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高田郁「契り橋 あきない世傳 金と銀 特別巻(上)」

2024年08月28日 | た行の作家



時代小説文庫(ハルキ文庫)
2023年8月 第1刷発行
313頁

「あきない世傳 金と銀」シリーズ特別巻(上)

シリーズを彩ったさまざまな登場人物たちのうち、4人を各編の主役に据えた短編集

「風を抱く」
五鈴屋を出奔した惣次が、如何にして井筒屋三代目保晴となったのか
幸たちが悪戦苦闘している同じ江戸の空の下で惣次も同じように必死だったのですね
本シリーズ第7巻で「惣次をみかけた」という件がありましたが、なるほどそういうことでしたか

「はた結び」
生真面目な支配人・佐助の恋の今昔
50歳を前にした佐助の純情にしんみり
心を寄せる若い娘との間にあれこれ障害があると思っていたのが、実はそうでもなく
2人が思いを告げ合うところを店の者たちがこっそり見ていて、歓声に驚いた佐助が尻餅をつく場面には大笑いでした

「百代の過客」
老いを自覚し、どう生きるか悩む小頭役のお竹
70歳を過ぎ、目が悪くなったお竹はそろそろ暇をもらったほうが良いのではないかと考え始めます
幸と共に江戸に来てから一度も里帰りをしていないお竹は郷愁の思いを強くします
この中でもう一人、焦点が当てられるのは、天満で医者の元で育てられていた大七
お竹が眼を診てもらう医者が大七の医学の知識に気づき、自分が育てたいと申し出ます
本当は医の道に進みたい大七ですが、奉公人のきまりに逆らって五鈴屋を出るわけにはいかず悩みます

「契り橋」
あのひとに対する、賢輔の長きに亘る秘めた想い
賢輔が五鈴屋九代目を継ぐ話が具体的になります
九代目となると天満へ戻らなければならず、幸の元から離れることに…
五鈴屋に奉公に上がる前日、五鈴屋番頭だった父・治兵衛から言われた言葉
『賢輔は銀になり、どないなことがあったかて金の傍を離れず、命懸けで金を生かす努力をせぇ』
金を生かすためには、自分は何をすべきか、考えあぐねるばかりでした
賢輔の思いも周囲の皆が承知しているのですが、誰一人口には出しません
チーム・五鈴屋、良いですね~

4人とも、最後は幸せに至ります
良かった良かった
だけではなく、商売そのものの話もあって、客のため、仕入れ先のため、品物に関わる全ての人々のために商売を続ける五鈴屋が健在で嬉しかったです

下巻も楽しみ♪



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