私は、珈琲党で、一日に必ず六杯は珈琲を飲む。
今朝も、珈琲メーカーで珈琲を作って飲んでいたら、昔知り合いだった清田と言う男の事を思い出した。
それは、喫茶店で清田と同じテーブルにいた時の事だ。注文した珈琲が運ばれてきたら、清田は徐に吹かしていた煙草を灰皿に突っ込んで消して、そして実に儀式めいた手付きで珈琲にミルクと砂糖を入れて、スプーンでゆっくりゆっくりかき混ぜた・・・今思い出しても、その手順と手付きは優雅で儀式めいていた。
さて、清田は、一連の動作を終えて、一口めの珈琲を目を細めて実に美味そうに飲んだ。
私の人生も、半世紀を過ぎたが、清田程茶道めいた手順で優雅に美味そうに珈琲を飲む男を見た事が無い。
ああ、珈琲万歳。
『 年の果て 空ろな午後 珈琲飲む 』 石 兎