角川文庫
2022年2月 初版発行
解説・杉江松恋
380頁
第二次世界大戦末期の1944年12月16日、東からソ連軍が迫りくる中で国有財産を守るべく、ユダヤ人の没収財産を積んだ黄金列車がハンガリー王国の首都・ブタペシュトを出発
オーストリアを経てドイツに向かいます
列車に乗り込んだ大蔵省に奉職して30年になるベテラン官吏・バログはユダヤ資産管理委員会の現場担当として寄せ集め役人たちの権力争いや、混乱に乗じて財宝や食料を奪おうとする輩に文官ならではの交渉術を武器に闘っていきます
現在の黄金列車運行の合間に、若き日のバログと後に妻となるカタリンとの出会い、結婚生活、ユダヤ人友人夫妻との交流などが描かれることでバログという人間の背景が見えてきます
ナチスドイツが侵略地域において行った国家規模の略奪を主に描く物語かと思いきや、信念に基づき公僕であることに徹し、苦難を乗り越えていく人間を描く冒険小説であり、史実と虚構を絶妙に配合した歴史小説でした
黄金列車の存在は知っていましたが、大変な時に大変な場所を移動していたことには驚かされました
佐藤亜紀さんを読むのには気力が必要で、次はいつになるか分かりませんが、諦めずについて行きたいと思います
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