辺見じゅん著。1939年富山生まれ。
文春文庫。89年文藝春秋の文庫化、映画化もされた。
大宅壮一ノンフィクション受賞。長年の取材で書いたラーゲリの様子。
著者は歌人でもあり、ラーゲリ内、こっそりしていた句会の事は
特に詳しい。
主人公、山本幡男。満州で生活、妻子供4人、母。
先に日本へ帰国させた。
彼はシベリアのラーゲリに長く捕虜としてすごす。
仲間と黒パンとスープのみ。栄養失調の中、厳しい作業を命じられる。
初めは手紙もだせなかったが、少しずつ緩み、手紙、小包が
送られてくるようになる。
出しても3か月~半年後など年にわずかだけだが。
山本は45~54年、45歳でガンで死ぬまで11年間。
過酷な日々の中、句会を提案、演劇も工夫し開催。
ガンになり山本はもう死が近いと、とても長い遺書を書いた。
その遺書を日本の家族へ伝えるため、仲間が暗記しようと提案。
母へ、妻へ、子供へとあり、忘れないように何人にもわけて行う。
遺書が発見されると没収されるからだ。
トリュフォー映画「華氏451」書物を暗記を思った。
山本を中心としたラーゲリでの、10年位の生活のノンフィクション。
最後のソ連からの帰還者はS31年末。
これほど経過とは信じられなかった。もう私は生まれていた戦後。
山本の妻、モミジに遺書が届くのは、帰還後何年かしてから。
暗記した仲間から妻、家族への遺書が順番に。
最後はS62年、彼が亡くなり33年目になる。
厚労省の調査によるとシベリア連行は約57万人とあるが
他の記録では約61万人。現在でも正確な数は把握されていない。
ソ連のラーゲリは1200か所、場所も南北に点在。
1割の7万人が飢えと重労働で死を迎えたという。
本著は、やや感傷的な部分もある。女性なので少し納得。
長年夫を待ちわびた妻モミジは教師をし稼ぎ頑張った。
4人の子供は山本が希望していた通り、
立派に成長、大学へ進んでいた。
句会の箇所が長く、私は句を知らない。知識ある方は興味深いだろう。
重労働で食事は1食にも満たない。病気でも治療はほぼしない。
ソ連共産国家の厳しい目が全編に漂っていた。
「ラーゲリより愛をこめて」で映画化。
本書は映画化など知らず、近くの古書店で、きれいなので買った。
著者は女性で、男性と思い読んでいた。弟が角川春樹!
角川一族、父が不倫した女性に、異母弟が殺害されるなど複雑。
1回読んだだけではわからない。
角川家の出自もwikiで見て、そうなのかと。
〇二宮和也・北川景子が出演した映画『ラーゲリより愛を込めて』(2022年12月9日公開)、瀬々監督。
究極の愛を描く感動巨編映画、ノベライズ版も出ている。
原作は講談社ノンフィクション賞・大宅壮一ノンフィクション賞をダブル受賞した『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(辺見じゅん)
シベリア強制収容所に、捕虜として抑留された山本幡男一等兵。
妻やまだ幼い4人の子供とは離れ離れになったまま、消息もつかめない。
栄養失調や過酷な労働作業で命を落とす者、自ら命を断つ者が出るなか、
常に帰国する日を待ち、人間としての尊厳、生きる希望を持ち続けた山本。
彼の言葉や行動は、徐々に捕虜たちの気持ちを変えていく――。
絶望の状況において、収容所のひとすじの希望の光でありつづけた山本幡男を二宮和也が、夫の帰国を心から信じ11年間待ちつづけた
妻モジミを北川景子が演じ、大きな話題となった。ほか、捕虜仲間として松坂桃李、中島健人、桐谷健太、安田顕が出演。
また山本の長男・顕一役を、ドラマ『収容所から来た遺書』(1993)で山本幡男を演じた寺尾聡が演じた。
メガホンをとったのは『8年越しの花嫁 奇跡の実話』『64₋ロクヨン‐ 前編/後編』の瀬々敬久監督、脚本は『永遠の0』『糸』の林民夫。