバーは、広い音域とダイナミックな声量を必要とされるという点で、言わば歌い手の歌唱力が試される難曲であるのは誰でも一度聞けば判ると思うが、オリジナルのイディナ・メンゼルや日本語版の松たか子もなかなかと健闘しているが、歌唱に何とも窮屈さが感じられるのに対し、それらと比べてこの Lexi Walker は、そのボーカルテクニックと言い、リズム感と言い、ある種の余裕さえ感じられて、私には一段優っているように感じられるがどう思われるであろうか。何とシャウトまでマスターしているのには、いや、参りました。







 この曲は、色々な性格を併せ持っている名曲と言って良いだろうが、そのメロディーの美しさを際立させているこのような美しいアコースティックバージョン・カバーもあって、これはこれで実に耳に心地良いカバーである。



 それから、ダイナミックな展開という点では、このようなロックバージョン・カバーもなかなかと合う。これもグッド・ジョブ!。




 しかし、これらの両方の相反した魅力を併せ持った歌唱という点で、この Lexi Walker に勝るものはそうはないのではないかと思う。それぞれ国の実力派のシンガーが選ばれていると思われるディズニー・オリジナルの各国語版も観てみたが、私の彼女の株はますます上がる一方である。やはり、この歌の難易度は相当に高いと改めて認識した次第。彼女の魅力の一つに、その弱音での抑えた歌唱の素晴らしさが挙げられるが、音はあまり良くないにも関わらず、これらのライブ映像でもそれが良くわかる。デュエットの上手さも下手なプロ顔負けである。



Nathan Osmond and Lexi Walker




"O Come, O Come Emmanuel" - Nathan Osmond and Lexi Walker



さらに、これらのパワフル且つダイナミックな歌唱も堂に入ったもの、リズム感も大したものである。







 本格デビューはこれからのようだが、声変わりもこれからだろうし、マネージャーやプロデュサーに恵まれて、健やかに育って大成して欲しいものである。私にとっては、久しく無かった本当にこれからが楽しみなミュージシャンの登場である。